「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

小松左京最後の「大宇宙」―『宇宙にとって人間とは何か』

2020年06月12日 | Arts
☆『宇宙にとって人間とは何か』(小松左京・PHP新書)☆

  「知の巨人」と称される小松左京の「箴言集」。「名言集」ではなく「箴言集」と銘打っているのは、一二行の文言のみならず数ページにわたる文章も抜粋されているからだろう。三十年以上にわたって小松左京の秘書を務めてきた乙部順子さんが「はじめに」で「小松の場合は『箴言』というよりも『問答』といったほうが正解かもしれません。思考過程が重要なのです」と書いているが、そのとおりだと思う。
  小松左京の小説を読んでいると、哲学的な問答集を読んでいるような感覚に陥ることがよくあった。哲学が「知」の根底に横たわっているとするならば、その上に何もかも(自然も社会も人間も、過去も現在も未来も、高尚な論考から下世話な話まで)を含む巨大な大宇宙を創作したのが小松左京かもしれない。247個の箴言のどれから読んでも、そんな「大宇宙」の一端に触れることができるように思う。
  本書の初版は2011年1月5日発行となっている。小松左京さんが亡くなったのは同年7月26日とのことである。確認はしていないが存命中「小松左京」の名を冠した最後の本(そして全作品のまとめ)かもしれないと思うと、感慨もひとしおである。

  


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