N試作場

ジャンルにとらわれず、新しい組み合わせ、おもしろいことを考えていきます。

これだけ変化したのだから

2012年05月28日 | 日記
昔、鹿島茂さんのフランスのベル・エポックに関する本を読んでいて、
そこには、20世紀に入ってからの時代の変化というものが描かれていたのですが、

その本に、

20世紀になった瞬間に、いきなり変化が起こった訳ではない。

1900年の頃も、15年くらい経ってから、振り返ってみると
時代が根本から大きく変化していた…

といった内容が書かれていて、へえーそんなものなのかなと思っていましたが、
やけに印象に残っていました。

2001年になってみて、やはり、21世紀って今までの延長線だなあ、
これが15年くらい経つと劇的に変わるのかな、と思っていたのですが、

本当に大きく変わってしまいました。

そして、昨日、参加したイベントで、その意を強くしました。

Edu × Tech Fes 2012


郵便も、固定電話も、音楽も、出版も、産業が大きく変わった

テクノロジーの発達で、ひと昔では個人ではできなかったようなことが
安価にできるようになった


これだけ根幹が変わったら、従来のままでは立ち行かなくなる
ということは明らか。

日本の教育とか、ビジネス、従来型の会社組織といったものは
本当に時代に合わなくなっていて、時代の遺物となりかけている。

でも、変化は、まだ始まったばかり。


エバノートの外村さんのキイノートは楽しみにしていたのですが、
やはりよかった。

深く共感するところが多かったです。特に、

全く今までと変わってしまったのだから、
これまでの経験や、培ってきた価値観や思考は
いったん捨てるくらいでなければいけないということ。

全く今までと変わってしまったのだから、
年長者のアドバイスというのは聞かなくていい、
耳を傾けるとしても、聞くべき人かを自分で考えてチョイスする。

といったところ。

そう言えば、猪子さんも、
自分より年上の人間の言葉は一切聞かなくていいから
とおっしゃっていた。

猪子さんが言うと一見、突飛だったり奇矯な感じがする内容も、
外村さんが言うと至極まっとうな意見に聞こえるのが面白い。


さて、今回のイベントに参加して得た以下の知見を、
今後の我が子の教育方針に加えてみたいと思います。

・今までの自分の価値観や経験で安易に判断しない

・従来の考え方や価値観は変わり目にあるから、
 勇気がいる局面も出てくるかもしれないが、
 新しい行先のバスに乗せてあげたい

・親も新しいテクノロジーの世界にためらわずに入っていく。
 そして、子供にもためらわず使わせる

・早い段階で英語ネイティブの世界に送り出すこと

そんなところです。


「Edu × Tech Fes 2012」は、
頭の固い大人が「ちょっと教育の新しい潮流を知ってみようか」
といった軽い気持ちで見ると苦い薬になるかもしれません。

むしろ若い人、これからの生き方に関心のある人に勧めたい。

USTREAMにアーカイブがあります。

想定問答のクセをつける

2012年05月20日 | 日記
5月も引き続き、セミナーや勉強会に参加しています。

新しいテーマを勉強しているので、そのことを少しまとめようとしましたが、
まだ消化しきれていないのか、うまく書き進められませんでした。

新しいテーマに関連して、読みたい本も、いつも以上にたくさんあります。

今月の自分のリズムとしては、ブログなどのアウトプットよりも、
インプットが中心になっている感じです。

6月や7月も、ぼちぼち予定が入ってきていて、
また新しい世界に触れることができそうです。

3月くらいから「外の空気に触れて新しい学びを求めたい」と意識したら、
偶然みたいなこともあったりして、いろいろな機会と巡り合うことができています。


 *  *  *  *  *


そんな外での学びで最近ハッとしたことなのですが、

あるセミナーで、講師の先生が「○○は、なぜ△△で□□なのか?」と
問いかけられました。

自分の関係する企業の話なのドキッとして、
頭の中で答えを探しましたが、確信が持てず、あせってしまった。

次々と生徒を指していくなか、自分は指名されなかったのでホッとしましたが、
結局、自分の答えで合っていたようです。

それにしても、なぜ知り尽くしているテーマなのに、
すぐにパッと確信が持てる答えが浮かばなかったのか。

セミナーの数日後、お風呂に入っているときに、ようやく分かりました。

情報は十分に持っていても、その質問形式で考えたことが自分になかったからでした。

今回、「○○は、なぜ△△で□□なのか?」と問われました。

実は、「○○は、なぜ□□なのか?」という質問形式は、
今までに何度も考えたり、答えたりしたことのあるフォーマットでした。

しかし、今回学んでいる新しいテーマに関連した「△△で」という変数には、
あまりなじんでいなかったのです。

この経験から学んだのは、

「質問を作って、その解答を用意する」という思考作業の大切さです。

今回、自分にとって新しいテーマのセミナーに参加するので、
基本データとか、トップの戦略とか、それなりに下準備していたのですが、
それだけでは不十分でした。

質問の形式にしてみる、それに対する解答スクリプトを用意してみる…
ここまでの思考練習が必要だったのです。

これからは、機会をとらえて、このような思考のトレーニングを
習慣としていきたいと思いました。

これは、普段と異なる世界、異文化に身を置いたときに、
あらためて切実に浮き上がってくる問題です。

海外にでれば、自分の国について歴史、経済、社会など
質問形式でおさえておかなければならないし、

他の企業の方と懇親をするのであれば、
自企業のことは当然いろいろと質問されます。

ここまで簡単にイメージができます。

今後の課題としては、今まで想像もしていなかった異分野において、
こういう質問をされたら、どう答えるか、という思考のクセを
つけることだなと思いました。

異分野に触れる機会があるのは、読書やWeb、たまたま見たテレビ、
誰かと話したときのちょっとした話題などでしょうか。

例えば、漁師が海で漁をしている映像をみたら、

・「日本では、どんな魚が捕れるのか?」

・「なぜ日本人はクジラを食べるのか?」

これは海外で受ける質問の想定。


・「貴社は○○という港町にも営業所がありますか?」

・「うちの会社は漁業なんですが、漁業は日本での割合が○パーセントでしてね…」
 「そちらの○○産業は何パーセントでしたっけ?」

これは仕事上の質問。


・「あなたは、どんな魚を食べてきたのか?」

・「なぜ、あの魚、あまり見かけなくなってしまったんでしょうか?」

これは個人として受ける質問。


まあ、あまり上手な例ではないかもしれませんが、

こういう自分の見識を広げ、確かなものにしていく努力、
そういう習慣があるかないかの違いは大きいのではないでしょうか。

セミナー、勉強会、交流会というリアルな場は、
知識以上に、何気ないことから学びとれることが多く、
情報量がとても多いような気がします。

アドボカシーと企業体質

2012年05月13日 | 日記
奥さんの実家で普段は読まない新聞というものを読んでいたら、
気になる本の広告が。

早速、購入して読み終えました。

『ボイス ソーシャルの力で会社を変える』(著:田中正道、日本経済新聞社)

いろいろな本で読んできたことと重なる部分が多いのですが、
「顧客の声」についての考え方が分かりやすくまとめてあるので便利です。

その中で、エンゲージメント戦略のルールの一つとして、

カテゴリーベースでユーザーを助けること(アドボカシー)を第一目的とする

が挙げられています。

これは、

 自社の商品に絞った会話をするのではなく、自社の商品が属するカテゴリー全般をターゲットに、
 カテゴリーユーザーの支援をしましょう。


ということで、また、そのアプローチが

ユーザーと企業の間の壁を取り除いてくれます

とあります。


これは、従来の企業体質のままだと、なかなか行いにくいことです。

お客さまに「それならA社のBという商品のほうがいいですよ」という発言は、
メーカーでは、なかなか言いにくいかもしれません。

ザッポスのような小売と違って、従来の日本のメーカーで、
社員に刷り込んできたマインドセットとは趣が異なるからです。

ここ数年、社外の勉強会や懇親会で、他業界の方々と交流する機会があるのですが、
メーカーの方々は、みなさん自社商品に誇りを持っていて、話していると、
自社商品が一番というマインドをひしひしと感じます。

女性の方のほうが、

「うちの商品が大好きだけど、ここ最近の商品は首をかしげたくなるようなものがある」

などと、お酒の入った席では、本音を言ってくださることがあります。


「カテゴリーユーザーの支援」といっても、現場の人間が「そうしよう!」と思って
簡単にできることではありません。

やはり、会社の方針、体質が変わることが先だと思います。

本書では、今の日本企業について、こんなことが書かれています。

 どちらかというとルーチンワークを完璧にこなし、
 短期的視野で小さな成功を積み重ねていく秀才タイプが高く評価されます。

 また、そうした人事評価システムが多くの会社で採用されています。


そして、

 数十年にわたって昇進の階段を上ることを目標に日々を過ごしてきた
 経営者のマインドを変えることは、不可能と言っても過言ではないでしょう。


と書かれてあります。

このことは別のページにも書かれていて、

 出世と関連づいている人事評価基準は、短期的利益への貢献であり、
 結果として、企業の上層部はルーチンワーカーとしてのDNAを濃くもつ人材で
 埋めつくされているのが今の日本の現状でしょう。


私は、本書にある、

 人材を明確にルーチンワーカーとクリエーティブワーカーに分け、
 前者が現行のキャッシュカウ、後者が未来の種を担う


という役割分担の設計に、とても可能性を感じました。

ただ、クリエーティブワーカーは、今の時代、
企業に属さない生き方も選択しやすくなってきているので、

会社の中で、必要最小限の時間拘束でベストな結果を出せるよう試行錯誤すると同時に、
会社を離れ、起業家精神を持って、自分の働き方、生き方の可能性を追求していくことが
いいのではないかと考えています。

「脳のつくり」と「ビジネスモデル」

2012年05月05日 | ビジネス試論
『意識は傍観者である』(早川書房) を読んでいて、

“脳の配線はループしている” という部分にピンときました。


現在、勉強中の『リーンスタートアップ』(日経BP社) の
「フィードバックループ」 の構造と似ているのではないかと思ったのです。


こういうアイデアが浮かんだ下地としては、

『WHYから始めよ』(日本経済新聞出版社) という本があります。


この本の著者は、人々をインスパイアするリーダーは、
「HOW」 や「WHAT」 ではなく「WHY」 から始めている
と論じています。

「ゴールデン・サークル」 という図が出てくるのですが、

円の中心は「WHY」、そのまわりを「HOW」 が囲み、
その外側を「WHAT」 が囲んでいる図で、

スティーブ・ジョブズなど、人々をインスパイアするリーダーは、
「WHY」 からスタートしていると言うのです。

面白いのは、人の脳の構造も同じ三重の図で表せるというところ。

共感する部位が円の中心にあり、
そのまわりが同様に「HOW」、さらに「WHAT」 に対応している、
というのです。

この本を読んで、WHYから始めるのは人間の脳の構造に合っていて、
共感を得ることができるアプローチだと理解しました。


話は戻って、『意識は傍観者である』 から引用します。

 脳の配線は単純にAからB、そしてCへとつながっているのではなく、
 CからB、CからA、そしてBからAという
 フィードバックのループがあることがわかったのだ。

 脳のあちこちで、正方向のフィードフォワードと同じくらいフィードバックも起こる--
 専門用語で再帰、俗にループしていると言われる脳の配線の特徴だ。

  (略)


 ループする脳の強みは何なのか?

 第一に、そのおかげで生物は刺激反応行動を超越し、
 実際の感覚入力の前に先を行く予測を立てることができる。


この後、野球のフライをキャッチする例が続き、
視覚についてこんな話も出てきます。

 一時視覚野は視床に予測を送り、視床は目から入ってくるものと
 すでに予想されているものの差異を報告する。

 視床は視覚野にその差異情報--つまり、予測されなかった部分--だけを送る。
 
 この予測されなかった情報が内部モデルを修正するので、
 将来的にはミスマッチが少なくなる。

 このように、脳は自分のまちがいに注意を払うことによって、
 世界のモデルを精緻なものにしていく。


「リーンスタートアップ」 の「フィードバックループ」 というのは、

 構築 - 計測 - 学習  のループです。

図はこちらのサイトでご覧いただけます
Lean Startup Japan フィードバックループ構築の最初の一歩:メトリクスの重要性


「リーンスタートアップ」 では、

・まず検証する仮説を選び、なるべく早期に仮説の検証を行うこと

・失敗するなら、なるべく早期に失敗する

・検証から学ぶ

といったサイクルがある訳ですが、

予測(仮説)を立て、予測との差異(失敗)からモデルを修正し、
ミスマッチを少なくしていく…というところで共通部分があるのは確かです。


十分に吟味していませんが、

「リーンスタートアップ」 は、「脳が世界を認識していくモデル」 と
同じような構造、手法を採択している

という視点が浮かんだのでエントリーしてみました。

これだけの説明だけでは、「なんのこっちゃ」 という方も
いらっしゃるかもしれません。

ご興味のある方は、この視点を手がかりに
上記の本やウェブサイトの関連情報にあたっていただければ幸いです。