N試作場

ジャンルにとらわれず、新しい組み合わせ、おもしろいことを考えていきます。

スキットと解説シリーズ2: 下の子

2011年07月29日 | スキットと解説
[昼下がり。地下鉄の車内。高齢のご婦人の会話が聞こえてくる…]

「うちのワンちゃんがね…」

「メールだか何だか知らないけどさあ、やっちゃって…。孫よ、ほら、下の娘」

「ああ。旦那さんは勤め人?」

「そう。コンピータ関係」

「へえ、そうなの」

「もう勝手にやってくれって感じよ」

「下の娘さん、男っぽいよね。元気というかさ」

「人は悪くないんだけど。小さい頃、近所の悪ガキどもに慕われてさあ…」

「へえ」

「“親分”とか言われてんのよ」

「会ったのは何年前だったかしらね~」

「下の子に言ったことあんのよ。あの子も21歳だから…」

「へえ」

「もうねえ…」

「うちは、ワンちゃんがね」

「あら、もう内幸町なの?早いねえ」

「あなた、次で降りるのよね。ところで、腰は大丈夫?」

「えっ?」

「腰は大丈夫?」

「ええっ?」

「 こ・し 。 腰よ」

「えええっ?」

「あなた耳は大丈夫?」

「ああ、腰ね。大丈夫よ」

「やっぱり70歳過ぎると何だかんだと…」

「あ、着いたわよ」

「じゃあ、あんたもお元気でね」

「ありがとう」

「えっ?」

「ありがとう」

「ええっ?」

「 あ・り・が・と・う! 」

「えええっ?」

「耳は大丈夫?」

「ああ、どういたしまして。じゃあ、またねえ」


[解説]

「うちのワンちゃんがね…」

「メールだか何だか知らないけどさあ、やっちゃって…。孫よ、ほら、下の娘」

( あ、犬の話はスルーした )

「ああ。旦那さんは勤め人?」

「そう。コンピータ関係」

( コ、コンピータ? )

「へえ、そうなの」

「もう勝手にやってくれって感じよ」

「下の娘さん、男っぽいよね。元気というかさ」

「人は悪くないんだけど。小さい頃、近所の悪ガキどもに慕われてさあ…」

「へえ」

「“親分”とか言われてんのよ」

「会ったのは何年前だったかしらね~」

「下の子に言ったことあんのよ。あの子も21歳だから…」

「へえ」

「もうねえ…」

( な、何を言ったんだ? )

「うちは、ワンちゃんがね」

「あら、もう内幸町なの?早いねえ」

( おいおい、犬の話も聞いてあげなよ )

「あなた、次で降りるのよね。ところで、腰は大丈夫?」

「えっ?」

「腰は大丈夫?」

「ええっ?」

「 こ・し 。 腰よ」

「えええっ?」

「あなた耳は大丈夫?」

「ああ、腰ね。大丈夫よ」

( 聞こえてんじゃん! )

「やっぱり70歳過ぎると何だかんだと…」

「あ、着いたわよ」

「じゃあ、あんたもお元気でね」

「ありがとう」

「えっ?」

「ありがとう」

「ええっ?」

( また、このやりとりかよ! )

「 あ・り・が・と・う! 」

「えええっ?」

「耳は大丈夫?」

「ああ、どういたしまして。じゃあ、またねえ」

( やっぱ、聞こえてんじゃん! )



スキットと解説シリーズ1: 西品川

2010年10月23日 | スキットと解説
[昼下がり。大井町線の車内。ご高齢ご婦人の会話が聞こえてくる…]

「ほら、あそこの西品川のさあ、あのお店…」

「西品川なんてないわよ。北品川ならあるけど」

「ええっ。そうなのー」
「西品川もあると思っていたわ」

「じゃあ、品川の西は何て言うの?」

「品川の西よ」

「ええっ。そうなのー」
「昔はあったのにぃ」

「昔からないわよ」

「むー。」


[解説]

「ほら、あそこの西品川のさあ、あのお店…」

「西品川なんてないわよ。北品川ならあるけど」

「見逃さないな」
「流してもいいのにね」

「ええっ。そうなのー」
「西品川もあると思っていたわ」

「じゃあ、品川の西は何て言うの?」

「品川の西よ」  

「しらっと返すな」
「間髪いれずにね」

「ええっ。そうなのー」

「驚くことではないな」
「地名じゃなくて言い方の問題だよね」

「昔はあったのにぃ」

「出た!“昔はあった”攻撃」

「昔からないわよ」

「言うなあ」
「ずばり言うわよ」

「むー。」

「聞いたことのない感嘆詞が出てきたぞ。危険な状態だ」
「今、調べたら、西品川ってあるみたいだけど…」