「相変わらず小説を書いているのか」
「ああ」
「今、何書いてるんだ?」
「関西を舞台にした小説」
「おまえ、東北出身だろ!大丈夫か?」
「関西弁は、『 じやりン子チエ 』と『 ミナミの帝王 』と『 ナニワ金融道 』で勉強した」
「危ういな」
「ヒロインは京都の芸者、琴。
そして彼女をひそかに慕う和歌山の若大将。
ライバルは岸和田の寿司職人、梅さん。
陰で見守る名古屋のおかみ。不気味な淡路島のヤクザたち…」
「それ、書き分けるのハードル高すぎるだろ」
「まあ、読んでみてくれ」
* * * * *
琴:「お客はん、はくらがきれいどすえ~」
若大将:「うむ」
梅:「そないでまんねんなぁ」
「この“はくら”というのは何だ?」
「さくら(桜)だ。京都では“さ”が“は”になる」
「聞いたことないぞ」
京都川沿いを歩く三人。笹舟を流す子供たちの姿が見える。
思わず童謡を口ずさむ琴。
琴:「ははのは、は~らはら~♪の~きぃば~にぃ、ゆ~れはる~♪」
「この小説には歌の要素も盛り込んでいきたい」
「ささのは(笹の葉)だって!歌は全国共通だってば!」
梅:「若大将!わてと勝負や!いてまえ!」
琴:「あやや~、わて、どうしたらええのん」
若大将:「俺、ようやらんわ」
梅:「なんやと~!やらしがないでぇ!」
「やな予感がするが、“やらし”とは何だ?」
「大阪では“だ”が“や”になる」
梅:「さあ、きなはれ!奥歯に手ぇ入れて耳ガタガタいわしたるで~」
琴:「ややわあ~、おっそろしいわあ~」
「奥歯に…って、ちょっと違うぞ!帰国子女の俺でも分かる」
「さあ、これから面白くなるよ」
梅さん、若大将に向かって突進し、顔をなぐる
琴:「あ~れ~」
若大将:「わしは殴らん。よう殴らへん。わしは、ゼニィかせいで見返したるんや」
世の中ゼニや、ゼニなんじゃい!!
「ミナミの帝王か…」
「よく分かったね」
梅:「ま、負けた。さすが若大将や」
琴:「んだべ」
「ちょっと待て。それ東北弁だろ!」
「よく分かったね」
感極まって、大阪弁で若大将への想いを歌う琴
ねえ やいて やいて やいて やいて やいて 早く ♪
ああ やいて やいて やいて やいて やいて 強く ♪
ねえ やいて やいて やいて やいて やいて あなた ♪
ああ やいて やいて やいて やいて やいて 好きよ ♪
「“抱いて”(だいて)だろ!森高さんと大阪の人たちに悪いわ!」
「これがプロローグだよ。ここまでは割とサラッと書けた」
「 …… 」
「今、書いてるのが京都立志篇」
「この後、名古屋出世篇、福岡抗争篇、鳥取初恋篇、東京望郷篇と続く全48巻の大作だ」
「寅さんかよ!」
「ゆくゆくは、NHKの朝ドラをねらう。主演は松本伊代」
「無理だろ!松本伊代も含め」
(了)
「ああ」
「今、何書いてるんだ?」
「関西を舞台にした小説」
「おまえ、東北出身だろ!大丈夫か?」
「関西弁は、『 じやりン子チエ 』と『 ミナミの帝王 』と『 ナニワ金融道 』で勉強した」
「危ういな」
「ヒロインは京都の芸者、琴。
そして彼女をひそかに慕う和歌山の若大将。
ライバルは岸和田の寿司職人、梅さん。
陰で見守る名古屋のおかみ。不気味な淡路島のヤクザたち…」
「それ、書き分けるのハードル高すぎるだろ」
「まあ、読んでみてくれ」
* * * * *
琴:「お客はん、はくらがきれいどすえ~」
若大将:「うむ」
梅:「そないでまんねんなぁ」
「この“はくら”というのは何だ?」
「さくら(桜)だ。京都では“さ”が“は”になる」
「聞いたことないぞ」
京都川沿いを歩く三人。笹舟を流す子供たちの姿が見える。
思わず童謡を口ずさむ琴。
琴:「ははのは、は~らはら~♪の~きぃば~にぃ、ゆ~れはる~♪」
「この小説には歌の要素も盛り込んでいきたい」
「ささのは(笹の葉)だって!歌は全国共通だってば!」
梅:「若大将!わてと勝負や!いてまえ!」
琴:「あやや~、わて、どうしたらええのん」
若大将:「俺、ようやらんわ」
梅:「なんやと~!やらしがないでぇ!」
「やな予感がするが、“やらし”とは何だ?」
「大阪では“だ”が“や”になる」
梅:「さあ、きなはれ!奥歯に手ぇ入れて耳ガタガタいわしたるで~」
琴:「ややわあ~、おっそろしいわあ~」
「奥歯に…って、ちょっと違うぞ!帰国子女の俺でも分かる」
「さあ、これから面白くなるよ」
梅さん、若大将に向かって突進し、顔をなぐる
琴:「あ~れ~」
若大将:「わしは殴らん。よう殴らへん。わしは、ゼニィかせいで見返したるんや」
世の中ゼニや、ゼニなんじゃい!!
「ミナミの帝王か…」
「よく分かったね」
梅:「ま、負けた。さすが若大将や」
琴:「んだべ」
「ちょっと待て。それ東北弁だろ!」
「よく分かったね」
感極まって、大阪弁で若大将への想いを歌う琴
ねえ やいて やいて やいて やいて やいて 早く ♪
ああ やいて やいて やいて やいて やいて 強く ♪
ねえ やいて やいて やいて やいて やいて あなた ♪
ああ やいて やいて やいて やいて やいて 好きよ ♪
「“抱いて”(だいて)だろ!森高さんと大阪の人たちに悪いわ!」
「これがプロローグだよ。ここまでは割とサラッと書けた」
「 …… 」
「今、書いてるのが京都立志篇」
「この後、名古屋出世篇、福岡抗争篇、鳥取初恋篇、東京望郷篇と続く全48巻の大作だ」
「寅さんかよ!」
「ゆくゆくは、NHKの朝ドラをねらう。主演は松本伊代」
「無理だろ!松本伊代も含め」
(了)