N試作場

ジャンルにとらわれず、新しい組み合わせ、おもしろいことを考えていきます。

文体練習12 「関西小説」

2010年12月11日 | 文体練習
「相変わらず小説を書いているのか」

「ああ」

「今、何書いてるんだ?」

「関西を舞台にした小説」

「おまえ、東北出身だろ!大丈夫か?」

「関西弁は、『 じやりン子チエ 』と『 ミナミの帝王 』と『 ナニワ金融道 』で勉強した」

「危ういな」

「ヒロインは京都の芸者、琴。
 そして彼女をひそかに慕う和歌山の若大将。
 ライバルは岸和田の寿司職人、梅さん。
 陰で見守る名古屋のおかみ。不気味な淡路島のヤクザたち…」

「それ、書き分けるのハードル高すぎるだろ」

「まあ、読んでみてくれ」


 *  *  *  *  *


琴:「お客はん、はくらがきれいどすえ~」

若大将:「うむ」

梅:「そないでまんねんなぁ」


「この“はくら”というのは何だ?」

「さくら(桜)だ。京都では“さ”が“は”になる」

「聞いたことないぞ」


京都川沿いを歩く三人。笹舟を流す子供たちの姿が見える。
思わず童謡を口ずさむ琴。


琴:「ははのは、は~らはら~♪の~きぃば~にぃ、ゆ~れはる~♪」


「この小説には歌の要素も盛り込んでいきたい」

「ささのは(笹の葉)だって!歌は全国共通だってば!」


梅:「若大将!わてと勝負や!いてまえ!」

琴:「あやや~、わて、どうしたらええのん」

若大将:「俺、ようやらんわ」

梅:「なんやと~!やらしがないでぇ!」


「やな予感がするが、“やらし”とは何だ?」

「大阪では“だ”が“や”になる」


梅:「さあ、きなはれ!奥歯に手ぇ入れて耳ガタガタいわしたるで~」

琴:「ややわあ~、おっそろしいわあ~」


「奥歯に…って、ちょっと違うぞ!帰国子女の俺でも分かる」

「さあ、これから面白くなるよ」


梅さん、若大将に向かって突進し、顔をなぐる

琴:「あ~れ~」

若大将:「わしは殴らん。よう殴らへん。わしは、ゼニィかせいで見返したるんや」

世の中ゼニや、ゼニなんじゃい!!


「ミナミの帝王か…」

「よく分かったね」


梅:「ま、負けた。さすが若大将や」

琴:「んだべ」


「ちょっと待て。それ東北弁だろ!」

「よく分かったね」


感極まって、大阪弁で若大将への想いを歌う琴

ねえ やいて やいて やいて やいて やいて 早く ♪
ああ やいて やいて やいて やいて やいて 強く ♪
ねえ やいて やいて やいて やいて やいて あなた ♪
ああ やいて やいて やいて やいて やいて 好きよ ♪



「“抱いて”(だいて)だろ!森高さんと大阪の人たちに悪いわ!」

「これがプロローグだよ。ここまでは割とサラッと書けた」

「 …… 」

「今、書いてるのが京都立志篇」
「この後、名古屋出世篇、福岡抗争篇、鳥取初恋篇、東京望郷篇と続く全48巻の大作だ」

「寅さんかよ!」

「ゆくゆくは、NHKの朝ドラをねらう。主演は松本伊代」

「無理だろ!松本伊代も含め」

(了)

文体練習11 「晩ごはん」

2010年12月08日 | 文体練習
[昼下がり。児童館で会話するママ友とその子ども]

ママA:「最近、親の食べてるもの欲しがるのよ~」

ママB:「うちも~。子どもの前ではアイスとか食べれないわ」

ママB:「そうだよねえ、あっ、そういえば、

幼児A:「ちくわ~ぶぅ」

     山田音楽教室の体験申し込んだ?」

ママA:「うん、申し込んだ。結構人気があって、

幼児B:「キャハハ。ちぃぶぅ、ちぃぶぅ」

     募集枠、埋まっちゃうみたいよ」

ママB:「え~、

幼児C:「ぶぅ、ぶぅ。ぶぅ、ぶぅ。」

     そうなんだ」

親A:「あ、そろそろ、晩ごはんの準備しなきゃ」

親B:「え、もう始めるの」

親A:「育児の合間に、昼すぎから少しずつやらないと」

親B:「今日うちは、おでんにしようからしら」

親A:「じゃあ、うちは、とんかつにしようっと」

文体練習10 「講師紹介」

2010年12月05日 | 文体練習
「みなさま、本日は、お足元の悪い中、
小社主催の教育後援会にご参加いただき誠にありがとうございます」

「それでは本日お話をしていただく講師の先生をご紹介いたします」

「わたくし、ちょうど昨晩も先生の本を読みながら寝落ちしてしまったんですが、」

「読むほどに深い感銘を受け、読むたびに寝落ちしてしまいます」
「皆様にも座右の一冊として、枕元に置いていただければ幸いです」

「では余談はこのくらいにして、早速、先生にお話していただきましょう」

「えーっと、お名前は何でしたっけ?」

 * * * * *

「あっ、松田先生でございました」

「先生自ら教えてくださりました。大変恐縮でございます」

「えー、松林先生は、早稲田大学を卒業後、広告会社に勤務。できちゃった婚で結婚」

「できちゃったのは、恐らく飲んだ勢いだったと思います」

「結婚後間もなく、ご自身の暴力が原因で家庭は崩壊。
 2007年の7月5日の午後3時頃でしたか、区役所に離婚届けを提出されました」

「離婚後は酒と女に溺れる日々。会社もクビになり、電気や水道も止められる始末」

「まさに、飲んだくれの女好きのダメ人間でした」

「そんな松本先生をひそかに付け狙う影が…」
「あ、このことはご本人の知る由もないことでございます」

 * * * * *

「さて、今日は20分から2時間半の間でお話していただく予定となっております」
「お話の後、質疑応答の時間を30秒ほど取っています」

「では、早速お話していただきましょう」

「え~っと、テーマは何でしたっけ?」

(了)

文体練習9 「シューカツ」

2010年12月03日 | 文体練習
「最近、山倉はシューカツで忙しいらしい」

「シューカツ?」
「カツの入ったシューマイか」




「なんでシューマイで山倉が忙しくなるんだよ。あいつは肉屋か」


「ジューシューメンチカツ?」




「だからカツから離れろって。なんだジューシューって」


「あ、習活生慣病( しゅうかつせいかんびょう )か」

「なんか響きがいやらしいな」
「それを言うなら生活習慣病( せいかつしゅうかんびょう )!」


「そうか!周富勝( しゅうとみかつ )のニックネームだろ」

「誰それ?周富輝( しゅうとみてる )でしょ?」





「や、ちがった。周富安( しゅうとみやす )だ」



「それも知らないよ。というか写真が違う」



「あ、ごめん。周富新( しゅうとみしん )だった」



「もっと違う気がする」



「ごめんごめん。周富徳( しゅうとみとく )だった」



「そうそう、この人!…って、シューカツ(就活)の話だろ!!」

(了)



都電荒川線のマスコットキャラクターに挑戦!

2010年12月01日 | 挑戦!シリーズ
「都電荒川線がマスコットキャラクターを募集しているぞ。知っているか?」
(日記:東京都のキャラクター/2010年11月27日)

「知らない」

「早速、考えてみた」

「承知した」


 *  *  *  *


「募集要項には“お子様からお年寄りまで幅広く愛される…”とあるので…」


マネーマン


「愛されるの意味が違うだろ!アンパンマンに出てきそうだし」



カレーマネーマン


「頭のお札がルピーで、かつカレーで汚れている」

「やっぱりアンパンマンだろ」



「次はこれ。沿線の駅にちなんで…」


鬼子母神(きしもじん)


「ありがたそうなキャラクターだね」

「普段はな。だが、怒りが頂点に達すると…」


スーパー鬼子母神


「幼子(おさなご)を片っ端から食いまくる」

「怖すぎるだろ!」


 *  *  *  *


「じゃあ、子供の好きな動物ならどうだろ」


荒川パンダ



「京王パンダみたいだよ…」




「荒川パンダは子供たちが大好きなんだ」
「子供を見つけるとこんなお顔になるよ」





「シャイニングか!」




「子供たちが泣くよ!」



「じゃあ、愉快なみんなの人気者を…」



荒川マウス


「ちびっこたち~。荒川遊園で待ってるよ!」

「中国の偽ミッキーよりひどい」
「荒川遊園には、ユウくん・ミミちゃんというマスコットキャラがいるよ」




「ガッビーン。そ、そうだったのか!」

「すごくわざとらしいな」



「では最後にとっておきのを」

荒川のあっくん



「結局、タックス・タクちゃんか!」

(了)