N試作場

ジャンルにとらわれず、新しい組み合わせ、おもしろいことを考えていきます。

文体練習7 マーケティング会議

2010年10月30日 | 文体練習
[ とあるペットフード会社の販促会議 ]

社長:「素材の味を生かした“すこやかワンちゃん・ナチュラル”か」
    「これを売るためにはどうしたらいい?」

社員A:「今の時代、商品開発にまつわるストーリーが必要です。物語です」

社 長:「ふむ。この商品はどうやって生まれたんだ?」

開発担当:「あ、競馬ですってお金なくなっちゃって…豆腐屋でおからをもらって食べてたんですね」
       「そのとき、これ、そのまま乾燥させて売ったら安上がりだな~なんて思いましてね」
       「素材の味をそのまま生かしたナチュラルなペットフード。これで決まりだなと」

社 長:「そんな物語だせるか!」
営業部長:「だめだろ」

社員B:「今は口コミの時代です。とにかく口コミを広げるのです」

社 長:「口コミ・マーケティングか。どんなことをするんだ?」

社員B:「まず目立つことです」
     「そして、思いっきりお客さんの予想を裏切るんです。ああ、そうきたか!と」
     「そのギャップが驚きを生み、人から人へと口コミが広がっていきます」

社 長:「なるほど。どんなことをやるんだ?」

社員B:「全資金をつぎ込んでネット広告をうちます」
     「通販購入者には、もれなく“ペットと行く世界2周100日間の旅”をプレゼント!」

営業部長:「そんな予算あるのか!?」

社員B:「大丈夫です。前払い制にして何も送りません。集金後に全員で海外へ高飛びします」

社 長:「裏切りすぎだろ!!」
営業部長:「ちょっとおもしろかった」


社長:「よし、ブレストだ。とにかく全員でマーケティングのアイデアを出しまくってくれ」

社員A:「1個買ったら2個プレゼント!」

社員B:「2個買ったら3個プレゼント!」

社員C:「買わなくても1個プレゼント!」

営業部長:「全部だめだろ」


新 人:「えっと、“そもそも論”で申し訳ないんですがぁ、
     “マーケティング”ってどういう意味でしょうか?」

社長:「“そもそも”過ぎるだろ!」
営業部長:「俺も知らなかった」

社長:「まったく、こんな大人数集まって、どいもこいつも…」


窓際課長: 「たいざんめいどうして ねずみいっぴき!」


社長:「また おまえか」

窓際課長:「社長を筆頭に芋頭を並べてああだこうだと散々時間を浪費した挙句の果て!
       出てきたアイデアはネズミ一匹にも値しないおそまつなシロモノ!!」
       「まさに、大山鳴動して鼠一匹」


社 長:「俺も芋頭か」

社員A:「だまってろ」

社員B:「ひっこんでろ」

社員C:「お前に言われたくないぞ」

営業部長:「窓際へ帰れ!」


新 人:「まあまあ、こうも言うじゃないですか」


     「かれきも やまの にぎわい!」
            (枯れ木も山の賑わい)



窓際課長:「おまえに言われたくない!!!」

(了)

文体練習6 「ペットフード]

2010年10月29日 | 文体練習
[ とあるペットフード会社の企画会議 ]

社長:「今回は社運を賭けた新企画を検討したい」
    「我が社の赤字挽回のためには画期的なペットフードの開発が急務なのだ」

開発部長:「本日はうちのホープがプレゼンいたします」

ホープ:「世の中にない新しいペットフードを考えました」
     「まずはコレです」


ハイテンション ワンちゃん


ホープ:「興奮剤が100%配合されているので、これを食べたワンちゃんは大はしゃぎ」
     「夜も寝ません」

社長:「ペットフードというより、興奮剤そのものということだな」
営業部長:「だめだろ」


ホープ「それでは、次の企画です」


ワンちゃん きれいきれい


社長「おー、よさそうだな」

ホープ:「食べるとペットの体に住むノミとダニが全滅し、ワンちゃんも即死します」

社長:「それはまずいだろ」
営業部長:「だめだろ」

ホープ:「では商品名を変えて…」


食べてバイバイ


社長:「もっとだめだろ!」
営業部長:「だめだろ!」

ホープ:「天国へまっしぐら」

社長:「そんなキャッチコピー使えるか!!」
営業部長:「か!!」


ホープ:「分かりました。ではとっておきを。これならいけます!」


ハイテンション de バイバイ


ホープ:「ワンちゃんが大はしゃぎした後、天国へ旅立ちます」

社長:「なんて安易なんだ」
営業部長:「だ」



窓際課長: 「かっかそーよー!」


社長:「な、なんだ突然」

窓際課長:「隔靴掻痒です」

社長:「ん!?」

窓際課長:「社長が水虫になったとしましょう。いや、なってください。
       そのとき、靴の上から足を掻いてもダメなんです。
       水虫そのものを治療することを考えなくてはならないのです!!」


社長:「誰か、ほかに意見はないか」

窓際課長:「ですから水虫を…」

開発部長:「うるさい!」

営業部長:「さい!」

ホープ:「シッ」

窓際課長: 「しめんそか!」
         (四面楚歌)



ホープ:「あ、そっかあー、ネコちゃんにすればよかった…」

社長:「猫でも同じだ!!」
営業部長:「!!」

社長:「むー、こんな企画しか出てこないようでは、我が社に明日はない。倒産の危機だ」


窓際課長: 「ぜったいぜつめい!」
          (絶体絶命)

 (了)

文体練習5 「罰ゲーム」

2010年10月24日 | 文体練習
「つまらん話を聞かされるのは、たまらないな」

「時間の無駄だね」

「長時間にわたるつまらない話は犯罪に等しい」

「そこまで言うか」

「大学の講義、結婚式のスピーチ、上司の自慢話…」
「つまらない場合、それぞれに罰ゲームを課する」

「罰ゲーム?では大学で退屈な講義を90分行ったら?」

「自分の講義を録画したビデオを30回リピート聴講」

「自分の話で寝ちゃったりして…」



「じゃあ、結婚式でつまらないスピーチを30分したら?」

「新婦のウエディングドレスを拝借して帰宅」

「き、厳しい。おじさんだったら、どうするんだ!」

「それだけではない」
「渋谷駅で途中下車し、ハチ公の上からブーケを投げる」

「すだれ頭のおじさんが、ウエディングドレスを着て、ハチ公前でブーケトスか…」
「ニュースになるぞ」



「上司が小一時間自慢話をして、貴重な勤務時間がつぶれたら?」

「ニューヨークの国連本部で“自慢話を聞く会”を開催する」

「各国の政府要職者、歴代のノーベル賞受賞者など500人が参加」
「ナオミ・キャンベル、パリス・ヒルトン、マドンナらの姿も会に華を添える」

「どんな会なんだ !?」

「ファンファーレの音とともに上司が入場。小一時間にわたる自慢話がはじまる」

「お、おそろしい」



やー、カナダはいいねえ。君たちも、ぜーったい一度は行くべきだよ。人生観変るよ
もう、星がきれいでさー。神聖な気持ちになるねえ。

俺たちの頃はな~んでも手書きだよ。ファックスが出たときはうれしかったなあ。

俺の中指って長いんだよ。ほ~ら、こんなに長いでしょ…

スキットと解説シリーズ1: 西品川

2010年10月23日 | スキットと解説
[昼下がり。大井町線の車内。ご高齢ご婦人の会話が聞こえてくる…]

「ほら、あそこの西品川のさあ、あのお店…」

「西品川なんてないわよ。北品川ならあるけど」

「ええっ。そうなのー」
「西品川もあると思っていたわ」

「じゃあ、品川の西は何て言うの?」

「品川の西よ」

「ええっ。そうなのー」
「昔はあったのにぃ」

「昔からないわよ」

「むー。」


[解説]

「ほら、あそこの西品川のさあ、あのお店…」

「西品川なんてないわよ。北品川ならあるけど」

「見逃さないな」
「流してもいいのにね」

「ええっ。そうなのー」
「西品川もあると思っていたわ」

「じゃあ、品川の西は何て言うの?」

「品川の西よ」  

「しらっと返すな」
「間髪いれずにね」

「ええっ。そうなのー」

「驚くことではないな」
「地名じゃなくて言い方の問題だよね」

「昔はあったのにぃ」

「出た!“昔はあった”攻撃」

「昔からないわよ」

「言うなあ」
「ずばり言うわよ」

「むー。」

「聞いたことのない感嘆詞が出てきたぞ。危険な状態だ」
「今、調べたら、西品川ってあるみたいだけど…」

文体練習4 「柳の災難」

2010年10月16日 | 文体練習
「言い間違えられやすい名前ってあるよな」

「あるある。菊池さんを“きくいけさん!”と呼んでしまったことがあるよ」
「それから“荒川さん”を“利根川さん”と呼んでしまったこともある」

「ずいぶん間違えてるな」
「ところで、日本でいちばん間違われやすいのが“柳”という名前だ」

「知らなかった。田中や山田には別世界の話だね」

「今回は、そんな“柳”について考えてみたい」

「承知した」


 * * * * *


「ある日、柳が会社で取った電話が営業のセールスだった」

「運が悪いね」

「最初に “はい、○○社の柳です。” などと名乗ろうものなら、
セールスマンは、すかさず名前を覚えて会話に織り込んでくる」

「テクニカルだね」

「ところが、セールスマンとあろうものが、うっかり“小柳”と聞き違えてしまう」

「 こ や な ぎ 」

「そう、小柳だ」

「“こ”がつくと、バカにされた感じがするね」


おっしゃるとおりです小柳さま。


そうなんですね。なるほど、小柳さま。


御社ではどうなんでしょうか? 小柳様。



「こやなぎ、こやなぎ…とうるさいな」

「“やなぎ”なのにも関わらずな」
「そして、ここぞというヤマ場で決めゼリフをはく」



まさにそこなんですよ!小柳さまっ!!



「間違った名前で決めゼリフか」

「そうなんだ」



 * * * * *



「後日、資料が郵送されてきた。その宛名が…」


○○社 営業部 こ柳 様


「せめて漢字で書いてほしい!!」

(了)

文体練習3 「エクセルシオールカフェ」

2010年10月14日 | 文体練習
「製品には、いろいろな注意書きがあるな」

「時計とか家電とか…」

「“EXCELSIOR CAFFE”というお店がある」

「唐突だね」

「今回は、このお店の注意書きを考えてみたい」

「承知した」
「…でも製品じゃないよね」




店名が言いにくい場合があります


「いきなり核心をついたなあ」
「確かに“エクセシオールカフェ”かと思っていた」

「 エ ク セ ル シ オ ー ル ! 」

「ああ、言いにくい」



「ほかにも言いにくい言葉ってあるな」
「俺が好きなのは、」


マサチューセッツ州


「ほかにも、

派出所(はしゅつじょ)

骨粗しょう症(こつそしょうしょう)

低所得者層(ていしょとくしゃそう)

などがある」


「どいつもこいつも言いにくいな」

「 エ ク セ ル シ オ ー ル ! 」

「もうそれはいいよ」


「それから、お葬式のときに述べる


ご愁笑さまでした


「ち、ちがう意味で言いにくい」
「聞いているぶんには分からないのが幸いだ」


ご愁傷さまでした(笑)


「最後のは“かっこわらい”と読まなくてはならないのか?」


ズラ、お似合いですよね~


「それはまずいだろう」
「“言いにくい”というより“言ってはいけない”領域に入ってきているよ」


ピーター・ファン・デン・ホーヘンバンド



「水泳の選手だね」
「実況で これを連呼するアナウンサーも大変だったろう」


雨の日は接客態度が悪くなることがあります


「あ、話が戻るのか」


飲み終わってからのご返品はお受け付けできません


「実際に返品されたらイヤだな」
「じゃ、今からもどします…みたいな」


店内でかきまぜないでください


「どうしよう、シロップが底にたまってしまう」


氷は食べないでください


「それもダメなのか?ガリッガリッとしたいのに」


店名を読まないでください!


「逆ギレだね」
「いっそ店名を変えてみては?」


ピーター・ファン・デン・ホーヘンバンドプロデュース エクセルシオールカフェ☆イン マサチューセッツ州


「もう読む気にもなれない」

「ははは。実は“エクセシオールカフェ”もあるのだ」

「え?」

「くわしくは、自分で調べるか、このブログを見てほしい」

なんとなく、甘美な表層。

(了)

文体練習2 「会社と祭り」

2010年10月12日 | 文体練習
「何事も祭りにしてしまおうという話をしたい」

「承知した」

「例えば会社に祭りを導入したらどうなるか考えてみたことがあるか?」

「ない」

「例えば、こんな祭りさ」


 早期退職祭り


「これだと悲壮な感じも一掃できるね」
「もっと導入してみてくれ」

「では、次はこれだ」


 窓際祭り in 窓際  ※本日、窓際にて開催いたします




「運動会みたいだね。やはり窓際でやるのか」

「窓際の窓際による窓際のための窓際!」
「ちょっと言ってみた」

「調子が出てきたね」
「それから?」


 お茶くみ祭り



「その日は、課長も部長もこぞって皆でお茶くみを行う」

「平等社会の到来だな」



 お昼当番祭り


「全員でお昼の電話当番をする祭りだ」

「お昼休みの意味がないな」



 直行直帰祭り


「営業の者は営業先へ直行直帰、製造の者は工場へ直行直帰、山田は歯医者へ直行直帰」

「最後のは完全に私用だな」



 半休祭り


「全員で年がら年中、半休をとりまくる」

「それでは実質休業だ。取り引き先泣かせだよね」



 産休祭り


「正式名称は“産前産後休業祭り”」

「男はどうするんだ!?」


 *  *  *


「きりがないので、これで最後にしよう」

「ほっとした」


 
 かねます祭り


「わかりかねます!」

「いたしかねます!」

「持ち上げかねます!」

「皆で何でも“しかねます”と言ってみる」

「その会社には、お問い合わせしたくないものだな…」


 *  *  *


「これが会社に祭りを導入してみたら…というお話なのだが、」
「検索してみたところ、どの祭りもヒットしなかった」

「当たり前だ!」

(了)

文体練習1 「ローソン」

2010年10月09日 | 文体練習
「ナチュラルローソンというのがあるな」
「あれは何だろ?」

「まあ、結論を急ぐな」

「話はあるアメリカの青年から始まる」
「仮にここでは彼を サンクス と呼ぼう」

「承知した」

「サンクスは、Law(法律)の Son(息子)と呼ばれるくらい法律が好きだった」

「“法律の息子”か」
「そういえば、昔『ゴジラの息子』という映画があったな」
「や、脱線してゴメン」

「決して気にするな。そして、サンクスは法律事務所を開く」
「商売は繁盛し、やがて彼は結婚し、息子が生まれる」

「この法律の息子の息子、これを仮に サンエブリ と呼ぼう」

「話が無意味にややこしくなるな」

「この息子の息子も幼少から法律に親しんだ」

「蛙の子は蛙だね」

「サンエブリは、レジ前では順番を守りましょうとか、
食事の前にはいただきますと言いましょうとか、座っておしっこをしましょうとか、
人々の間で自然に発生する決まりごとをベースに法を作りあげていこう、という主張をした」

「…」

「やがて彼は“ナチュラルローソン”(自然法律の息子)と呼ばれるようになる」

「俺は座りしょんには断固反対だが」

「ところが、話はこれで終わらない」
「法律の息子、サンクスにはもう一人息子がいた」

「ほう。サンエブリの弟だな」

「そう、仮にこの次男を 生活彩家 と呼ぼう」

「アメリカのお話ではないのか?」

「さて、この次男もごたぶんにもれず法律好きだった」

「俺の問いかけは無視か」

「生活彩家の主張は、人間なんてずるくてろくでもないものだ、
だから、悪も法律にしてしまえ、というものだった」

「とんでもない息子が生まれたものだ」

「頭にきたら殴れ、欲しかったら盗め、もれそうだったらそこでしろ…と」

「オイオイ、ずいぶん乱暴な法律だな」
「最後のはどうかと思うが、要するに性悪説だな」

「生活彩家は妥協を知らない男だった。徹底的に主張し、
そして、生活のために町外れにコンビニをいやいやオープンさせる」

「それを世間では妥協というんだが…」

「町の人々は、彼の店を“ダーティーローソン”(汚い法律息子の店)と呼んだ」

「その店のレタスは食いたくないな」

「しかし、開店したダーティーローソンでは、万引きや購入後の立ち食いが横行した」

「万引きはともかく、買ったんなら いいんじゃないのか?」

「ある日、怒り心頭に達した生活彩家は、店内で客に向かって銃を乱射してしまう」

「そこだけアメリカっぽいな」

「ダーティーローソンは閉鎖された…」
「やがて、生活彩家の遺志を継いでサンクスとサンエブリはコンビニを開く」

「や、ややこしい」

「彼らのニックネームが店名に使われたのは言うまでもない…」

「結局、残ったのがローソンとナチュラルローソンという訳か…」

「そうなんだ。これがローソンの知られざる起源だ」

「しかし、これを読んだ人が“ローソン 由来”などと検索したら どうするんだ?」

(了)