N試作場

ジャンルにとらわれず、新しい組み合わせ、おもしろいことを考えていきます。

アドボカシーと企業体質

2012年05月13日 | 日記
奥さんの実家で普段は読まない新聞というものを読んでいたら、
気になる本の広告が。

早速、購入して読み終えました。

『ボイス ソーシャルの力で会社を変える』(著:田中正道、日本経済新聞社)

いろいろな本で読んできたことと重なる部分が多いのですが、
「顧客の声」についての考え方が分かりやすくまとめてあるので便利です。

その中で、エンゲージメント戦略のルールの一つとして、

カテゴリーベースでユーザーを助けること(アドボカシー)を第一目的とする

が挙げられています。

これは、

 自社の商品に絞った会話をするのではなく、自社の商品が属するカテゴリー全般をターゲットに、
 カテゴリーユーザーの支援をしましょう。


ということで、また、そのアプローチが

ユーザーと企業の間の壁を取り除いてくれます

とあります。


これは、従来の企業体質のままだと、なかなか行いにくいことです。

お客さまに「それならA社のBという商品のほうがいいですよ」という発言は、
メーカーでは、なかなか言いにくいかもしれません。

ザッポスのような小売と違って、従来の日本のメーカーで、
社員に刷り込んできたマインドセットとは趣が異なるからです。

ここ数年、社外の勉強会や懇親会で、他業界の方々と交流する機会があるのですが、
メーカーの方々は、みなさん自社商品に誇りを持っていて、話していると、
自社商品が一番というマインドをひしひしと感じます。

女性の方のほうが、

「うちの商品が大好きだけど、ここ最近の商品は首をかしげたくなるようなものがある」

などと、お酒の入った席では、本音を言ってくださることがあります。


「カテゴリーユーザーの支援」といっても、現場の人間が「そうしよう!」と思って
簡単にできることではありません。

やはり、会社の方針、体質が変わることが先だと思います。

本書では、今の日本企業について、こんなことが書かれています。

 どちらかというとルーチンワークを完璧にこなし、
 短期的視野で小さな成功を積み重ねていく秀才タイプが高く評価されます。

 また、そうした人事評価システムが多くの会社で採用されています。


そして、

 数十年にわたって昇進の階段を上ることを目標に日々を過ごしてきた
 経営者のマインドを変えることは、不可能と言っても過言ではないでしょう。


と書かれてあります。

このことは別のページにも書かれていて、

 出世と関連づいている人事評価基準は、短期的利益への貢献であり、
 結果として、企業の上層部はルーチンワーカーとしてのDNAを濃くもつ人材で
 埋めつくされているのが今の日本の現状でしょう。


私は、本書にある、

 人材を明確にルーチンワーカーとクリエーティブワーカーに分け、
 前者が現行のキャッシュカウ、後者が未来の種を担う


という役割分担の設計に、とても可能性を感じました。

ただ、クリエーティブワーカーは、今の時代、
企業に属さない生き方も選択しやすくなってきているので、

会社の中で、必要最小限の時間拘束でベストな結果を出せるよう試行錯誤すると同時に、
会社を離れ、起業家精神を持って、自分の働き方、生き方の可能性を追求していくことが
いいのではないかと考えています。