N試作場

ジャンルにとらわれず、新しい組み合わせ、おもしろいことを考えていきます。

コピーできないビジネスモデル

2012年09月29日 | ビジネス試論
今やどんな商品も、すぐに類似商品が出る時代です。

商品が “スナップショット” だとすれば、商品とビジネスモデルをからませて
“動画” にすれば少しは真似しにくくなります。

さらに、そのモデルをどんどん変化させて一定のところにいない、
加えて、端から一見すると非合理に見えるくらい構造を複雑にしていく、
という戦術もあるかと思います。

このあたりのことは、以前このブログにも書きました。

しかし、もっと模倣しにくいビジネスモデルがあります。

ここで思い出すのは、昨年亡くなった立川談志師匠です。

一時期、数年間だけですが、行ける限りの高座を追いかけた時期がありました。

特に国立演芸場の「ひとり会」では、
高座の途中で解説を始めたり、悩みだしたり、途中でやめてしまったり、
何を演ろうかと高座でメモを見ながら検討しはじめたり…

その落語には「欠損の仕方」にオリジナリティがありました。

それだけでなく、そのほつれ具合、破れ具合も複雑であったように思います。

そこで、今回のテーマの最初のポイントは、

「 欠点は模倣しにくい 」 ということです。

同業他社の優れた着眼点、コンセプト、良い機能やデザインなどは、
皆こぞってコピーしますが、欠損の具合を真似するのは難しいことです。

しかも、談志さんで言えば、その欠損はファンに愛されていたのです。

次のポイントは、演じる落語がスナップショットの商品だとすると、
動画のビジネスモデルに相当するものは何か?ということです。

それは、立川談志という人の公の場での日々の言動、
弟子や知人からもれ伝わる様子、マスコミなどの報道内容、

そういったものからつくりあげられ、アップデートされていく
談志の個性、人柄、キャラクターです。

こうして、落語という商品でも、高座上・高座をおりた場もフルに活用して
愛される欠損に磨きをかけ続けてきたと思われます。

ここでコピーできないビジネスモデルのまとめをすると、

・愛される欠損を持った商品である

・その欠損の仕方にオリジナルティがある

・ビジネスモデルがその欠損具合をさらに複雑に更新していくサイクルがある

・そのサイクルの軌跡や蓄積、歴史がさらにファンを魅了する

そういった商品とビジネスモデルは真似しにくい…という結論です。

もちろん、真似されにくくする手法は多種多様にあるでしょうし、
今回の試論は、どちらかというと正当なやり方ではないと思います。

さて、ここからはビジネスから離れて、落語と個人的な思い出話を。

高校のとき、夜、布団の中で落語のテープを聴くようになり、
談志師匠の「ねすみ穴」 に出会いました。

とにかく「ねずみ穴」 が気に入り、そのテープは、
それ以来、繰り返し聴いてきました。

社会人になって、仕事で少しだけ談志師匠に触れる機会がありました。
ただ、自分はペーペーでしたし、こんなことを書くのは本当に憚られるのです。

上司から言付かった物を渡すために楽屋に行ったときも、
入る勇気がなくて、いつまでも、もじもじしていたくらいです。

後年、「ひとり会」 で師匠が「ねずみ穴をやります」 といった瞬間は
会場の隅で身震いしたものでした。

ただ、わずかな機会でもご本人に触れる中で、
時折、驚くほどフレンドリーだったり、優しかったり、寛容だったり、
イメージからすると非常に意外な顔を見ることがありました。

それは、立川談志としてパブリックにあるときには絶対に見せない顔でした。
切り替えをしているな、というのが明らかに分かりました。

ここでこういう言動しないと談志のメンツにかかわる、
ここで引いては立川談志に申し訳が立たない、
2、3度ほどですが、そういう切り替えを感じたことがありました。

やはり、松岡克由という人間が、自分の性格や気持ちを越えて、
立川談志というトリックスターを演じていたのでしょう。

さて、ご一緒させていただいた仕事がひと段落した後は、
だんだんと高座に行く機会も減り、チケットが手に入りにくいこともあり、
しまいには全然行かなくなってしまいました。

談志師匠のCDは50枚くらい持っているので家では聴いていましたが。

むしろ、立川志らく師匠が面白くなって「志らくのピン」には毎回行っていました。

そんな談志空白状態が続き、2006年でしたか、
池袋芸術座小ホールで開催された談春師匠の会で、
談志師匠の高座を久しぶりに生で聴きました。

談志師匠の高座は、あの懐かしい欠損具合が
自分が聴き込んでいたときよりも一層洗練されていて、
さらに新しい欠損のパターンもあり、

あれからここまで、たゆまぬ努力でここまでの境地に至ったのかと
感動というか少しぞっとするような心持もしたのでした。

まあ、私のような素人が計り知れることではないので
このへんでやめておきます。

談志師匠の前では、二度ほど大失敗をやらかしたことがあり、
今でも冷や汗もので忘れることができません。

そういったエピソードは、自分の人生の思い出として
大切に胸に暖めていきたいと思います。

ファンもチームの一員

2012年09月09日 | ビジネス試論
Likeable Social Media
: How to Delight Your Customers, Create an Irresistible Brand,
and Be Generally Amazing on Facebook (& Other Social Networks)

という本をキンドルで読んでいます。

まだ読了しているのは35%ですが、その中で得た気づきを。


 *  *  *  *  *


Facebook 上で、顧客に向き合って、きめ細かい対応をしている
VistaPrint という会社の例が出ています。

Any queries are answered, and the complaints are responded to,
but most important, every customer's comment receives a reply.


実際に一つ一つ応じるのは大変なことだと思われますが、
企業の経営方針として、しっかり組み込まれているのでしょう。


そして、その結果、

customers who have shared positive experiences and who are subsequently embraced
and thanked by VistaPrint are often the first to post on the page
when other customers post negative comments.


顧客とこのような良い関係を結べている。

例として実際のFacebookのタイムラインのキャプチャが転載されていますが、

VistaPrint は全然ダメ。サービスも対応もなっちゃいない…
みたいなポストの後に、

I love VISTAPRINT!


と続ける人がいたり、

今までたくさんのオーダーをしてきたが
とてもよかった。海外からの注文でトラブルがあったときも
とてもいい対応をしてくれてハッピーだった。そして、

We all have the odd bad experience after all - even companies are human!


という言葉。

ソーシャルウェブの世界は、総力戦というか、
企業単独ではなく顧客(特にファン)もチームのメンバーなんだなと理解できました。

これはレガシーな日本企業にとって、組織の概念を根底から変えるような
マインドセットの変更が必要なことではないかと思います。

誰もが常識的なポストを寄せてくれるとは限りません。

思い込みが激しかったり、精神を病んでいたり、
憂さ晴らしに悪意あるポストを投稿するような人もいるかもしれません。

そんなときに我がチームの一員である顧客が助太刀してくれる訳です。
しかも顔出し、実名入りで。

これからは、顧客と、ゆるく良い関係でつながることが
お題目だけでなく、ますます切実な課題となっていくことでしょう。

これはオフラインであっても同じことです。

オフラインでの Bad Experience をオンラインで投稿するという
行動も当然考えられるのですから。

顧客に日々誠実に向き合うということは、
きれいごとだけでは出来ない大変なことです。

でも、何のインセンティブもないのに、そのブランドのために、
顧客が時間を割いて、ひとこと言ってくれるなんて、
大変ありがたいことで、うれしいことではないですか!


 

amazonの顧客主義

2012年06月26日 | ビジネス試論
一人の時間が出来たので、録画してあった「カンブリア宮殿」を観た。

アマゾンのジェフ・ベゾスが登場。

以下、番組を引用しながら感想を。


 アマゾンをシンプルに言い表すなら
 「地球で最もお客様を中心に考える会社」です。

 私たちは、お客様の声に耳を傾けます。しかし聞くだけでは足りません。

 心がけるのは、何かを生み出すこと。

 お客様が何を求めているかを予測し、お客様がそれに気付く前に生み出すのです。


言葉を補えば「自分のところのお客を限りなく中心にする」と言うことになる。

何かを極度に中心に据えれば、何かが犠牲になる。トレードオフの関係。

それを支える配送関係者、倉庫での作業者、メーカーは大変だし、
商売にダメージを受けるストアもある。

それが、善いのか悪いのかは分からない。

自分のようなアマゾンのヘビーユーザーには大変ありがたいことではある。
あまりに便利で少し後ろめたさを感じなくもないくらいだ。


 私たちの顧客主義は、自分たちができることを考えて動くのではなく
 お客様が何を求めているのかを把握し、その後で、どうやれば提供できるのかを考える。
 これを「逆回りの思考」と言っています。多くの会社は違います。 

 お客様が求めているのは「商品を選べる、安い、早くて正確な配送」。
 これを実現するために何をやるのかが大切なのです。


顧客主義を標榜する会社は数多あれど、口先だけでなく、
会議体系や企画決済、流通、販売、サービスの構造までが
本当に「逆回し」になっている日本企業は少ないのかもしれない。

アマゾンのサービスの部分はどうなんだろう。
「逆回りの思考」になっているのか?

以前は、問い合わせ先が分かりにくかったり、
電話で問い合わせてもつながらないといったことを耳にすることがあり、
アマゾンのカスタマーサービスは整っていない印象があった。

最近は、その部分も整備されてきているような感じがする。

ウェブサイトにも問い合わせ窓口が明記されているし、
身近に電話で対応してもらったというケースを何件か聞き及んでいるからだ。

ただ、もしかしたら、アマゾンのカスタマーサービスの方針は、
日本のいわゆる日本のお客様相談室的な思想とは違うのかもしれない。

このあたりは今後あらためて考えてみたい。


インタビューでは、こんな話も出ていた。


 実は最初の頃、いろいろな出版社から「前向きな評価だけアップしたらどうか」と
 クレームをもらいました。そのほうが本の売り上げが伸びるからです。

 でも私たちの意見は違いました。

 私たちがやりたかったのは、本を売ることではなく
 お客様が買うかどうかを判断するためのお手伝いです。

 だからいい意見も悪い意見も必要。

 そして何度も思ったのは、お客様のニーズに応えるように努力していれば
 必ず信頼を得るということです。

 長い目で見れば買い物もたくさんしてくれるのです。

 長期的展望がなければこうしたアプローチはできません。

 私たちのサイトには以前買った物を知らせる機能もあります。
 お客さまに注意してあげるのです。

 以前買ったCDをうっかり1年後に買ってしまうことがあるでしょう。
 だから私たちは知らせることにしました。

 インスタント・オーダー・アップデートという機能です。
 これは短期的には売り上げを多少下げますが
 本当にお客様と同じ目線に立つなら意味のある機能です。

 私たちの目標は成長ではありません。
 お客様に最高の満足体験を提供することなのです。


この発言を聞いて気付いたのは、
これは「メーカー」でなく「小売」の視点であると言うこと。

小売のほうが顧客主義を徹底できるのかもしれない。

メーカーは、自分のところの商品という枠の中で、
顧客主義を考えざるを得ないところがある。

分をわきまえたというか、制限つきの顧客主義になりがちだ。

アマゾンの目指すような顧客主義がこれからもっと求められるとすると、
その中心になるのはメーカーではなく販売店ではないか。

例えば、無印ブランドの良品計画は、ほとんどの製品がOEMだと
聞いたことがある。

コンビニやスーパーでは、カップラーメンとかお菓子とか、
オリジナル商品が見受けられる。

あるメーカーの話で、OEM商品について、
商品によっては、同じ工場、同じ生産ラインで作っているので
品物としては全く変わりがない…という記事を読んだことがある。

そして、メーカーのブランドがついてない分、価格は安い。

無印やコンビニでは、

あるメーカーの商品ではなく、
ある販売ブランドの商品というのが優位になっている。

○○社のシャツでなく、無印のシャツ。

○○社のカップラーメンではなく、セブンイレブンのカップラーメン。

○○社の□□でなくアマゾンの□□。


突き詰めると、アマゾンの求める仕様、品質、価格の商品を
OEMの形でアマゾンブランドに提供せよ…という流れが起こっても
おかしくないように思える。

なぜなら、アマゾンは「地球で最もお客様を中心に考える会社」だからです。


最後に、アマゾンの顧客主義とは何なのかまとめると、

 それがなくては困ると必要とされる存在になること。
 (依存的な状態にさせるという要素もあるかもしれない)
 
 それから、信頼されること、好かれること。

と言えるのではないかと考える。


それにしても、日本企業は、もっと「好かれる研究」というのが必要だと思う。

特に従来の「背広のおじさん」というイメージから脱するべき。

ガイカワサキの『人を魅了する』とか、英語力不足でまだ読み切れていないが、
『Likeable Social Media』『Likeonomics』などを読むと、

この「好かれる研究」という流れが
いずれ日本企業にも波及するのではないかと予想する。


[おまけ]

1.ベゾスの人生観が分かる言葉。

 私は気付きました。
 もし挑戦して失敗してしても後悔しない。

 でも、もし挑戦しなかったら80歳になっても「後悔しているだろう」と思ったんです。
 80歳のあなたを想像してみてください。そのとき後悔は最小限にしたいでしょう。

 ほとんどの後悔は自分が怠慢でやらなかったことなのです。
 後悔するのは“やらないこと”です。


2.番組のアーカイブがあります。

 テレビドガッチ カンブリア宮殿

「脳のつくり」と「ビジネスモデル」

2012年05月05日 | ビジネス試論
『意識は傍観者である』(早川書房) を読んでいて、

“脳の配線はループしている” という部分にピンときました。


現在、勉強中の『リーンスタートアップ』(日経BP社) の
「フィードバックループ」 の構造と似ているのではないかと思ったのです。


こういうアイデアが浮かんだ下地としては、

『WHYから始めよ』(日本経済新聞出版社) という本があります。


この本の著者は、人々をインスパイアするリーダーは、
「HOW」 や「WHAT」 ではなく「WHY」 から始めている
と論じています。

「ゴールデン・サークル」 という図が出てくるのですが、

円の中心は「WHY」、そのまわりを「HOW」 が囲み、
その外側を「WHAT」 が囲んでいる図で、

スティーブ・ジョブズなど、人々をインスパイアするリーダーは、
「WHY」 からスタートしていると言うのです。

面白いのは、人の脳の構造も同じ三重の図で表せるというところ。

共感する部位が円の中心にあり、
そのまわりが同様に「HOW」、さらに「WHAT」 に対応している、
というのです。

この本を読んで、WHYから始めるのは人間の脳の構造に合っていて、
共感を得ることができるアプローチだと理解しました。


話は戻って、『意識は傍観者である』 から引用します。

 脳の配線は単純にAからB、そしてCへとつながっているのではなく、
 CからB、CからA、そしてBからAという
 フィードバックのループがあることがわかったのだ。

 脳のあちこちで、正方向のフィードフォワードと同じくらいフィードバックも起こる--
 専門用語で再帰、俗にループしていると言われる脳の配線の特徴だ。

  (略)


 ループする脳の強みは何なのか?

 第一に、そのおかげで生物は刺激反応行動を超越し、
 実際の感覚入力の前に先を行く予測を立てることができる。


この後、野球のフライをキャッチする例が続き、
視覚についてこんな話も出てきます。

 一時視覚野は視床に予測を送り、視床は目から入ってくるものと
 すでに予想されているものの差異を報告する。

 視床は視覚野にその差異情報--つまり、予測されなかった部分--だけを送る。
 
 この予測されなかった情報が内部モデルを修正するので、
 将来的にはミスマッチが少なくなる。

 このように、脳は自分のまちがいに注意を払うことによって、
 世界のモデルを精緻なものにしていく。


「リーンスタートアップ」 の「フィードバックループ」 というのは、

 構築 - 計測 - 学習  のループです。

図はこちらのサイトでご覧いただけます
Lean Startup Japan フィードバックループ構築の最初の一歩:メトリクスの重要性


「リーンスタートアップ」 では、

・まず検証する仮説を選び、なるべく早期に仮説の検証を行うこと

・失敗するなら、なるべく早期に失敗する

・検証から学ぶ

といったサイクルがある訳ですが、

予測(仮説)を立て、予測との差異(失敗)からモデルを修正し、
ミスマッチを少なくしていく…というところで共通部分があるのは確かです。


十分に吟味していませんが、

「リーンスタートアップ」 は、「脳が世界を認識していくモデル」 と
同じような構造、手法を採択している

という視点が浮かんだのでエントリーしてみました。

これだけの説明だけでは、「なんのこっちゃ」 という方も
いらっしゃるかもしれません。

ご興味のある方は、この視点を手がかりに
上記の本やウェブサイトの関連情報にあたっていただければ幸いです。

ルールが変わっているのかも

2012年03月11日 | ビジネス試論
ジムでヨガのレッスンを受け、サウナに入っているとき、
突然、ある考えが頭に浮かんできた。

それは、前回、紹介したセス・ゴーディンの本に書いてあったことなのですが、
いつの間にか「してはいけないこと」が「やってもいいこと」に
変わっていることがあるという話。

引用すると、

多くの企業では、たくさんの「してはいけないことリスト」がある。

しかし、

いったん何か革新的なことが起こって状況が変わり、そのリストの項目が
とても少なくなったとしても、それに気づくまでには、結構長い時間がかかる。


ということ。

そして、例として、ブログやツイッターが登場する以前には、
「簡単に自分の思ったことを世界に発信できる手段などなかったはず」と続く。

つまり、それまで、自分の情報発信は「してはいけないこと」の一つだったのだ。

リストが書き換えられ、状況が変わったことに気がついていない人は多いのだ。


そういう視点を与えられ、思い浮かぶ人がいました。

その方は、実名のブログで、自分の仕事や企業について、
良いことも悪いことも思うところを躊躇なく公開している。

企業の中では、その独特の立場と突出した実績から、
誰も抑えつけることができない存在。

ブログからは、仕事に対する愛情が、ひしひしと伝わってくる。
時には、その企業のふがいなさへの怒りまで。


なかなかできることではないな、と思っていましたが、

「してはいけないこと」「できないこと」と
皆が思っているだけなのではないか、

実は、水面下でもうルールは変わっているのではないか、
と興奮を覚えました。

つまり、自分の仕事や会社について、
事実や自分の考えを自由に書いてネット上で発表するのが
普通になる時代がくるかもしれないということです。

とはいえ、ルールは変わっていても、一般に認知され、
それが普通にできるようになるのは、まだまだ先の話です。

また、誹謗中傷や第三者に不利益を生じさせるようなことは、
もちろん社会的に許されません。

会社や上司、同僚の愚痴や不満を吐き出す、ということとも違います。
もっとフェアで前向きなものです。

イメージしにくいかもしれませんね。

仮に、今後、企業人としての情報発信に関して、
上記のような変化が表出してくるとしたら…

企業と従業員の関係のあり方も、今までと変わってくるかと思います。

企業としては、長年培ってきた従来の管理手法では対応しきれないので、
社員のコントロール方法を変えなければならない。

コントロール方法というよりも、付き合い方といったほうがいいでしょう。

では、どう変えるのか?

答えは「社員といい関係を築けるように従業員満足を高めること」
としておきます。


  

独自の言葉を創る

2012年02月19日 | ビジネス試論
 

ディズニーの特集を読んでいて、あらためて気になったことがありました。

それは、ディズニー独特の用語があるということです。

働いている人は「キャスト」で、お客さまは「ゲスト」とか、
その程度は知っていましたが、

あらためて、ネット検索したら、
「ディズニー用語」をまとめているウェブサイトがたくさんありました。

今回読んだ『週刊ダイヤモンド』の記事中からピックアップすると
こんなものがあります。


イマジニアリング
「イマジネーション」と「エンジニアリング」の合成語。
夢をかたちにするために140種類の技術分野で1200人のメンバーがいる。


オーディオアニマトロニクス
ディズニーでは「ロボット」をこう呼ぶ。


リビングキャラクター
“頭脳”を持ち、目の前のゲストと双方向のコミュニケーションができるロボット。
自立型のミッキーマウス・ロボットも構想中とのこと。


独自の言葉があるということは、独自の概念、独自の夢があるということです。

企業文化やブランドだけでなく、
テクノロジーでもディズニー独特の用語があることに注目したいと思いました。

ネットで、ウォルト・ディズニーのこんな言葉も見つけました。

 君たちはみんな、
 世界中でもっとも素晴らしい場所を夢見たり、
 想像したり、デザインしたり、造ることができる。
 しかし、その夢を現実のものとするのは人である

 我々が売ろうとしているものは、
 ファンタジーや物語を信じる気持ちだ。
 背景が本物のように見えないと、
 決して受け入れられてはもらえない。



さて、ディズニーに限らず、
成功した企業の創業者の言葉は、たいていユニーク(unique)です。

私が創業者の伝記が好きで、よく読むのは、
創業者独自の言葉、表現、文脈の捉え方を学べるからです。

言っている内容は同じだったりするのですが、
みなさん自分なりの言葉で表現されています。

一方、日々、自分の職場で耳にする言葉というのは、
たいていは「手垢のついた言葉」です。残念ながら。

経営層のメッセージに触れて、
げんなりしてしまうこともあります。

自分が見聞きする限り、
日本の大企業のトップメッセージなどにも
そういったものが散見されます。

しかし、イノベーションということを考えると、
独自の言葉や表現でメッセージを伝える能力は、
ますます大切な能力かと思います。

日本はこれから厳しい状況を生き抜いていかなければならないし、
各企業が古い体質から脱皮していくことが日本の力になる思います。

では、そういう自分は、会社の中でどんな取り組みをしているかな
と振り返ってみると、

まずは、自分独自の言葉で業務に関連した発信を行うこと、
また、自社ならではの言葉や文脈を発見し共有できるように貢献すること。

以上の2点かと思います。

微力ではありますが、日々心がけて実践しています。

スポ魂アニメから学ぶビジネストレーニングメソッド

2012年02月13日 | ビジネス試論
手帳をパラパラ見ていたら、
以前、テレビで耳にした、こんな言葉が書いてあった。

 常識の延長には、常識のちょっとふくらんだのしかない
 非日常の連続に金メダルがある


男子バレーの松平康隆監督の言葉。
1972年のミュンヘン五輪で男子バレーが金メダルを取ったときの監督。

Wikipedia には、「現在世界各国で使われている速攻、移動、時間差などといった
バレーボールの攻撃システムの基礎を築き上げ…」とある。

「ガッツ祐造」「フジヤマ・ブロック」など、選手にキャッチフレーズをつけたのも
この監督が始めたことらしい。

「非日常の延長」の言葉通り、テレビでは、「地獄の特訓」と称する
変わったトレーニングをしたことが紹介されていた。

逆立ちでここからここまで歩けなければオリンピックには行かせないとか、
ひもをつけたボールを振り回してよける練習とか。

実写とアニメを合体させたテレビ番組も紹介されていた。



1972/04/23~1972/08/20 (日) 放映時間:19時30分~20時00分
全17話 / カラー

こうした活動は、すべて松平監督の肝いりで行ったことのようで、
そのアイデア力と実行力は、現代ビジネスにおいても見習うべきところが多いと思った。

その後、

昔のスポ魂アニメには「地獄の特訓」というのがよくあったな。
あれを現代ビジネスに応用できないだろうか?

と、思い至るまでに時間はかからなかった。

早速、試してみる。





  *  *  *  *  *  *  *





ノーガード戦法

出典:あしたのジョー

【内 容】
あえてガードをしないという無防備な姿勢で
相手の度肝を抜く非常識な戦法。

【ビジネス応用例】 オープン化・シェア化へ向けて
会社に鍵をかけない








極度の減量

出典:あしたのジョー

【内 容】
力石徹は階級を下げるために凄まじい減量に取り組んだ。
すべては宿敵矢吹丈と戦うためなのだ。

【ビジネス応用例】 社員の健康増進へ向けて
社員食堂のメニュー改革
 Aランチ : りんご 1個
 Bランチ : トマト 1個
 日替わり : 白 湯 1杯








この遊びしか許してもらえなかった

出典:巨人の星

【内 容】
壁に空いた穴に向かってボールを投げる。
ボールは外の木に当たり、穴を通り戻ってくる。

幼い飛雄馬は、この遊びしか許されなかったという。

これくらいの強制をしなければ、
針の穴を通すコントロールは身につかないのである。

【ビジネス応用例】 社員の交流促進へ向けて
コミュニケーション活性化と仲間意識醸成のため、
昼休みは屋上でバレーボール強制。

これくらいの強制をしなければ社内結婚も生まれないのである。








大リーグ養成ギプス

出典:巨人の星

【内 容】
いわずと知れた特訓機器である。

【ビジネス応用例】 社員の体力強化へ向けて
ビジネスマンも体を鍛える時代なのだ!

参考ブログ
TAKUTOの魂のニールキック:リアル大リーグ養成ギブス!MASSが凄い!!








【番外編】
水樽による特訓

出典:少林寺三十六房(映画)

【内 容】
水の入った樽を手を広げた状態で持ち上げて運ぶ。
重さに耐えかね腕が落ちると剣がささる。

【ビジネス応用例】 正しいビジネスマインド育成へ向けて
椅子の背もたれに剣が仕込まれている。
背筋を伸ばして座らないと肩甲骨と肩甲骨との間にささる。

姿勢を正すことで心も整えられる。





  *  *  *  *  *  *  *





そのほか、調べていくと、

「侍ジャイアンツ」 : 樽に入って崖から転がり落ちる





「柔道賛歌」 : ダンプカーに繋いた米俵に挟まり引きずられる



というものもあった。

今回は取り上げなかったが、「空手バカ一代」「タイガーマスク」「アタックNO.1」…などなど、
まだまだビジネスに応用できそうな特訓がありそうである。

これを眠らせておく手はない。

「非日常の連続」で企業にイノベーションを生み出したい方に
是非、お勧めしたいメソッドである。

ニトリの送料

2012年02月11日 | ビジネス試論

PCを見ていた奥さんが
「おもしろーい」と言うので何かと思ったら、

ニトリの通販サイトを見ていて、
送料を確認したら、こんな表示だったとのこと。



「普通、何千円以上買うと送料無料とか言うでしょ」

「うん」

「これって、逆よね。購入金額が高くなると送料も上がる」

「あ、そうだね」


例えば、ハンディクリーナー(1,990円)を1個買うと送料は500円。



ハンディクリーナーに電気ケトル(2,900円)とコーヒーメーカー(1,400円)を加えると、
合計で5,000円を越えるから送料は1,000円になる。




ただ、完成家具は送料無料(離島など一部地域を除く)とある。

「完成家具」というのは、学習机とか本棚とかベッドとか、
いわゆる「大型家具」のことらしい。

他の通販サイトを見てみると、様相が異なる。

これは「ディノス」の送料。



小さい物なら一度に何個買っても送料は一律350円。

ただし、荷物が大型になればなるほど配送料が高くなる。

次は「ベルメゾン」。



もう少し買えば送料無料になる…ということで、
一人当たりの購入金額を上げようという作戦である。

でも、本当に顧客の購買意欲にリーチしているのだろうか?

顧客目線から発想していくのがトレンドになってきている今、
なんだか企業側の理論は古くさい感じがしてしまう。

で、「ベルメゾン」も家具が大型になればなるほど送料が高くなる。

その他の通販は調べていないので、サンプルは少ないのだが、
ニトリの発想のベクトルは、従来の逆を向いているところに注目したい。

ニトリは、一体どういう観点で勝負しているんだろうか?

そういえば、出店計画も、店内がガラガラになるように考えている
という噂を耳にしたことがある。

空いているほうがお客さんが買い物がしやすいから、という理由らしい。

店が混みだすと、もっと人のこないところへ移転してしまうとも。

それが本当だったら相当ユニークだ。


送料に話を戻すと、

今や、amazonが、何でも送料無料という、
通販のルールを根底からひっくり返すような仕掛けをした。

念のため、大型の家具も確認してみたが、あらかた送料無料となっていた。

これからのネットショップは、よほどニッチに特化しているか、
ファンづくりをしているか、他では買えない商材を扱っているか、
何か強みがないと厳しいのではないか。

リアル店舗から、商店街やパパママストアが消えていったのと同じ現象が、
ネットの世界でも起こりつつあると思われるからだ。

ニトリについては、あまり詳しくないので分からないが、
分析してみたら、ユニークな戦略の全体像が垣間見えるかもしれない。

こうしたユニークさの裏には、従来の枠組みにとらわれない良質な「問い」がある。

・通販の送料は、なぜたくさん買うと安くなるのだろうか?

・店内は買い物客でにぎわっていないほうがいいのではないか?


ニトリは、そのほかにどんな「問い」を立てているのだろうか。




【オマケ】

ネットで検索したら、こんなPDFファイルを見つけました。

「ニトリの中期経営計画に関するお知らせ」

製品の改廃は誰のために行うのか?

2012年02月08日 | ビジネス試論
製品のライフサイクルというのは、どうしてもあります。

運良くロングセラーになればいいですが、なくなってしまう商品が大半だと思います。

しかし、どの業界のどんな商品でも、その商品のファンは少なからずいます。

商品の性質によっては、
「それがなくなってしまうと困る!」という人まで出てくるでしょう。

食品であれば、
「あの味が気に入っていて、ここ数年使っているんですよ。
 うちのお父さんは、あれじゃなきゃダメだと言っています」

医薬品であれば、
「あの薬が一番身体に合っていたんだぞ。俺を病気にさせる気か!」

学習教材であれば、
「ちょうど子供に与えたかったのに。子供の貴重な成長の機会が奪われた」

…など、いろいろな反応が巻き起こることが想像できます。

思い出すのは、ビデオテープ。

VHSが主となって、ベータを使っていた人は困った訳ですが、
そのビデオテープ自体が絶滅種になっしまった。

音楽でも、MDを持っている人は、この先を考えると
中途半端な心持ちがするのではないでしょうか。(自分がそうです)

今、企業戦略のトレンドの一つに、

 顧客の立場に立って、顧客の目線で

 顧客との絆づくり、ファンをつくる

といったものがありますが、

この製品の切り替え、リニューアル、廃止などの判断の軸は、
顧客の立場で施行されるというよりは、
企業サイドの都合で行われるものと考えられます。

やはり売れなかったというのが一番の理由でしょうが、
原材料が高騰した、小さい欠陥が見つかった…とか、
理由は様々にあろうかと思われます。

商品の改廃が悪いというつもりは全くありませんが、
顧客主義と整合するのかどうか、自覚して、整理する必要を感じます。

なぜなら、

自分たちの都合で商品を品切れにしたり、廃止にしておきながら、
トップが「我々は100%顧客の立場に立ちきる」などと言おうものなら、
社員のメンタルは引き裂かれてしまうからです。

企業の根本思想を、どのように後ろめたくない健全なものに保つか?

そのためには、自分たちの顧客主義とは、こういうことで、
このケースではこう考える、あのケースではこういうスタンスである、
などと手間暇をかけて具体例で答えを出して共有することかと思います。

さらに、win-winの方法はないだろうか、
相反する条件をクリアする第三の道やイノベーションはないだろうか、
と思考停止せずに頭を絞る姿勢もなければ…


ん~、言うは易しですね。

人のことより、まずは自分の根本思想と行動が大切、
と自戒して今回は終わります。


制限があるということ

2012年02月07日 | ビジネス試論
ここ最近、根を詰めてアウトプットをしてみたので、
自分が少し出がらしになったみたいな感触がある。

で、アウトプットよりも、インプットの意欲が勝っている今日この頃です。

そんなこともあり、読み切れないのに、たくさん本を買ってしまっているのですが、
その中でも『イノベーションのDNA』(翔泳社)が良いです。

まだ3分の1までしか読んでいませんが、
参考文献として挙げられていた論文が面白そうなので読んでみました。

“Turning Limitations into Innovation”Business Week

タイトルは、「制約をイノベーションに変換する」とでも訳したらいいのでしょうか。

意訳ですが、その中に

 制約は問題が何であるかを形作り、どこに課題があるのか絞り込んでくれる。
 そして、克服すべき明確な挑戦課題を与えてくれる。


という一文があります。

確かに、制約がないと、問題や課題があいまいとして見えてこないと思います。

論文では、俳句、ソナタ、宗教画を例にあげ、
創造性が制約条件に打ち勝つところに「美」があると述べています。

そういえば、ツイッターも140文字という制限がありますね。

前に何かで読んだのですが、考えてみれば、
スポーツの歴史はいかに制限(ルール)を設けるかという話です。

「どんな制約を設けたら面白いスポーツになるのか」という問い。

ビジネスに置き換えれば、
「どんな制約を設けたら価値ある製品・サービスになるのか」
ということになるかと思います。

論文には、こんなことも書かれています。

 創造性は、制約のもとで成長する

 制約はスピードと推進力を与えてくれる




引き続き、『イノベーションのDNA』を読み進めながら、
ビジネスにおける創造性について考えていきたいと思います。