・マザー・テレサ
孤独と、人に必要とされていないという感覚は、究極の貧困である。
・「身の回りに孤独な男性はいるか?」
1)母が「社会との唯一の窓口」だった父は、その死後、生きる意欲をなくし、体調を崩し、認知症を患い、亡くなった。
2)「仕事が生きがい」だった父は、退職後、「死んだほうがまし」と文句ばかり言っている。
3)退職後、夫が家にこもり切りで本当にいやになる。
4)元役人で、プライドが高い父は、退職後もなかなか近所やコミュニティに人々に溶け込まない。
5)友人のカルチャーセンターの女性講師が寂しい高齢男性のストーカー被害に遭っている。
6)元上場企業の役員だったという男性が、マンションの理事会で、「俺の話を聞け」と老害化している。
・2009年に、シカゴ大学の心理学者、ジョン・カシオッポ教授らが発表した研究だ。
アメリカ・マサチューセッツ州の5,000人以上の住人を対象に調査を実施、孤独な友人を持つ人が孤立感を覚える確率は、孤独ではない友人を持つ場合より52%も高く、友人のそのまた友人の友人にまでそうした「伝染効果」は及んだことを突き止めた。そのうえで、「寂しさがインフルエンザのように人から人へ『感染する』と結論付けた・そもそも、『楽しい』『悲しい』『怖い』『怒り』などといった『感情』は周囲にいる人を同じ気分にさせる『伝染効果』を持っている」
・オバマ大統領の下で連邦政府の公衆衛生局長官を務めていたビベック・マーレ―氏が「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌上で、
「孤独は深刻化する伝染病であり、その対処は喫緊の課題」という論文を発表し、話題を集めた。
・孤独による健康への悪影響は実に多岐にわたる。
1)孤独は冠状動脈性の心疾患リスクを29%上げ、心臓発作のリスクを32%上昇させる。
2)孤独な人はそうでない人より、20%速いペースで認知機能が衰える。
3)孤独度が高い人がアルツハイマーになるリスクは、孤独度が低い人の2.1倍。
4)孤独は、体重減少や運動による血圧低下を相殺する負の効果を持つ。
5)孤独な人は、日常生活、例えば、入浴、着替え、階段の上り下りや歩くことなどにも支障をきたしやすくなる。
・家族以外のネットワークや、ボランティアや地域活動への参加などといった社会や地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念を
「ワークソーシャルキャピタル(社会関係資本)」と言い、社会の結束力、人間関係の豊かさを示す指標として近年、注目されている。
ソーシャルキャピタルには三つの指標がある。
1)隣近所や知人、親戚、職場の同僚などとの付き合いや、スポーツや趣味等への参加などの「付き合い・交流(ネットワーク)」
2)そうした人々に対する「期待」や「信頼」
3)地域活動・ボランティア、NPO、市民活動への「参加」
この総合値であるソーシャルキャピタルと健康の間には密接な相関関係があることが数多くの研究で明らかになっている。
2017年版のランキングによると、日本は全世界149カ国中、101位、先進国中では最低で、カンボジア、ルワンダ、イラン、ニカラグア、ザンビア、ガーナなどを下回った。
・『タテ社会の人間関係』中根千枝著
日本社会においては、人のアイデンティティが職業などの「資格」ではなく「場」によって規定されると洞察した。つまり、日本人が外に向かって、自分を社会的に位置づける場合、「エンジニア」や「研究者」というより、「〇〇社の者」というアイデンティティ認識が色濃く、家や職場、といった「場」や「枠」による集団構成力が強いということだ。
・『「甘え」の構造』土居健郎著
「無償の奉仕」に慣れない男性は、知らないうちに、自らの「奉仕」に対し、「働きを認めプライドをくすぐる」という「対価」を求めているところがあるのかもしれない。
・人間は「本能的に接触要求を持つ生物」であり、スキンシップは人間にとって、最も強力なコミュニケーション手段である。
アメリカの調査では、ハグをする人は風邪などにかかりにくくなり、かかったとしても治りやすい、ストレス耐性が増すという結果だった。肌を触れ合うことは、愛情ホルモン「オキシトシン」の生成を促す。スキンシップは人間のコミュニケーションやつながり、そして健康にとって必須のものなのだ。
・アメリカの調査会社ギャラップの調査によると、人は働きを認められ、ほめられると、生産性は向上し、勤労意欲、忠誠心は増し、帰属意識が高まり、会社への定着率が上がる、という。転職が盛んなアメリカにおいては、優秀な社員をつなぎとめておくためにも上司の「ほめ力」は欠かせない。戦略のコンサル会社、マッキンゼーによれば、たとえ報酬を上げなくても、
①上司からの賞賛
②幹部(リーダーシップ層)からの評価
③プロジェクトやタスクフォースの仕事を主導するように任せる
という三つの方法で、コストをかけずに、社員のやる気を刺激できるとしている。
なぜ、「ほめること」は人のやる気を刺激するのか。それは仕事が認められ、賞賛されることによって、脳内に「生きる意欲を生み出す快楽ホルモン」ドーパミンが放出されるからだ。
・ほめられることによって、自分の価値を再認識し、自分が必要とされていると感じることができる。
最も強力な動機付けツールなのに、日本人はその活用を怠っている。
ほめられたいのに、ほめられない。褒めたくても、ほめられない。日本のオジサンの「ほめられない」苦悩の淵はマリアナ海溝よりも深いのだ。
・世界的に見た日本人社員の
「エンプロイー・エンゲージメント」の数値の低さだ。「エンプロイー・エンゲージメント」とは、企業と社員の関係性を示すことで、日本語でぴったりはまる訳語が見つからないのだが、engagementを直訳すると、「従事」「関与」。要するに「社員が企業に対して、どれぐらいの愛着やコミットメント、忠誠心、士気や誇りを感じているか」ということだ。そういった気持ちを持つ社員が多ければ多いほど、企業の競争力は増し、高い利益を生み出すことができる。
ギャラップ社が2011年~2012年にかけて142カ国、20万人以上を対象に行った調査で、日本で「仕事にengageしている」と答えた人の割合は先進国中、最も低く、わずか7%。これは米国(30%)などと比べても格段に低かった。
・アメリカのベストセラー作家ダニエル・ピンクは働き手にエンゲージメントを感じてもらう条件として「自主性」「成長」「目的」の三つを挙げたが、こうした「たらい回し人事(自分で仕事が選べない)」は、この内の二つを真っ向から疎外するものだ。
・大手広告会社の電通において入社1年目の女性社員が過労自殺した問題では、長時間労働ばかり問題視されることが多い。しかし、あの問題の根幹にあるオジサン上司の部下に対する「コミュハラ」も見逃してはいけない。「女子力がない」「残業時間はムダ」「髪ぼさぼさで出勤するな」。彼女のツイッターから垣間見える上司の言葉は、ねぎらいや励ましではなく、典型的な「ダメ出し」コメントばかりだ。
・部下を叱咤し、統率するそうした上司は成果を出しやすいので、幹部の覚えもいい。残業も厭わないし、権力欲も強いので、猪突猛進だ。自分自身が「ダメ出し」で鍛えられてきたから、それが部下へのコミュニケーションのデフォルトだと思っている節もある。ポジよりもネガを拡大視するくせがついてしまうと、なかなかそのマイナス思考から抜け出ることができなくなってしまう。ほめるより、けなす、ケチをつける。こうして「愚痴」や「文句」が口癖の「ダメ出し」「説教」オジサンが量産されていく。
・古代ギリシャの哲学者
アリストテレスは説得には3条件があると言った。
1)話し手の信頼性「エートス」
2)話の論理性「ロゴス」
3)相手の感情に訴える力「パトス」
・笑顔には、幸せ醸成効果があるのだという。その驚異的パワーは、欧米の実に多くの実験によって実証されている。
例えばこんな実験だ。
①人の魅力の評価は、笑顔によって大きく影響される。いい笑顔は多少の不細工さをカバーする。
②30年にわたる調査で、学校アルバムの顔写真で笑顔を見せている人ほど、その後、結婚や仕事などで成功を収め、幸せになっていた。
③1950年代のメジャーリーグの選手の顔写真の載った野球カードを調べたところ、笑っていあに選手の平均寿命が72.9歳だったのに対し、笑っている選手は79.9歳だった。
④1回の笑顔は、チョコバー2000本分の脳刺激、1万6000ポンド(約280万円)を受け取った時と同じだけの脳への影響がある。
・自分が孤独かどうかを確かめる簡単なチェックシートがある。
1.私は自分の友人関係、人間関係に満足している。
2.いつでも助けを求められるような関係を十分な数の人と築いている。
3.自分が満足するレベルの人間関係を築けている。
それぞれの質問に対し、
①非常にあてはまる、なら ×0
②あてはまる、なら ×1
③どちらでもない、なら ×2
④あてはまらない、なら ×3
⑤全くあてはまらない、なら×4
をそれぞれ掛け合わせて、足してみよう。総計が0~4であれば、全く問題なし、5~8であれば要注意、9~12であれば、「孤独」である可能性が高い、ということになる。
(イギリスの孤独対策キャンペーン団体「Campaign to End Loneliness」の指標)
・老後に向けて蓄えるべきは「カネとコネとネタ」
1)カネ 充実した老後を送りたいと思えば、これはあるに越したことはない
2)コネ まさに人とのつながりだ。いざと言う時に支え合う、深くて緊密な絆。
3)ネタ 「生きがい」のようなものとで言おうか。特に、社交など人との付き合いがあまり得意ではない男性は、この「ネタ」を共通項に人とのつながりを作っていくこともできるだろう。
・「ネタ」を見つける三つの視座がある
1)「夢中になれるもの」
2)「社会が求めるもの」
3)「得意なもの」
・幸福感の醸成要素として、「自己有用感」と人生の「目的」や「意味」が重要だ、との考え方がある。自分が必要とされている、役に立っているという感覚。そして、何かのため、誰かのために生きるということ。オーストラリアの心理学者、
ビクトール・フランクルが自らのユダヤ人収容所での経験についてつづった名著『Man's Search for Meaning』(『夜と霧』)の中で、収容された人々の生死を分けた究極的なカギは、「生きる意味、目的」を持っているかどうかだったと論じている。そのうえで、「幸せは目標とするものではなく、結果でしかない」と洞察した。
自分の幸せだけを追求する人は人とのつながりを犠牲にし、「孤独」になりやすい。自分は何のために生きるのか、その根源的な問いに答えを見つけることは容易ではないが、人との結びつき、関係性の中で、「人のために、社会のために」という利他的な動機を見出せる人の幸福度は高いとも言われている。
・嫌われるオジサンの「八大禁忌症状」といえば、
①むっつりオヤジ ⇒「あいさつ」をする ~まずは「壁」を破ろう
②威張るオヤジ ⇒「いいね!」 ~ほめ上手になろう
③ダメ出しオヤジ ⇒「いいね!」 ~ほめ上手になろう
④説教オヤジ ⇒「うん、そうだね」 ~耳を傾けよう
⑤昔話オヤジ ⇒「うん、そうだね」 ~耳を傾けよう
⑥自慢オヤジ ⇒「うん、そうだね」 ~耳を傾けよう
⑦キレるオヤジ ⇒「えがお」
⑧文句オヤジ ⇒「お礼」を言う ~感謝をする
・オーストリアで、死に近づいた患者の世話を続けてきたブロニー・ウェアさんが、その8年間の経験の中で接した人たちに聞いた「死ぬ瞬間の後悔」を2009年に、ブログにつづったところ、その内容が奥深い、とネット上で大反響を呼んだ。「死にゆく人々の五つの最も大きな後悔」として挙がったのは、
1)他人が自分に期待した人生ではなく、自分が全うしたかった人生を送る勇気を持ちたかった。
2)そんなに一生懸命働くのでなかった。
3)自分の思いをもっと表す勇気があればよかった。
4)友人たちともっとつながりを持っておくべきだった。
5)もっと自分を幸せにしようとするべきだった。
というものだったという。
感想;
孤独が心身に大きく影響していることがよくわかりました。
そしてそれが伝染するのは驚きました。
幸せにするための工夫と努力は必要なのでしょう。
嫌われるオジサン、頭に留め、注意したいと思いました。
オキシトシンやドーパミンという幸せにする、楽しくさせるホルモンを出す努力も大きいように思いました。
人が期待する人生ではなく、自分がやりたい人生を選択することなのでしょう。
60歳で早期退職を選択しました(会社の定年は65歳)。
役職と給与が後5年保証されていました。
しかし、38歳で胃がんで胃を2/3切除したので、やりたいことをするを選択しました。
収入はゼロです。
でも何とか暮らしていけると判断し、やりたいこと、それは次の世代の人に自分が30年体験してきたことや得た知識を伝えたいとの思いでした。
新薬を合成したと思って研究職で採用されましたが、配属は製造所の品質管理部で製品試験でした。
本にもありましたが、会社ではやりたい仕事をさせてもらえる保証はありません。
退職して研究職を追及するか、配属された部署で面白味を見出すか。
後者を選択しました。自分の意図とは別の力で学んだことを他社も含めた次の世代の人に伝えたいとの思いが強くなりました。
ロゴセラピーでいう、「人生からの問いに応える」だったのかもしれません。
HPを作って、自分の知識や体験した話を掲載していたら、セミナー会社から講師や執筆の依頼が来ました。間違ったことを言ったらどうしようと不安もありましたが、「その時はその時に考えればよい」と多少人生経験も積んでいたので、ほとんど引き受けました。
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新しいことを選択するには今持っているものを棄てる勇気が必要なようです。
手放すものが大きければ大きいほど、たくさん新しいものを掴める可能性があります。
指標の孤独度チェックをしたところ、孤独に近い孤独要注意でした。
やりたいことをやっているのが孤独を補っているように思いました。