新・桜部屋

主に伝統芸能観劇記。
その他鑑賞日記

康楽館歌舞伎大芝居 二代目中村魁春襲名披露(05年7月8日観劇)

2005-07-08 22:43:33 | 歌舞伎鑑賞雑記
まずは康楽館の説明をば。
明治43年に建設された康楽館は日本最古の芝居小屋だということで、外観は洋風・内部は花道に桟敷席に座布団と立派な和風の建築です。秋田県鹿角市小坂町小坂鉱山という地名が示すように、ここは明治から大正にかけて鉱山で栄えた町。康楽館は鉱山で働く人たちの福利厚生の為に建てられた芝居小屋なのです。

義経千本桜~吉野山:源九郎狐に吉右衛門、静御前に魁春。まず花道の出で、「大きい」と感嘆。歌舞伎役者は大きな顔が命、それにしてもこの芝居小屋の見易さといったら。すり減った手すりに愛情を感じながら背中を預けました。
初日の初回だったためか、魁春の足元に余分な力が入ってしまったもよう。と思うと吉右衛門も踊りの足元がスと滑り、どうやら舞台の板が滑りやすかったようです。
小さな舞台上で8人も若い衆がとんぼを切るので大迫力でした。
千本桜は形を変えた道行き、家臣と御前、狐と静、直垂と鼓。恋路と勘違いをしてしまいそうな、そんな雰囲気がよく出ていました。

口上:一幕目が終わったところで、康楽館の係員の方に「せっかくの芝居小屋だからマイク使わないで下さい」とお願いをしたのは私です。2階席の上、左右に無用のスピーカーが備え付けられて折角の肉声もお囃子もツケの響きもハウリングして台無しになっていたのです。必死の訴えの甲斐あって、口上からはスピーカーの音が消えました。多謝。
ずらりと並んだ役者さんは、吉右衛門,魁春,梅玉,東蔵,歌昇,玉太郎,芝雀そうそうたる顔ぶれでした。

与話情浮名横櫛~木更津海岸見染めの場,源氏店の場
与三に梅玉、お富に芝雀。舞台の縦横比率が1:1.8見当くらいなので、背景が狭く、低く、奥に深くて役者さんの大きさが目立ちました。
見染めの場では与三とお富の目が合っただけで客席が沸くという不思議な体験。そして与三の羽織がはたりと落ちる所作で、仁左右衛門の凄さが判ってしまいました。
源氏店では歌昇の蝙蝠安が活躍、そして東蔵の多左衛門が大番頭らしい貫禄。
中村一門で占められた空間は非常にアトホームで、間合いも呼吸も飲み込んだもの。こなれた良いお芝居に仕上がっていました。

芝居小屋なので、お囃子方の控え室は2階席の後ろ。もちろん空調などないらしくて、出待ちの役者さんは階段のあたりで芝居を観ていたり、三味線抱えた爺さまがうろうろしていたり。それはもう、中に居るだけでわくわくするような空間でした。

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