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最低保障年金制度の創設などの年金制度の抜本改革、検討を前倒し

2010年01月27日 10時15分53秒 | ベーシックインカム
先週、税・社会保障の共通番号制度の検討を前倒しの方針が出されたばかりだが、年金制度の抜本改革においても検討を前倒ししてスタートすることが明らかになった。

長妻大臣が、昨日の記者会見にて、最低保障年金の創設などを含む年金制度の抜本改革について、「内閣全体で幅広い議論を始めてはどうか」「財政の問題を含めて、かなり大きな課題になる」などと延べ、長妻大臣と管副総理・大臣、仙石大臣を中心とする関係閣僚会議を設置する方針が明らかにされた。
共通番号制度の検討部会に並行して、関係閣僚会議にて年金改革についての大きな方針を議論するとともに、厚生労働省内に大臣直轄の検討チームを立ち上げ、具体化していくとのこと。

例えば、現行の年金制度をいったん「清算」して、新しい制度に移行するとなるとかなり大掛かりな制度改革になる。また、保険料だけでは賄えないとなれば、消費税率の見直しも必要になるだろう。これまでの「常識」に照らし合わせて考えると、できそうにないことに取り組むのだから、議論する時間はいくらあっても足りない。検討を前倒しして、議論する時間を確保しようという考えなのだろう。また、検討を前倒しすることで、「参議院選挙のマニフェスト」として国民に問うこともできる。
このブログで、年金記録の照合を進めて「宙に浮いた年金記録問題」の解決に注力することも大事だが、それだけでは、国民の不安や不信は払拭できないだろうと書いた。民主党がマニフェストに掲げた新しい年金制度の検討を前倒しして、具体的なものとしてわかりやすく提示し、「将来、確実に年金がもらえる」「年金制度が破綻することはない」「老後の資金の心配をしなくてもよい」といった制度への安心感や信頼感が国民の間に生まれないと、「宙に浮いた年金記録問題」から始まった年金に関する不安や不信は払拭できないだろう。

新たな年金制度の設計は今年開始…厚労相
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20100126-567-OYT1T01113.html

年金改革 長妻厚労相、関係閣僚会議の設置検討
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100126-00000608-san-soci

具体的な検討テーマとして、「現行制度の問題点」「国民が望む制度の姿」「諸外国での制度改革の進め方」「新制度の原理・原則」の4つが示されている。検討テーマや関係閣僚会議の進め方については検討中とのことだが、これらは、大きな方針を決めるにあたっての前提を揃えるにあたって必要となる、
年金制度の具体的な議論に入る前の「地ならし」にあたる検討で、年金制度改革の第一歩としてとても重要になる。このブログでもしっかりと追いかけていきたい。

長妻大臣閣議後記者会見概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r98520000003y0j.html

日本年金機構(旧社会保険庁)の年金システムは、あまりの複雑さのため、運用に膨大な費用が必要となっている。ベンダーを切り替えようにも、つぎはぎだらけの年金制度に対応するための完全なドキュメント(仕様書)を書き下すことができる職員はいないといえる。
思い切って年金制度をゼロからつくり直すぐらいのことをすれば、過去の膨大な資産を引きずっている年金システムをゼロから再構築できるだろう。逆にいえば、それぐらいの思い切りが必要になるということである。

長妻大臣は、「宙に浮いた年金記録問題」への取り組みを通して、年金制度を支えるITシステムの重要性がわかっていると思う。新制度を検討するにあたっては、どのようなITシステムが新たに必要になるのか、現行のITシステムに手を入れることになってさらに複雑怪奇なものにしてしまわないかをしっかり考えるべきである。また、新制度の具体化にあたっては、これらが制約条件になる。早めにIT面や運用面からの検討と評価を行うべきである。おそらく、このブログで改めていうことでもないが。