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税と社会保障の共通番号制度、検討を前倒し GWまでに論点整理

2010年01月23日 10時11分53秒 | 情報化・IT化
昨年末の税制改革大綱の閣議決定後、藤井財務大臣が、今後の税制調査会の重要なテーマの一つとして「納税者番号」の導入をあげ、1年以内を目処に結論を出すと述べた。2011年度中に納税者番号制度に関する法律を整備し、2014年1月から運用を開始するというスケジュールが示されたが、盛り上がりに欠け、その後は、産経新聞が「前倒しの可能性がある」と報じたきりで、動きがなかった。

昨日の峰崎副大臣の記者会見で、今秋の臨時国会の法案提出を目指し、5月のGWまでに論点を整理するとの方針が示された。管副総理・大臣の指示によるもので、早々に作業部会を立ち上げることも明らかになった。なお、検討が進められるのは、納税者番号ではなく、税・社会保障の「共通番号」で、その用途としては、社会保障の給付と保険料などの徴収、納税、市民サービスとされている。

税・社会保障の共通番号制度「秋にも法案提出」 財務副大臣
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20100122ATFS2102L21012010.html

共通番号が導入されると、何が変わるのだろうか。例を使って、少し考えてみたい。
例えば、講義や講演などに呼んでいただき、謝礼をいただくときには、住所と氏名、電話番号などを書いて押印している。共通番号制度が始まると、それらの情報に加えて「共通番号」を書くことになる。講義や講演の依頼元は、その番号を使って税務当局に報酬を支払ったことを通知し、こちらは、いろいろなところから送られてくる支払調書を納税申告書に整理し、税務当局に提出する。それらの書類は「共通番号」で名寄せされ、突合されることになる。

「番号制度」を税務面で利用する場合のイメージ
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/nouzei/n03.htm

約1年間に公表された、この資料によると、共通番号には「固有性」と「可視性」が必要だとのこと。何らかの収入を得る可能性がある国民には番号が付与され、生涯に渡って、その番号が使えること(番号が変わったとしても、最新の番号と過去の番号が紐付けできること)。取引先に提示できることが求められる。社会保障カードのように「見えない番号」では駄目。住民基本台帳番号は目的が制限されているため、税・社会保障などの目的で使うための番号が新たに付与されることになる。

なお、勤務先にも「共通番号」を知らせることになるから、税務当局は、勤務先からの給与収入と、いろいろなところからの報酬のすべてを「共通番号」を使って名寄せ・突合できるようになる。この仕組みにより所得の捕捉率は高まり、「トーゴーサン」といわれる不公平感も小さくなる。このように把握した所得を、社会保障の給付にも使えるとなれば、事務は大幅に軽減できる。
共通番号制度が既に始まっていたとすれば、例えば、子ども手当の事務も大幅に簡素化できる。支給申請にあたって「共通番号」を書くようにとすれば、その番号をつかって前年度の所得や年金種別などを簡単に把握できる。申請にあたって自分で調べなくてもよくなるし、提出が求められる現況届を簡素化できる。子ども手当によって新たに支給対象になった世帯を機械的に抽出できるので、市町村の特例交付金の申請事務なども簡単になる。

このように効率化を進められるので、税や社会保障にかかる何かをするときに、必ず「共通番号」を書くようになるだろう。ITシステムがどこかでつながっていて、事務に必要な情報があちらからこちらへと自動的に伝えられるようになる。原口大臣の考える「クラウド化された納税システム」は、このようなものなのだろうか。

平成21年度 第26回税制調査会議事録
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/pdf/21zen26kaia.pdf

「クラウド化された納税システム」からイメージされるシステムは、住民基本台帳ネットワークに接続された共通番号の管理システムが中心にあり、それを所得把握のシステム、税や保険料の賦課・収納のシステム、社会保障サービスや市民サービスの給付のシステムなどが層をなして取り巻いているような「クラウド(もやもやとした雲)」。住民基本台帳ネットワークよりも大きなネットワークシステムが次から次へと整備されることになるかもしれない。