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国保組合への国庫補助、実態調査の結果が明らかに

2010年01月07日 09時48分03秒 | 高齢者医療・介護
1ヶ月ほど前、このブログで、国保組合の財政状況について書いた。
市町村国保が財政的に逼迫しているにも関わらず、国保組合の黒字分の積み立て=剰余金が約874億円に達していること、入院医療費を実質的に無料にしている国保組合があることなどが明らかになった(朝日新聞の報道)。

補助率トップは建設関係=国保組合の実態調査-厚労省
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100106-00000181-jij-pol

今回、明らかになったのは、約3000億円あるといわれてきた国保組合への国庫補助金の内訳である。
2009年度の予算ベースで、定率分の補助金が2167億円、国保組合の財政力によって決まる普通調整補助金が800億円。補助金とは別枠で、保険料収納率やレセプト点検の実施率などを評価して決まる特別調整補助金が約230億円。
医療給付費に対する国庫補助の割合は、単純に平均すると、40.5%に達する。国庫補助率の高い国保組合は、京都府酒販の70.6%、京都府中央卸売市場の67.4%、福井食品の64.4%など。京都府酒販は、特別調整補助金を加えると、補助率は、なんと79.2%に達する。積立金の名目で4億8千万円の剰余金を保有しており、財政は健全。これだけの補助金は必要としていない。

本来、国庫補助金は、財政状況が逼迫している医療保険者に支出されるべきもの。医療給付費の約8割を補助金が占め、かつ、剰余金を貯めこんでいるような国保組合があるのは、どう考えてもおかしい。国庫補助率と加入者へのサービスを適切なレベルに引き下げ、貯め込まれた剰余金を国庫に返納させるか、市町村国保と統合させて赤字の穴埋めにまわすべき。これまで、厚生労働省は「国保組合への補助率は55%を上限としている」と説明してきた。実態調査によって55%をはるかに超えていることが明らかになったのだから、今後の見直しは必至だろう。

18国保組合で入院無料 07年度、国庫補助受け
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/politics/CO2010010601000664.html

また、18の国保組合(建設12、歯科医師4、医師2)で、加入者本人の入院医療費が実質的に無料になる付加給付を行っていたことも明らかになった。厚生労働省は「入院医療費が実質無料の団体は指導したいと思う。特別調整補助金のあり方も精査したい」としている。18の国保組合への補助金を市町村国保と同じ水準まで引き下げたら、付加給付は続けられなくなるだろう。特別調整補助金は、加入者の自己負担を軽減するために支出されていると受け取られても仕方ない。

国保組合の実態が公式に明らかにされ、2011年度以降の国庫補助率の引き下げを含めて言及がなされたことは、政権交代の大きな成果である(1ヶ月前の朝日新聞の報道がきっかけになったのかもしれないし、国保組合を広域化後の市町村国保と統合するために少しずつ外堀を埋めているのかもしれない)。
特別調整補助金の約半分の111億円の支出を受けている全国建設労働組合総連合は、毎年度、前年度と同額の予算額を確保できるよう、与野党の政治家に働きかけているらしい。このような背景があって、国民皆保険の実現後も国保組合が存続してきたのだから、補助率の引き下げや廃止は簡単ではないだろう。「コンクリートから人へ」を掲げる民主党なのだから、2011年度予算の事業仕分け対象にし「政治主導」でばっさり切ってほしい。
補助金が途切れると国保組合の運営が立ち行かなくなるとの意見もあるが、時間をかけて補助金を少しずつ減らしていかなければならないものでもない。これだけ健保組合が解散しているのだから、国保組合が解散できないとは思えない。2010年度から、都道府県が主導して、市町村国保の広域化が進められる。市町村国保を都道府県に1つ、被用者保険も同じく1つ、いずれは2つを1つにしようとしているのだから、国保組合だけが存続し続けるとは考えにくい。それならば、国保組合を解散させ、早めに市町村国保と一緒になったほうがよいと思われる。