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ナショナルミニマム研究会の議事概要、公開される

2010年01月10日 09時50分00秒 | ベーシックインカム
昨年末(12/28)に、厚生労働省のホームページで、ナショナルミニマム研究会の議事概要が公開されていた。
第1回、第2回ともに1ページ少々に発言の要旨をまとめたものだが、最後まで公開されないよりは良い。URLを辿って、ご覧いただければと思う。

ナショナルミニマム研究会(第1回及び第2回)の議事概要について
http://www-bm.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003i96.html

第1回研究会で「ナショナルミニマムを議論するときに、母子加算の話をいきなり持ってくるのは難しい」「単に金銭所得や資産保有だけではなく、社会的なつながりを指標化するような研究や論文があれば紹介してほしい」などの発言があったことから、第2回研究会で「非金銭的な貧困指標」の説明につながったのだろう(第2回の議事概要に「第1回の宿題対応として」と書かれていることからの推測だが)。
また、「あまりにも相対的貧困率にとらわれすぎているのではないか。他の貧困の概念で日本の貧困を計測するというような視点からも貧困の計測をやっていただきたい」などの発言もあった。この発言を受けてではないが、国立社会保障・人口問題研究所が2007年に実施した「社会保障調査」、内閣府が公表した「高齢者の生活実態に関する調査」の結果が年末に相次いで明らかになっている。このブログでも取り上げているので、合わせてご覧いただければ幸いである。

興味深い発言は、「所得以外の剥奪や排除の指標はたくさんあるが、ナショナルミニマムの設定や貧困把握との関係で使う場合には、指標だけを取り出すのではなく、所得とそれらの指標の関係をみるという視点が必要ではないか」である。
例えば、「公設派遣村」の利用者の多くは、働きたくても働けない(機会がない)。年齢や学歴、身につけている職業能力や経験などが原因となって、社会から排除されているといえる。その結果として、職も、住まいも失い、また家族も失い(家族からも排除され)、経済的に困窮して「貧困・困窮者」となっている。その結果として、さらに社会から排除され、自信と尊厳を失い、パワーレスになっていく。2万円少々のお金を手にしたら、就職する機会を捨てて、どこかに行ってしまう。おそらく、そこから立ち去ったら「社会復帰」が遠のくことをわかっていながら... この悪いスパイラルに陥っている人たちを前にすると、そもそも国が設定しようとしている「ナショナルミニマム」とは何だろうか、という問いが成り立つ。
「人はパンのみて生きるにあらず」という。雨露をしのぐ住まいがあり、毎日のパンを買うだけのお金がある。そうすれば、日本に暮らす国民としての最低限の生活をおくっている、国は責任を果たしているといえるだろうか。先日、テレビの取材に、「社会とのつながりが切れると、社会から要らない人間になったような気がする(だから就職したい)」「誰ともつながっていないのだから、存在しないと同じ」などと答えていた人がいた。住まいやお金は大事だが、やはり住まいやお金だけでは駄目なのである。

「本日議論に出てきているだけでも国民生活基礎調査、全国消費実態調査、家計調査があった。それぞれ一長一短あると思うので整理して、その短所を補完するような調査ができないのか」「例えば全国消費実態調査は総務省の調査だが、これと同じようなことを高所得者や低所得者について追加的に調査をすることは可能なのか」などの発言からは、どうも何らかの調査をしたいように思える。
統計調査も大事だが、まだまだ議論が足りないし、そもそも「現代の貧困」と「ナショナルミニマム」とは何かを定義できなければ、指標も定まらないだろう。今後に期待である。