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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

2010年度政府予算案をざっとみると... その2

2010年01月18日 10時02分09秒 | 予算・事業仕分け
昨日に続き、2010年度政府予算案の社会保障関連費(27兆2686億円)の内訳をみていきたい。

平成22年度社会保障関係予算等のポイント
http://www.mof.go.jp/seifuan22/yosan010.pdf

年金が10兆3207億円で2.7%増、医療が9兆46694億円で4.3%増、介護が2兆803億円で1.1%増、福祉等が5兆4081億円で16.2%増。前年度と比較すると、福祉等の伸びの大きさが目立つ。
さらに福祉等の内訳をみてみると、子ども手当の創設が大きい。その内訳は、給付費が2兆2554億円、事務費の国庫負担が166億円、システム経費の助成が123億円となっている。その他にも、母子保健対策等総合支援事業が81億円と76%増。地域の子育て支援が総額3836億円、母子家庭等対策が1678億円、自立支援給付が5719億円などと、いずれも5~10%程度の増。

子ども手当は2兆2843億円と、福祉等の半分ほどを占めている。それでも、2010年度は半額給付で、児童手当を暫定的に残したために、児童手当の地方負担分の5680億円と事業主負担分の1790億円は含まれていない。マニフェストどおりに全額国庫負担すると2兆3345億円が必要になるとの説明だったことを考えると、2011年度には、福祉等に2兆3千万ほどが上乗せになり、7兆7千億円ほど(約40%増)になる。

これまで、日本の社会保障費は他国と比べて、年金が占める割合が大きすぎ、福祉等が少なすぎるとされてきた。ようやく他国並みに福祉等=現役世代への給付が大きくなったようにも思えるが、伸びの大半が手当(現金給付)であり、子育て支援などのサービスの給付(現物給付)はわずか。手当にまわす予算を子育てしやすい環境整備に充てるべきとの批判も、もっとものように思える。

雇用に関しても大きく伸びている。雇用保険の国庫負担が1602億円から3010億円とほぼ倍増。貧困・困窮者支援も14億円から34億円と額は小さいものの倍増。雇用維持費(事業主が、休業や出向などにより雇用を維持した場合に支給される助成金)が581億円から7452億円と大幅に増加している。現政権に求められていることは、雇用を守り、国民の生活を支援することであり、それを反映させた予算案といえる。

とはいえ、このペースで社会保障費が伸びていくと、2011年度には、年金と医療が10兆円ずつ、福祉等と介護を合わせて10兆円と、総額で30兆円に近づくことになる。税収が37兆円(よほど景気が上向かないと、2011年度にはさらに下がるおそれもある)ということを考えれば、現行の諸制度を維持できるとは思えない。社会保障費の分配が高齢者に偏っているからといっても、年金給付や高齢者医療を絞ることはできないだろうし、消費税をいくら引き上げたとしても賄えないかもしれない。

民主党の石川議員の逮捕により、政府予算案の議論はしばらく空転しそうである。野党となった自民党は、小沢幹事長の進退を巡って「4億円」の疑惑を追及する暇があったら、税収の落ち込みと社会保障費の伸びを整合性あるものにするためにどうするつもりなのかを追及してほしい。国民のためを思うならば、与党・野党の立場をこえて「日本社会をどちらの方向に持っていくべきか」「民主党が考える『第3の道』とは、具体的にどのようなものか」を徹底的に議論してほしい。