クスマノと違って、いずれも日本のソフトウェア・ビジネスを取り上げた本である。それぞれの概要は以下の通り。
**********
『ソフトウェアビジネスの競争力』 ソフトウェア産業研究会
日本におけるソフトウェア・ビジネスの問題点とその原因を分析し、どのようなビジネス・モデルが可能であるかの提唱を行っている。巻末にある独自アンケートによる集計結果も興味深い。
本書は、日本のソフトウェア業界の中心的ビジネスモデルである受託開発型が、品質、コスト、国際競争力の全てにおいて限界にきていることを指摘し、パッケージ型を目指すべきだと提唱する。パッケージ型が日本で根付かない理由として以下を挙げる。
・ユーザーが受託開発を好むため、結果としてパッケージ市場が小さい
・ソフトウェアの価値が人月をベースに測定されている
・政府調達が新規パッケージ開発を促す仕組みとなっていない
・ソフトウェア開発における知的財産権への意識が低い
その上で、ソフトウェア・ビジネスとして可能性のあるモデルとして、
・ASP型によるソフトウェアの提供
・日本が強いとされる組み込みソフト分野
を挙げる。また、ソフトウェア・ビジネスを受託型からパッケージ型へ転換するに際して、ベンダー企業は戦略的決断を行うべきであり、ユーザー企業・業界団体・政府が一体となってそれを支援するべきであるとしている。
**********
『ソフトウェア最前線―日本の情報サービス産業界に革新をもたらす7つの真実』 前川徹
こちらはソフトウェア業界のビジネス・モデルという観点よりも、社会のインフラであるソフトウェアの品質と生産性を向上させるにはどうすべきか、という観点から書かれている。
まず現状認識として、社会がソフトウェアに依存していること、そして日本のソフトウェア開発の生産性は必ずしも高くないことを指摘する。以降、以下の通りに、現状の問題点を議論している。
・ソフトウェア工学よりもプロジェクトマネージメントに問題がある
・ウォーターフォール・モデルはソフトウェア開発に適しておらず、ウォーターフォールに適した日本の重層下請け構造は問題である
・優秀なソフトウェア・エンジニアを厚遇するべきであるが、人月ベースの指標がそれを困難としている
・ユーザー側もソフトウェアの品質・生産性向上への貢献を行うべきである
最後の章では、パッケージを指向することでソフトウェア開発の生産性が向上することが指摘されている。
---------------------
これらの2冊は、異なる観点から書かれているが、いずれも日本のソフトウェア業界固有の問題点を中心に議論している点、またその一つの解決策としてパッケージソフトウェアを挙げている点で共通している。
誰もが受託開発からパッケージへという議論をしているのを聞くと、そこに何か落とし穴がありそうだと勘繰ってしまう。また、その逆行のロジックもニッチな分野として成り立つだろう。
仮にパッケージへと向かうとしても、パッケージ・ビジネスはハイリスク・ハイリターンであること、受託開発モデルとパッケージ・モデルはビジネスモデルの転換を要するために痛みが伴うことは考慮すべき点である。また、これらにどうに対応するかは、個別企業の事情によって全く異なるのである。
**********
『ソフトウェアビジネスの競争力』 ソフトウェア産業研究会
日本におけるソフトウェア・ビジネスの問題点とその原因を分析し、どのようなビジネス・モデルが可能であるかの提唱を行っている。巻末にある独自アンケートによる集計結果も興味深い。
本書は、日本のソフトウェア業界の中心的ビジネスモデルである受託開発型が、品質、コスト、国際競争力の全てにおいて限界にきていることを指摘し、パッケージ型を目指すべきだと提唱する。パッケージ型が日本で根付かない理由として以下を挙げる。
・ユーザーが受託開発を好むため、結果としてパッケージ市場が小さい
・ソフトウェアの価値が人月をベースに測定されている
・政府調達が新規パッケージ開発を促す仕組みとなっていない
・ソフトウェア開発における知的財産権への意識が低い
その上で、ソフトウェア・ビジネスとして可能性のあるモデルとして、
・ASP型によるソフトウェアの提供
・日本が強いとされる組み込みソフト分野
を挙げる。また、ソフトウェア・ビジネスを受託型からパッケージ型へ転換するに際して、ベンダー企業は戦略的決断を行うべきであり、ユーザー企業・業界団体・政府が一体となってそれを支援するべきであるとしている。
**********
『ソフトウェア最前線―日本の情報サービス産業界に革新をもたらす7つの真実』 前川徹
こちらはソフトウェア業界のビジネス・モデルという観点よりも、社会のインフラであるソフトウェアの品質と生産性を向上させるにはどうすべきか、という観点から書かれている。
まず現状認識として、社会がソフトウェアに依存していること、そして日本のソフトウェア開発の生産性は必ずしも高くないことを指摘する。以降、以下の通りに、現状の問題点を議論している。
・ソフトウェア工学よりもプロジェクトマネージメントに問題がある
・ウォーターフォール・モデルはソフトウェア開発に適しておらず、ウォーターフォールに適した日本の重層下請け構造は問題である
・優秀なソフトウェア・エンジニアを厚遇するべきであるが、人月ベースの指標がそれを困難としている
・ユーザー側もソフトウェアの品質・生産性向上への貢献を行うべきである
最後の章では、パッケージを指向することでソフトウェア開発の生産性が向上することが指摘されている。
---------------------
これらの2冊は、異なる観点から書かれているが、いずれも日本のソフトウェア業界固有の問題点を中心に議論している点、またその一つの解決策としてパッケージソフトウェアを挙げている点で共通している。
誰もが受託開発からパッケージへという議論をしているのを聞くと、そこに何か落とし穴がありそうだと勘繰ってしまう。また、その逆行のロジックもニッチな分野として成り立つだろう。
仮にパッケージへと向かうとしても、パッケージ・ビジネスはハイリスク・ハイリターンであること、受託開発モデルとパッケージ・モデルはビジネスモデルの転換を要するために痛みが伴うことは考慮すべき点である。また、これらにどうに対応するかは、個別企業の事情によって全く異なるのである。
kennさんのおっしゃる通りパッケージやASPなどはビジネスの構造からして、Salesforceのように圧倒的No.1でない限り、サービスに差別化要素が少ないとユーザに受け止められ、perfect competitionに陥っていくのではないかと想像します。
私はソフト業界でもClayton M.Christensenのイノベーションへの解にあるようなモデルが当てはまるかもしれないと思っているのですが、ソフトを使う業界、ソフトの役割、顧客ニーズとソフト性能の乖離などの条件によって、収益を上げるにはそれぞれ相互依存型かモジュール型かまたはその組み合わせかを見極める必要があるのではないかと思ったりします。(見当はずれかもしれませんが)
よりミクロにそれぞれの業界向けのそれぞれの用途のソフトについて、自分のリソースの能力、その分野でのポジショニング、アーキテクチャを考える必要があるのかもしれません。
SIは本当に難しい業界ですね。
日本の場合は、文化に加えて、大手SIerはほとんど大資本の子会社であり、安定株主がいるということで「株主価値の最大化」というインセンティブが働きにくいためか、リスクテイクできないのが現状だと思います。
いずれにせよ、何かを捨てないと新しいことはできない
訳で。。。今走っている、ないしは受注できそうなSI案件
を辞めてまで製品開発にリソースを振り向ける決断を
できる会社がどれだけあるか。。。
問題が表面化しているだけに、現状のビジネスモデルは悪で、成功している欧米のビジネスモデルを見習えという議論は必ず起きます。
が、そのあとに、本当にそのまま適用すれば良いのか、日本のモデルに良いところはないのか、転換せよといわれて転換できるものなのか、と一旦揺り戻しの議論が来る頃合ではないかと。
本当の戦略論が始まるのはそこからではと思います。