Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

金銀彩 一富士・二鷹・三なすび文 小皿

2021年03月23日 18時05分05秒 | 古伊万里

 今回は、「金銀彩 一富士・二鷹・三なすび文 小皿」の紹介です。

 ただ、この小皿に描かれた、鷹を意味する「羽根文」と「なすび文」、それに、裏面文様は、後世の後絵ではないかとの疑念がつきまといます(~_~;)

 その点をお含み置きいただいてご覧ください(~_~;)

 

 

表面

「羽根文」と「なすび文」は後世の後絵ではないのかとの疑念があります。

 

 

真ん中の帯状の金銀彩の部分の拡大

この帯状の部分には後絵の疑念はありません。

 

 

裏面

赤で描かれた文様は後絵ではないかとの疑念があります。

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

(一部の文様は後絵ではないかとの疑念がありますが、本体は江戸前期に作られた金銀彩ですので、一応、江戸時代前期といたします)

サ イ ズ : 口径;14.5cm  高さ;1.4cm  底径;8.5cm

 

 

 なお、この小皿につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しているところです。そこで、次に、その紹介文を再度掲載し、それをこの小皿の紹介の続きとさせていただきます。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー82 古九谷様式金銀彩一富士、二鷹、三なすび文小皿 (平成17年1月1日登載)

 

 この小皿を見ていると、どうも後(あと)絵のイメージが付きまとう。

 この小皿を見た瞬間、「あれっ! 珍しい図柄だな!! 一富士、二鷹(鷹の代わりに鷹の羽根を描いている。)、三なすび文だ!!!」と、図柄に惚れ込み、即断で連れ帰ったものである。

 しかし、何日間か見ていると、何となくしっくりこないのだ。「羽根」と「なすび」の文様は、後世になってから絵付けされたものではないのか、つまり、後絵ではないのかとの思いがつのるのである。

 真ん中の富士山を描いた帯状の部分は当初からある金銀彩文様であろう。古九谷様式後期には金銀彩が流行っている。富士山形の小皿や富士山が描かれているものが良く知られている。当時、富士山は人気が高かったのかもしれない。

 ところで、私がこの小皿を後絵ではないかと感ずるのは、 

① 「羽根」と「なすび」の絵が無い方がスッキリとし、全体のバランスもよいこと。

② 真ん中の帯状の金銀彩の部分の絵の描き方のタッチと「羽根」と「なすび」の絵の描き方のタッチがかなり違うこと。

③ 「羽根」と「なすび」に使われている色が、古九谷様式後期に使われている色とはだいぶ異なること。

④ 伝世品なのだから、古九谷様式後期に作られたものならば、「羽根」と「なすび」部分にもっと使用擦れのようなものが見られてもよいこと。

⑤ 特に、裏面の赤の松葉文等は、手擦れで薄くなっていてもよいと思われること。

の理由からである。

 しかし、後世の人が、「鷹の羽根」と「なすび」を追加すれば、「一富士、二鷹、三なすび文」となるのではないか、そうすれば人気が出て高く評価されるのではないかと考えるのは無理からぬものがあったとも思えるのである。
 ただ、後絵を施して金儲けをしようとする発想はいただけないが、「一富士、二鷹、三なすび文」にしよう、そして人々に夢を与える小皿にしようとした発想には憎めないものを感ずるであろう。

江戸時代前期     口径:14.5cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌23 古伊万里との対話(一富士、二鷹、三なすび文小皿)(平成16年12月筆)

登場人物
 主  人 (田舎の平凡なサラリーマン)
 富士男 (古九谷様式金銀彩一富士、二鷹、三なすび文小皿)

(表面) (裏面)
 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、今回のアップが正月になることを考え、殊勝にも、少しは正月らしい物をアップしてみようかと思ったようである。いつも、季節や時節におかまいなしにアップしていたことからみたら、格段の成長ではある。
 そうはいっても、主人のところは、なにせ、赤貧庫、極貧庫である。果たしてそんなものが見つかるのだろうか?

 

主人:今日は元旦だ。まずはおめでとう。
 元旦にふさわしい者に出てもらおうと思って、いろいろと押入れの中をかきまわしてみた。2~3それにふさわしい者がいたが、お前が最もふさわしいかなと思って出てもらった。(やっと一つだけ見つけ出したくせに、よく言うよ~との激しい抗議あり。)

富士男:それはそれはありがとうございます。
 ご主人さま、まずはおめでとうございます。

主人:うん。ところで、今回お前を選んだのは、まずは、金銀彩が施されているというところだな。金と銀で彩られているところなんか、いかにも華やかで、正月にふさわしいだろう。それに、何といっても、一富士、二鷹、三なすび文が描かれているところだ!

富士男:あの~、富士山となすびが描かれているのは判るんですが、鷹はどこに描かれているんですか?

主人:そうそう。それなんだがね。羽根が二枚描かれているだろう。その羽根は鷹の羽根であって、羽根で鷹を現していると思ってるんだよ。

富士男:なるほどわかりました。
 でも、なぜ、「富士山」と「鷹」と「なすび」が描かれていると珍重されるんですか?

主人:古くから、「初夢」に良い夢を見るとその年は良い年になると言われているんだ。一般に、「一富士、二鷹、三なすび」の夢が縁起の良い夢の代表とされているんで、それで、「富士山」と「鷹」と「なすび」が描かれている物が珍重されるんだよ。「富士山」と「鷹」と「なすび」が描かれた物を枕元に置いて寝れば、「一富士、二鷹、三なすび」の縁起の良い夢がみられるかもしれないじゃないの・・・・・

富士男:なるほどそうですね。
 でも、どうして、「一富士、二鷹、三なすび」の夢が縁起の良い夢なんですか?

主人:それにはいろんな説があるようだね。
 例えば、
①大願成就説・・・・・日本一の「富士山」と賢くて強い鳥の「鷹」を見ると大願を「なす」とする説
②徳川家康が好んだものとする説・・・・・徳川家康が、富士山、鷹狩り、初物のなすを好んだからだとする説
③駿河の国での高いものの順とする説・・・・・一番高いのが富士山で、次が愛鷹山(あしたかやま)、その次が初物のなすの値段だったからだとする説
④縁起のよいものの語呂合わせだとする説・・・・・富士は「無事」、鷹は「高い」、なすは「事を成す」に通じるので、「無事 、高い事を成す」と語呂合わせができるからだとする説
などがあるね。その内、④の説が一般的なようだが、これは、単に、語呂合わせだけではないと思うね。富士山は、高さ、姿、美しさ等の何をとっても誰もが認める日本一の山だし、鷹は強く勇ましく、日本最強の鳥として愛され珍重されてきた鳥だし、なすには一つも無駄な花が無いと言われるほどに子孫繁栄にふさわしいものだしね。そういう意味も含まれているんだと思うよ。

富士男:「なるほど」の連発で恐縮ですが、なるほどそうなんですか。
 あの~、また質問なんですが、「初夢」というのは、何時見る夢なんですか?

主人:そうだなーーー。国語辞典なんかでは、「正月元日又は二日の夜に見る夢」とあるから、三つ考えられるんじゃないかね。
 一つ目は元日に起きるまでに見る夢、二つ目は元日に起きてから二日に起きるまでに見る夢、そして三つ目は二日に寝てから見る夢ということになるだろうね。都合よく、広義に解釈すれば、それらのうちのいずれか早いところで見れば良いということになるだろうね。

富士男:それじゃ、今朝までにまだ見てない人でも、まだまだチャンスがあるということになりますね。

主人:そうだ、そのとおりだ。まだ初夢を見てない人は、お前を思い描いて寝て、是非、「一富士、二鷹、三なすび」の縁起の良い初夢を見て、今年一年を良い年にしてほしいね。
 ところで、今日はまだ骨董の話をしていなかったな。
 ここまでは縁起の良い話だったんだが、骨董の話となると、お前にとっては縁起でもない話になってしまうので、話題にするのをちゅうちょしていたんだ。

富士男:どんなことですか。気になりますねー。大丈夫です。気を確かに持ちますから、話してください。

主人:では、思いきって言おう。お前は後(あと)絵ではないかと思ってるんだよ。「鷹の羽根」と「なすび」の絵は、後で絵付けしたんではないかと思ってるんだよ。

富士男:そうなんですか。そんなもんですか。
 でも大丈夫です。全部が駄目なわけではないですから、それほどのショックではありませんでした。

主人:そうか。それならよかった。私も、お前を見た瞬間、お前の「一富士、二鷹、三なすび」文に惚れ込んでしまって、後絵のことなど全く考えもしないで買ってしまったんだよ。
 それほど「一富士、二鷹、三なすび」というのは、深く日本人の心に住み着いているんだろうね。初夢に縁起の良い夢を見て、その年を良い年にしたいと願っている人は多いんだろうよ。

富士男:私を思い描いて、少しでも多くの方が良い夢を見ることができればいいですね。

主人:そうだ。そのとおりだ。お前が後絵だったとしても、十分に世の為・人の為にはなるんだよ!

 

 

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追記 (令和3年3月25日)

 この小皿をインスタグラムで紹介しましたところ、3名から、これは、後絵ではないでしょうということで、それぞれ次のようなコメントが寄せられました。

① 羽根文となすび文がないと、上・下の余白に締まりがなくなり、バランスが悪いと思われます。

② 後絵を施した場合、このように金銀彩がそっくりうまく残るのか疑問です。

③ 金銀彩を台無しにするかもしれないリスクを冒してまで後絵を施す必要はないのではないでしょうか。素直に、後絵ではないと考えるべきではないでしょうか。

 これらのコメントに接し、これは、やはり、後絵物ではないのかもしれないとの思いを強くしてきました。

 かつて、上手の柿右衛門の白磁を10万円で買ってきて、そこに見事な赤絵を施してもらって100万円で売っていたというようなことが言われていました。

 かつては、そのようなことが盛んに言われていましたので、私も、後絵物には疑心暗鬼なところがあるようです。

 もう少し素直にみるべきなのかもしれません(~_~;)