Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

伊万里 色絵 梅鳳凰文小皿(一対)

2020年12月31日 14時21分12秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 色絵 梅鳳凰文小皿(一対)」の紹介です。

 これも、昭和60年に、東京で、前回紹介した「伊万里 色絵 花果実文輪花皿」を買ったお店で、同じ頃に買ったものです。

 前回紹介した「伊万里 色絵 花果実文輪花皿」については、ボデーが寛文・延宝期の特徴を持つ造形で、絵付けが元禄ですから、ボデーと絵付けとの間に差があり、時代が一致しませんが、そのようなこともあり得るだろうと思い、「伊万里」として購入したわけです。

 しかし、その「伊万里 色絵 花果実文輪花皿」は、伊万里写しの「大聖寺伊万里」の可能性が高いようです。

 その点、この「伊万里 色絵 梅鳳凰文小皿(一対)」のほうは、ボデーはやはり寛文・延宝期の特徴を持つ造形で、絵付けがやはり元禄ですが、こちらは、ボデーの縁周りの陽刻が浅くて力強さに欠け、絵付けも繊細すぎて弱々しいですから、これは、伊万里にしても、明治に入るだろうと思ったところです。

 私は、明治のものは、原則、コレクションの対象としていませんでしたから、「買うべきか、買うのを止めるべきか」について迷ったところですが、授業料のつもりで、参考品とするつもりで買うことにしたものです(~_~;)

 

 

表面(一対)

 

 

裏面(一対)

 

 

表面(代表の1枚)

 

 

裏面(代表の1枚)

 

生 産  地 : 伊万里・有田 (大聖寺伊万里の可能性あり)

製作年代: 明治時代

サ  イ  ズ: 口径;15.5cm  底径;6.8cm

 

 

追記

 今年最後の紹介が、疑問を投げかけるものとなってしまいました(~_~;)

 でも、文様は、真ん中に梅花があり、門口には門松のようなものも見られ、左下には見ようによっては竹笹とも思えるものも見られますので、全体としては松竹梅のお目出度い文様にも思えます。

 更に、上空には鳳凰も舞っていますので、お目出度い文様には違いありません。

 皆さん、どうぞ、このお目出度い文様に免じ、今年最後の紹介が不甲斐ないものになってしまいましたことをお許しください。

 良いお年をお迎えください(^-^*)

 

 

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追記>(その2)(令和3年1月2日)

 

 この小皿をインスタグラムで紹介したところ、越前屋平太さんから次のようなコメントが寄せられました。

 

「これは明治伊万里、有田焼だと思います。元禄の柿右衛門あたりを写した復古調の上手品ですね。」

 

 それで、この小皿の生産地を、「伊万里・有田 (大聖寺伊万里の可能性あり)」ではなく、「伊万里・有田」と致します。


伊万里 色絵 花果実文輪花皿

2020年12月30日 17時22分48秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 色絵 花果実文輪花皿」の紹介です。

 これも、昭和60年に(今から35年前に)、東京で買ったものです。

 

表面

 

 

裏面

 

 この皿の口縁には、鋭い鎬(しのぎ)が施されています。

 このように、口縁に鋭い鎬を施す皿の造形は、寛文(1661~72)・延宝(1673~80)期の特徴です。

 確かに、口縁の造形の特徴だけから見れば、この皿は、寛文・延宝期に作られたものだろうと思わせます。しかし、描かれた文様を見ますと、あまりにも上手に多くを描き過ぎているように感じられます。見込み面に描かれた絵の下側には琵琶が描かれているのは分かりますが、絵の真ん中は、アザミなのか栗なのか分かりません。また、絵の上側に赤を多く使って描かれているものは花なのか果実なのか分かりません。それで、この皿の全体の文様としては「花果実文」としたようなしだいです。このように、全体的には、コチャコチャと描かれていて迫力を感じません(><) 寛文・延宝期の力強さを感じさせないんですよね。皿の造形と皿に描かれた絵との間に時代の不一致を感じさせるわけです(~_~;)

 そこで、この皿の製作年代について、私なりの考察を加えてみることにしました。

 この皿の高台内に描かれた「銘款」をヒントに考察してみたいと思います。

 

 「銘款」につきましては、佐賀県立九州陶磁文化館発行の「柴田コレクションⅣ」の巻末に、鈴田由紀夫氏(現:佐賀県立九州陶磁文化館館長)が「17世紀末から19世紀中葉の銘款と見込み文様」という論文を寄せていますが、その中で、鈴田氏は、次のように書いています。

 

「1670年代から80年代には、草書体の「福」字銘が現れる。古窯跡の出土例では、長吉谷窯の陶片にある。草書体の特殊な事例はそれ以前にもあるが、このころから福の「田」の部分が渦を巻き始める。当初は渦が一重か二重であるが、①になると三重となり、典型的な通称「渦福」が出来上がる。柿右衛門窯や南川原窯ノ辻窯で①のような銘の作品が作られるが、その後肥前各地の窯で用いられる銘である。②から④は、①が流行するにつれて変容してゆく過程を示している。描き方は粗雑になり、渦が四重にまで増える。また④になると福の書体が崩れ過ぎて、原字が判断しにくくなっている。渦を巻くタイプの「福」字銘としては最終段階であり、・・・」

 

 

 ところで、この皿の「銘款」を拡大してみますと、次のようになります。

 この「銘款」は、上の①の典型的な通称「渦福」に近いと言えるのではないでしょうか。

 ということは、この皿は、①の「1690~1710年代」に作られた可能性が高いということになります。

 

 以上のことから、この皿は、造形的には「寛文(1661~72)・延宝(1673~80)期」の特徴を残しながらも、銘款の特徴から見て、それより少し遅い時期の「1690~1710年代」に、つまり、「元禄(1688~1703)~享保(1716~1735)期」に作られたものと思われます。

 

製作年代: 江戸時代中期(1690~1710年代)

サ イ ズ : 口径;16.0cm  底径;9.7cm 

 

 

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追記(令和2年12月31日)

 この皿をインスタグラムで紹介しましたところ、越前屋平太さんから、次のようなコメントをいただきました。

 

   「典型的な大聖寺伊万里の高台、裏行きですね。」

 

 このコメントに接し、私は「なるほど!」と思いました。

 何か、伊万里にしては、腑に落ちないというか、腹に入らないところがあったからです。

 ちょっと違和感を覚えていたんですよね。ボデイは「延宝・寛文期」の名品にみられる造形、そして、絵付けは柿右衛門の優品ですものね。両者の良いとこををミックスさせているんですよね。伊万里写しをした大聖寺ですが、これでは、伊万里を超えていますよね。

 このようなことで、多分、この皿は、大聖寺伊万里なのかもしれません。

 越前屋平太さん、貴重なコメントをありがとうございます(^-^*)


伊万里 染付 柳に鷺文変形小皿

2020年12月29日 15時30分10秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 染付 柳に鷺文変形小皿」の紹介です。

 これは、昭和60年に(今から35年前に)、東京の骨董屋から買ってきたものです。

 

 

表面

 

 

表面の右半分の拡大画像

 

 

裏面

 

 

裏面の側面に描かれた文様部分の拡大画像

この様な文様が全体で3カ所描かれています。

 

 

製作年代: 江戸時代前期

サ イ ズ : 長径;17.4cm  短径;12.0cm  底長径;11.3cm  底短径;7.4cm  

 

 

 これについても、既に、今では止めてしまっている拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で紹介していますので、次に、それを再度紹介し、この小皿の紹介に代えさせていただきます。

 

 

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           <古伊万里への誘い>

*古伊万里ギャラリー13 古九谷様式染付柳に鷺文変形小皿(平成13年12月1日登載)   

 この小皿は、昭和60年に購入したものである。購入のいきさつについては、「古伊万里バカ日誌3」に記したとおりであるが(:「古伊万里バカ日誌3」に記されているそのいきさつは下記の<注>のとおりです)、初対面は、正に、「美しい」の一言であった。「こんなものが、こんなところにあっていいの!」の思いであった。また、「私のようなものが購入してもいいの!」の思いでもあった。
 柳の枝の伸びやかな線、ゆったりとくつろいでいる二羽の鷺の手馴れた描写、左上方に空間を配置しながらもなお全体のバランスを崩させないための枝の伸び・・・・・一見、無造作な様に見えながら、緻密に計算され尽くされた配置がある。
 高台は付け高台で繊細であり、これに色を付けたら色絵古九谷そのものであろう。
 その後、平成2年に「初期伊万里から古九谷様式」(小木一良著 創樹社美術出版)が刊行されたが、その中の図170で類品が紹介されている。美しいものは、誰が見ても美しいということだろうか。

江戸時代前期    長径17.4cm  短径12.0cm

 

注> 主人: 私は、安月給取りだから、一流の立派な店なんかに行かない(「行けない」とするのが正確な表現であろうとの陰口あり。)のは知っているだろう。まあ、ハーモニカ長屋みたいな店があったと想像してくれ。そのような店の中の一軒でおまえを見つけたわけだが、その店の主人が不在で、買おうにも買えなかったわけだ。やむなく隣の店の主人に話したら、鍵は預かっているので、見せることはできるが、値引きはできないときたもんだ。私も安月給取りのコレクターとして、定価どおりには買わないことを信条(?)としてきているので、これにはまいった。しかし、この機会を逃がすとおまえを逃がすかもしれないとの焦りも手伝い、遂に、信条を捨てて定価どおりに買うことにしたわけだ。まあ、あまり自慢のできる話でもないので、誰にも話してないのだから、内緒にしておいてくれ。

 

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 なお、上の「古伊万里ギャラリー13 古九谷様式染付柳に鷺文変形小皿」の文中にある「初期伊万里から古九谷様式」(小木一良著 創樹社美術出版 平成2年発行)の図170というものは次のようなものです。

 

図170

柳に鷺文変形小皿(1650年代)  長径 17.4cm  


伊万里 色絵 吹墨鷺文十二角小皿

2020年12月27日 19時19分17秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 色絵 吹墨鷺文十二角小皿」の紹介です。

 

 

表面

 (口径:14.8cm 高さ:2.3cm 底径:8.3cm)

口縁の2時の方角と11時の方角に欠けがあります。

欠けは自分で補修しました。

 

 

葦と鷺が描かれた部分の拡大画像

 

 

裏面を斜め上方からみたところ

高台が比較的に高く作られています。

 

 

裏面

口縁の5時の方角にソゲがあります。

ソゲは自分で補修しました。

かなりの使用擦れがあり、そのため、裏面の赤はかなり擦れて薄くなっています。

 

 

 ところで、これは、昭和59年に(今から36年前に)、東京の古美術店から買ってきたものです。

 なお、これを、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」で既に紹介していますので、まず、その紹介文を次に再度紹介いたします。

 

 

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            <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー6 古九谷様式色絵吹墨鷺文十二角小皿(平成13年11月1日登載)

 この小皿と対面したとき、まず、「なんと鋭いのだろう!」と感じたことである。薄作りで、十二角の角々が鋭く、手にしたときに思わず、「あっ、痛た!」と感じさせるような鋭さなのだ。

 それでいて、見込みには、葦の生えた水辺に鷺が三羽、それぞれ、思い思いの姿態で、のんびりとまどろんでいる姿が描かれている。広い空間の中に雲がぽつんと赤で描かれ、また、葦原にも三点ほど赤がさしてある。赤は少量使われているにすぎないが、その赤の使い方が絶妙で、幽玄の世界さえ創りだしている。また、吹墨で鷺を浮き出させる技法など、人間が考え出したとは思えないほどだ。

 当時の陶工の技術の良さ、センスの良さには、ただ、ただ脱帽である。

 見込みの美しさ、そしてその外側の手を刺すような鋭さ! 「美しいものには棘がある!」を地で行くような一品ではある。

江戸時代前期  口径:14.8cm

 

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 この小皿の解説につきましては、上の「古伊万里への誘い」に書いたとおりですが、この小皿の類品は、よく、各種の本に登場してきます。

 

 まず、「図鑑 伊万里のすべて」(野村泰三著 光芸出版 昭和55年10月初版第4刷発行)のP.57では、次のように紹介されています。

 

初期伊万里吹墨鷺文十二角皿  (径14.7cm)

 「夕風や水青鷺の脛(すね)をうつ」(蕪村)といった風情の皿である。この皿も、もともと藍九谷といわれたものである。すこぶる上手の皿で、型打成形され、ごく薄い作行である。

 

 

 また、「盛期の伊万里」(山下朔郎著 徳間書店 昭和53年第4刷)の図235にも登場してきます。

傘形吹墨鷺文小皿  径14.5cm

 

 

 なお、文様はこの小皿とは異なりますが、同じように十二角に型打成形されたごく薄い作行の小皿が、柴田コレクション展Ⅱ(平成3年 佐賀県立九州陶磁文化館発行)の図313にも登載されています。(=柴田コレクション総目録1085)

 

染付 草花 縞文 輪花皿 1670~80年代 口径15.2 高さ3.3 底径9.3

 

 

 この他にも、この手の小皿は、その後も、あちこちの骨董関係の本や雑誌に登場してきますので、今では、すっかり馴染みの小皿となっています。

 しかし、この小皿を、拙ホームページの「古伊万里への誘い」で紹介した平成13年11月1日の時点では、まだ、この手のものが珍しかったものですから、「これは、古九谷の偽物でしょう」とか、特に、この小皿には色絵までが施されていますので、「これは、後絵ものでしょう」というようなコメントが寄せられ、すこぶる評判の悪いものでした(><)

 でも、「古九谷」が「伊万里 古九谷様式」としてすっかり定着した今では、もう、そのようなことを言う人もいないことでしょう。

 

製作年代: 江戸時代前期

サ イ ズ : 口径;14.8cm  高さ;2.3cm  底径;8.3cm


伊万里 染付 椿に鳥文大皿

2020年12月26日 14時10分27秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 染付 椿に鳥文大皿」です。

 これも、昭和59年に(今から36年前に)買ったものです。

 今でこそ、大皿には人気がなく、値段も安くなっていますが、当時は、大皿の人気が高く、値も張りました。

 特に、南蛮人が描いてあったり、象の絵が描いてあったりで、図柄が珍しく面白いとか、絵が上手で、一幅の絵を見ているような見た目に美しいものには人気があり、値段も高かったように思います。

 そんななかで、この大皿は、後者に属するでしょうか。でも、傷がありました(口縁にニューとソゲがあります)ので、値段的には割安でした。

 

表面

口縁の時計の針の4時の方角にニューとソゲがあります。

 

 

裏面

外側には、竹笹が3カ所描かれています。

 

 

製作年代: 江戸時代後期

サ イ  ズ: 口径;30.6cm  高さ;4.7cm  高台径;16.8cm