今回は、「伊万里 色絵太極図手塩皿」を紹介いたします。
伊万里 色絵太極図手塩皿 表面
製作年代: 江戸時代前期
口径:9.1cm 高台径:4.2cm
口縁の1時の方向に疵がありますが、自分で補修しました。
伊万里 色絵太極図手塩皿 裏面
前回、「伊万里 染錦捻り文向付」を紹介した際(令和2年4月23日付け)、太極図は「時々、古伊万里には登場してくるようです」と記したところですけれど、「そういえば、我が家には、もう1点、太極図が描かれたものがあったな~」と思い出しましたので、太極図繋がりで、ついでに、それも紹介しようと思ったからです。
ただ、この「伊万里 色絵太極図手塩皿」については、既に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」に紹介済みなものですから、そこに紹介した文章を再度紹介することで、今回の紹介に代えさせていただきます。
なお、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」には、平成19年12月1日付けで紹介したわけですが、その当時は、勉強不足で、まだ、「太極図」という文様のことを知らなかったものですから、「太極図」のことを「鯨(?)文」としています。「鯨(?)文」を「太極図」と読み替えていただき、ご笑覧ください(-_-;)
注:「太極図」という文様のことを知ったのは、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」に、この手塩皿を平成19年12月1日付けで紹介したわけですが、紹介した直後に、その紹介文を読んだ方が、「これは太極図といいますよ」と教えてくれたからです。インターネットはありがたいですね(^-^;
「古伊万里への誘い」での紹介文(その1)
「古伊万里ギャラリー116 古九谷様式色絵鯨(?)文手塩皿」
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表 |
裏 |
小さな小さな皿だけれど、皿の中央に描かれた文様が強烈である。
それだけで、この小さな皿の存在感を強くしている。
何が描かれたのかは分からないが、私には「白い鯨」と「黒い鯨」が描かれているように見える。
私が鯨達を見ていると、鯨達はにらみ返してくる。特に「黒い鯨」は、上目使いに威嚇するようにしてにらみ返してくる。あたかも、「白い鯨」を外敵から守るかのように。
鯨達は、夫婦なのだろうか?
そんなふうに想像して改めて見てみると、ほほえましくも見えてくる。
そんな、いろんなことを想像させてくれる、強烈な印象の小皿ではある。
「古伊万里への誘い」での紹介文(その2)
「古伊万里バカ日誌54 古伊万里との対話 (鯨(?)文の手塩皿) 」
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
鯨 子 (古九谷様式色絵鯨(?)文手塩皿)
・・・・・プロローグ・・・・・
前回は、大傷があるが、主人の家にとっては大物(単に大きさが大きいという意味)と対話したところである。そこで、今度は、やはり傷はあるが小さな手塩皿のことを思い出し、押入れから引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: 前回は大きな物に出てもらっただが、今回は、逆に、小さな物に出てもらうことにした。
鯨子: お久しぶりです。ご主人様のところに来ましたのが平成2年のことですから、もう17年も経つんですね。
主人: そうか。もうそんなに経つのか。あれから、もう、17年か・・・・・。思い出すな~、お前を手に入れた時のことを。17年も経っているけど、その時のことは良~く覚えているよ。
鯨子: どんないきさつがあったんですか。
主人: お前のことは、我が家の近くの、とある地方都市のガラクタ骨董屋で見つけたんだ。しかも、そのガラクタ骨董屋のガラクタコーナーにまぎれ込んでいるところから見つけ出したんだ。よくあるだろう。骨董屋の店の一角に、時代の若い猪口やら湯呑み茶碗やら小皿などがゴチャゴチャと山積みされているコーナーが。そこで見つけたんだよ。
鯨子: どうしてそんな所から見つけ出すことが出来たんですか?
主人: そうだね。普段は、そんなガラクタコーナーなんか見ないよね。しかも、長いこと骨董をやっている人間ならなおのことね。衣料品の安売りコーナーならともかく、骨董ではそんなコーナーに期待はできないからね。
でもね、お前の中心に描かれている文様は目立つだろう。なにげなくガラクタコーナーを覗いていたら、私の目にお前のその中心の文様が飛び込んで来たというわけさ。で、「ん?」と思って手にとって見て二度ビックリだったね。なんと、古九谷じゃないの!
それで、店主に、平静を装って聞いてみた。「これいくらですか?」って・・・・・。
鯨子: なぜそんな聞き方をしたんですか。
主人: それはね、「これはすごい! 掘り出し物だ!」なんていう態度で、嬉々として、「これ、いくらですか?」なんて聞いたら、先方はびっくりして、「これは非売品です。」とか、「これは、先ほどのお客さんがこちらの非売品のコーナーからそちらのガラクタコーナーに移してしまったんです。」とか言って、売り渋りをしかねないからさ。そんなことをする骨董屋もいるからね。長年の経験で培ってきた貧乏コレクターの生活の知恵だろうかね。
鯨子: それで、いくらと言ったんですか。
主人: うん。「1,000円です。」と言ったんだ。それを聞いて私は三度ビックリだった。「エ~、そんなに安いの!」と、内心思った。
でもね、これまた、長年の経験で培ってきた貧乏コレクターの生活の知恵が、喜び勇んで「ハイ、買います。」とは言わせなかった。
「な~んだ。小さいうえに傷まであるんだ!」、「負けてくれと言っても、全体が1,000円じゃね。負けさせるのも気の毒だから、1,000円でいいです。これください。」ということで契約は成立したわけさ。
鯨子: そうでしたか。それはよかったですね。そういうことがあって私はここに来られたんですね。
主人: そうそう、お前に関してはもう一つ思い出があるんだ。
鯨子: どんなことですか。
主人: お前に直接関係したことじゃないんだが、こんな話なんだ。
お前を手に入れてから半年ぐらい経った頃だったかな。お前を売っていたガラクタ骨董屋に立ち寄った帰り道、ブラブラと駅に向かって歩いていた時のこと、フト、骨董品を並べた小さなショーケースが目に入ってきた。そこは、ちゃんとした骨董屋さんではなく、普通の民家で、通りに面した一角に、小さなショーケース一個だけが置かれてたんだ。しかも、そこにお前とそっくりの文様のお皿が置かれていたんだ。ただ、それは五寸ぐらいの大きさのお皿だったけれどね。それには私も四度ビックリだった。
これ「売ってるのかな~?」と思ってガラス戸を開け、奥の方に「こんにちは~!」と声をかけたら、コワソーなオジサンが出てきた。いかにも、その筋のオジサンという感じだったな。聞けば、自分も骨董が好きで、嵩じては、売買もするようになったとのこと。
それで、一応、値段を聞いてみたが、さすが骨董好きだけあって、お前のような手の良さをしっかりと理解していて、それ相応の値段を言ってきた。五寸皿だったし、無傷だったから、「そんなものだろうな!」とは思ったよ。
でもね~、全額を支払うだけの手持ちがなかったんだ。買えないほどの金額ではなかったし、無理すればなんとかなりそうだったので、手付けをして、後で引き取りに行ってもいいかなとは思ったんだけれど、そうすると、こちらの住所、氏名まで明らかにしなければならないだろう。どうも、その筋のオジサンのようなので、こちらの住所、氏名まで明らかにしてしまっては、万一、トラブルにでも巻き込まれては面倒だなっと思ってしまったんだ。それで、断念することにしたんだ。
その後、1年ぐらい経っただろうか。また訪れてみたが、もうそのショーケースは置かれていなかった。幻のショーケースだった。
お前も、幻の小皿も、お互い近くから出現したのだから、きっと、元は一緒にあって、バラバラにされたんだろうね。また一緒にしてあげかったね。
その後も、お前のような文様のお皿には、とんと出会わないな。1~2度、美術館等で見かけたような気がする程度かね。今思えば、トラブルに巻き込まれるかもしれないことを覚悟で買っておけばよかったかなと反省しているよ。
鯨子: 私の見込みの文様は何と言うんですか。
主人: 何と言うんだろうね?あまり見かけないので本などにも載ってないしね。もっとも、良く調べれば載っているかもしれないけどね。
それはともかく、「巴(ともえ)文」かなと思ったけど、目のようなものが描いてあるから、それはちがうのかなと思ったわけだ。まっ、パット見た瞬間の第一印象では「白い鯨」と「黒い鯨」が描いてあるように思ったから、一応、「鯨文」ということにしているんだ。