京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
俳句 冠句 自由律 詩 エッセイなど同好の人たちと交流

2024年5月 京都童心の会 通信句会結果 【選評】後半

2024-06-17 13:15:18 | 俳句
2024年5月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】後半
〇佐久間照三選
特選 77 卯の花腐し原子炉腐りませんか 金澤ひろあき
 オカラを炊いたもの(卯の花とも言う)は間を置けば当然腐臭を発する。原子炉がそうでないと言えるのか。言えませんね。人為的操作ミス、自然災害がいつそのトリガーになるか判らないのに、ありえませんと押し切れるのだろうか。電力需要とか事情とか言う観点からは必要悪。だからこそもっと建設運転には現実的で万が一の基準が低くてはいけないのです。この句は、理屈でなく感性に訴えているところがミソです。団欒の食卓という場面から一気に飛躍するのに不自然でないところが、いいですね。「卯の花」への着眼点がいいですね。
並選
5 花見スポットゆっくりほどけてゆく私  塩見すず子
 一番綺麗に見える場所に来て感動し、見ている自分が解体されて行くのではないかと思える程見入っている様子が解ります。
11 政界汚染よごれた布で何度ふけどもきれいにならぬ 遠藤修司
 直球過ぎるところがかえっていいと思います。
15 桜より少し遅れてしとやかに憧れの人名は花水木 遠藤修司
 確かに桜より花水木の方が細腕美人かも知れません。少なくとも排気ガスには見た目と違って強いですから。
17 穀雨(こくう)に濡れている呼鈴の人 野谷真治
 3月の冷たい雨に打たれる呼び鈴を鳴らしている背の無常感。介護の呼び鈴を鳴らす人の背の無常感。
21 花を待ち花が去ったら柳の芽   蔭山辰子
 人の期待感というのは、次はこれだという具合に次々に動くもの。あれだけ桜を待ちわびていたのは何だったのかと首を傾げても、柳の芽が心を奪っている。ごく自然なことだけど、あれって思ってしまうというわけです。
25 気をつけよう熱中症 ニンチ症  蔭山辰子
 自分への警鐘(けいしょう)、読者への警鐘でもあり、お互いに気をつけましょうと言っている。
29 黄砂イヤ花粉イヤイヤ風邪でした  蔭山辰子
 1回の「イヤ」が次のつなぎでは2回となっているのが効果的です。「黄砂」「花粉」「風邪」と来るのも、頷けて面白い。くしゃみの原因のセルフ探究。読むとふっと笑えます。
32 子供の日屈原(くつげん)にも供えようかしわ餅 蔭山辰子
 中国の端午の節句はこの人を偲ぶためですが、日本では男の子の祭りになっている。あちらでは、楚の人民の為に尽くした彼の為に粽を食べる習慣があるそうですが、日本でなら柏餅は関東、粽は関西というような区分があるようなので、そういうところから「かしわ餅」かと読みました。いきなり彼が出てきて驚いた人もいるかもしれませんが、最後は入水してはてるのです。偲んであげて良いでしょう。
47 手の平にアリンコ歩き愛おし  野原加代子
 アリが手のひらに載ってきてキョロキョロしている。子供の頃もアリを載せて遊んだこともあるだろう。小さな生き物への慈しみと子供頃の愛しい思い出へのノスタルジアも感じさせる「愛おし」ですね。
54 曇りなの黄砂なのかな頭なの  三村須美子
 ペーソスのある自問自答の句。視覚がぼやけているには何のせいだろう、最後に自分の頭を持ってきたところ、年齢的なことを思うとシリアスになり笑うに笑えない。しかし「なの」「なのかな」「なの」と軽いノリの口語でしめているので、クスッと笑えてしまうのです。
58 筍や甘み歯応えうまし音  三村須美子
 そのものをメインとせず、「歯応え」と「音」で捉えているところがいいですね。視覚的にでなく五感で表しているところが一層筍を引き立てています。
68 赤字路線 春の空気をたっぷり乗せる  金澤ひろあき
 童話の世界ですね。電化されていない単線。一両か二両ぐらいの電車がゆったりと春を満喫して走っている様子がうかがえます。
71 寝そべり人生もいいさ口下手な蛙    金澤ひろあき
 生きているだけで偉いというか十分だとする許しというか癒しの考え方があります。自分に出来ることには限りがあり、それ以上しなくてもいいのに頑張ってしまうものですが、言い訳もせず自分は自分と言える人は口下手に聞こえるでしょう。
73 団地と花 知人が去ってあいた穴    金澤ひろあき 
 高齢になるとたださえ知り合いの数が減ってきます。花が散るように去って行った人との思い出だけでは、今を埋まることはできませんね。
75 花から青葉 運命受け入れるだけなのか 金澤ひろあき
 自問自答の句です。年を取るとそうならざるを得ないのですね。でもそれを少しでも跳ね返すことが生きることですね。句の終了は反語だと思います。
〇遠藤修司特選
1 さくらさくら スケッチに色を差す   塩見すず子
 気持ちがどんどん満たされているから生まれた句でしょうか。春の喜びが、伝わってきます。
〇蔭山辰子特選
5 花見スポットゆっくりほどけてゆく私  塩見すず子
 早めに咲いた桜。
1 さくらさくら スケッチに色を差す 
2 上から見おろす桜異人たち 
3 桜の帯です 同世代の話題です 
4 しばらくはじっとして桜と青空と
1,2,3,4番、見る人たちの表情がよくわかります。そして特選5番では自分の花見。「ゆっくりほどけて」の言葉に感じ入りました。
78 青い目も担ぐ神輿の粋な露地    金澤ひろあき
 日本の伝統行事も広まっていったら、いいですね。 
〇岡畠真理子特選
4 しばらくはじっとして桜と青空と   塩見すず子
 桜と青空。見ていてあきない風景です。満開の桜もいいですが、散りはじめの桜も風情があっていいですね。

お知らせ
6月句会
日時 6月16日(日)午後2時
場所 阪急長岡天神駅東口 喫茶 アーバンにて
投句 毎月第2週まで 10句前後ですが、少なくても可です。
 84円切手3枚同封下さい。
選評  来月第1週までに頂けるとありがたいです。
京都童心の会  年会費 3000円
月句会参加の方は句会で頂いておりますので、不要です。

【いただいた句集より】
鈴木和枝著 『離農』 発行 主流社 (静岡県島田市)
※筆者の第三句集 六十代前半から七十代後期までの作品集。年代ごとの句業がうかがわれる。
何にもない葉桜の下の湿度がいい
大根いっぱい干してあるこの家が好き
南瓜半分に切る終戦直後と同じ
農道が真っすぐすぎて日本が危ない
人参も入って今夜ソプラノ鍋
冬陽に温められている「売土地」
だんご虫が急ぐ自由時間
豆御飯のマメ無言でむく丸はいい
爪切る音人間なんてちっちゃいものさ
デジタル派?私絶対コオロギ派
入道雲稲田を一番愛している
秋茄子のツヤはプライドです
世辞が下手です私んちの蛙
退職ホヤホヤ圧力鍋よろしくね
この春離農うすうす気付いている地下足袋
玉葱家族分吊るして原発拒否
おしくらまんじゅうなんてもうやめた
クーラー効きすぎ人間が駄目になる
巨大な冬瓜戦車だけにはなるな

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