京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
代表 金澤 ひろあき
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松尾芭蕉 『鹿島詣』現代語訳   二 鹿島にて

2024-06-04 07:51:06 | 俳句
松尾芭蕉 『鹿島詣』現代語訳
           金澤ひろあき
二 鹿島にて
 翌日昼より雨がしきりに降って、月は見ることができそうにない。根本寺の前の和尚(仏頂和尚)は今は世を逃れて、ここにいらっしゃったというのを聞いて、訪ねて行って泊まった。強く「人に深い反省の心を起こさせる」と杜甫が詠んだように、しばらく清浄の心を得たような気分になる。
 あかつきの空が少しばかり晴れたのを和尚が起こして下さいましてので、私達は起き出た。月の光、雨の音、ただ趣のある様子ばかりが胸に満ちて、句も作れない。はるばると月を見に来た甲斐もないのが不本意で残念なことだ。あの清少納言でさえ(ほととぎすを聞きに行って)ほととぎすの和歌を詠むことができずに帰るのを気に病んだのも、私のためには良い見方であると言えるだろうよ。

おりおりに変はらぬ空の月かげも千々のながめは雲のまにまに  和尚
月はやし梢は雨を待ちながら    桃青(芭蕉)
寺に寝てまこと顔なる月見かな   同
雨に寝て竹起きかへる月見かな   曽良
月さびし堂の軒端の雨しづく    宗波
 鹿島神宮の神前
この松の実ばえせし代や神の秋   桃青
ぬぐはばや石のおましの苔の露   宗波
膝折るやかしこまり鳴く鹿の声   曽良
 田家
かりかけし田づらの鶴や里の秋   桃青
夜田狩りに我やとはれん里の月   宗波
賎の子やいねすりかけて月を見る  桃青
いもの葉や月待つ里の焼けばたけ  桃青
 野
ももひきや一花摺りの萩ごろも   曽良
はなの秋草に喰ひあく野馬かな   同
萩原や一夜は宿せ山のいぬ     桃青
 帰路本間自準の家に泊まる
塒(ねぐら)せよわら干す宿の友雀 主人(自準)
 あきをこめたるくねの指杉    客 (芭蕉)
月見んと汐引きのぼる船とめて   曽良
貞享四年八月二十五日