明日へのヒント by シキシマ博士

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「赤い鯨と白い蛇」 丹念に、細やかに

2007年11月03日 01時56分54秒 | 明日のための映画
赤い鯨と白い蛇
昨年の11月から今年の春にかけて、岩波ホールで上映されていた単館作品です。
観に行きたいと思いながら、それが果たせないうちに公開期間が終了してしまったことを、とても残念に思っていました。
このほど、少し不本意ではありますが、DVDにて鑑賞しました。

老境にさしかかった雨見保江(香川京子)は、息子夫婦のもとに身を寄せるため、孫の明美(宮地真緒)に連れられて千倉へ向かっていた。
が、突然「戦争中に疎開していた家を見たい」と言い出し、途中の館山駅で下車する。
そこは茅葺き屋根の古い民家だった。
出迎えた現在の家の持ち主・光子(浅田美代子)とその娘・里香(坂野真理)は、まもなくこの家を取り壊して新しく建て直す予定だと言う。
その晩、この家に泊めてもらった保江は「昔の大切な約束を確かめるためにここに来た」と打ち明ける。
そこへ、やはりこの家に以前住んでいたという女、美土里(樹木希林)が現れる。
同じ屋根の下で打ち解けていく5人。
保江は「この家には150歳になる白蛇が住んでいる。その蛇と話をすると幸福になれるらしい」と言い出す。
そして、「私は、その蛇と話したことがある」と…。
(監督:せんぼんよしこ 102分)


と、序盤を書いてみましたが、ストーリー自体はそれほど特別な展開が待っているわけではありません。
見どころはなんといっても、女優陣の演技です。
香川京子、浅田美代子、樹木希林が3人ともとにかく素晴らしい!
激しい芝居ではなく、細やかな演技で、それぞれの年齢の女性の佇まいを見事に見せてくれます。
とりわけ、浅田美代子さんは、かつてのアイドル時代や最近のテレビのバラエティのイメージとは違う、確かな演技を見せてくれています。
また、そういう凄い女優さんたちの中にあって、若手の宮地真緒と坂野真理も良く頑張っています。

監督は、TVドラマの名演出家として知られる、せんぼんよしこさん。
78歳にして、これが映画監督デビュー作だそうですが、実に映画らしい演出を見せてくれます。
世代の違う5人の女性を見つめる細やかな瑞々しい視線。
民家、夕日、月をとらえる映像からも、その視線の暖かさが伝わってきます。
TV演出家の初映画とは思えない、じつに映画らしい映像が心地良いです。
「あ~、やっぱり劇場で観たかったな」というのが、私の感想です。
でも、こういう静かな味わい深さは、ある程度の歳を重ねないと理解できないものかも知れませんね。
若い人で、こういう映画を大絶賛するようだと、ちょっと心配かも。

白い蛇は何を告げたのか?
赤い鯨とは何なのか?
ここではそれを明かさずにおきます。
その秘密を知るとき、私たち観客も、保江さんと共に大切なメッセージを受け取ることになるのですから。


赤い鯨と白い蛇が何を意味するか、知りたい方はこちらをどうぞ
赤い鯨と白い蛇

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