明日へのヒント by シキシマ博士

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「悪人」 堂々巡りをするばかり

2010年09月29日 09時57分05秒 | 明日のための映画
申し訳ないけれど、私的には観なくても良かったかな~という映画でした。
あくまでも私の個人的な感想ですけどもね。

長崎で土木作業員として働く清水祐一(妻夫木聡)は、恋人も友人もなく、趣味の車以外は祖父母の面倒をみるだけの空疎な暮らしをしている。
佐賀の紳士服量販店で働く馬込光代(深津絵里)は、妹と暮らすアパートと職場を往復するだけの退屈な日々を送っている。
人恋しさを募らせた2人はメールを通じて出会い、祐一はすぐに光代の体を求める。
それでも光代は、自分にようやく人並みの幸せが訪れたと思う。
しかし、そんな光代に祐一は打ち明ける。
自分は殺人を犯したと…。
(監督:李相日 139分)


せっかく2時間以上の時間を費やして観るのだから、そこから何らかの影響を受けたい。
とくに、こういった社会派と言われる映画は、普段あまり考えない問題に意識を向けさせられ、何かを気付かせられ、そこから自分の在り方なり考えの方向性なりを見つけられたら…と期待して観ます。
しかし、残念ながらこの映画からはあまりそういうことは感じられませんでしたね。
この程度のことなら映画を観なくても、私は考えられます。

犯罪者にだっていろいろと事情はあるし、人並みの感情もあるでしょう。
だから、そんな犯罪者のことを好きになる人がいても不思議じゃない。
こんなの、今さら言われなくったって分かり切ってるじゃないですか?

満たされない境遇にいる人が、人並みに満たされることを切望し、その思いが強いばかりに罪を犯してしまった。
これは、その人が人間らしい感情を持っているからこそでしょう。
それは普通で、取り立てて言うほどのことじゃない。

そして、そういう理由があったにせよ、それは被害者にとってはまったく関係のない話。
加害者にどれほど苦しい事情があっても、それが他人を傷つけたり殺めたりして良い道理にはならない。
人はなんらかの事情を抱えながらも自分を律しなければならないし、それができずに他人に危害を加えれば罰せられるし、その罪は償わなければならない。
…というふうに社会のルールが定められているわけでしょう?
分かり切ってることじゃないですか?

もっとも、そういう社会のルールそのものに疑問を感じて一石を投じたいと言うのなら話は別ですが。
たとえば…、もっと社会的弱者の犯罪は容認するよう法律を変えるべきだとか? …まさかね。
この映画はそういう問題提起をしている訳ではないですね。
被害者側の家族の気の毒な心情をも、あんなに丁寧に描いているわけですから。

加害者にも同情するべき点はあるし、被害者にも非はある。
じゃあ許すの?
いや、被害者の遺族の心情を思えば許されることじゃないよ。
でも加害者にも家族や大切な人がいるし…。
と、こんな具合に考えるだけでは同じ所をぐるぐる回ってるばかりの堂々巡り。ちっとも先へ進まないじゃないですか。
ここまでだったら、わざわざ映画を観るまでもない、日常的に私の思考が届く範囲です。

たしかに、祐一の祖母がお金を取り戻しに行くところや被害者の父親の台詞からは、考えを前進させるヒントが読みとれます。
が、肝心の祐一はそれを認識していないじゃないですか。
殺人を犯したことよりも問題なのは、祐一が自分の犯した罪によってどこにどれだけの不幸を招いてしまったのかを丸っきり知ろうとしないことです。
自分の祖母の心労や被害者の家族の気持ちにちっとも思いを巡らすことなく、ただ、「孤独だった」「人恋しかった」「出会いたかった」って、自分に甘い理由付けをしながら光代の体をむさぼるばかり。
何やってんだ! もっと周りを見ろよ。自分を律しろよ。
と言ってやりたくなります。

こんなふうに周りを見ようとしてないから、友だちも恋人もできるわけがない。
それでいて「出会いたかった」って言うんだから笑っちゃう。
出会えないのは境遇の所為なんかじゃなく、あんたが周りに無関心で、関わりを持とうとしないからでしょう?
そういう奴が最後に光代を救うために首に手をかけたって?
そんなのは狭い視野で考えた、身勝手で独りよがりの了見に過ぎないでしょう。

結局この映画って、体裁は重厚な感じだけど、「人はそれぞれ事情を抱えてるから一筋縄ではいかないよ。大変だね~」って呑気に言ってるだけのような気がします。

でも、深津絵里さんをはじめ、出演者の演技は皆素晴らしく、そのことには拍手を送ります。


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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-09-30 12:19:27
水に渇いてる人、食べ物に飢えている人は、
先ずは飢えを満たす事を考える。
その人に、先ずは周りを見る余裕は無いのかも…
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>Unknownさん (シキシマ博士)
2010-10-01 01:12:32
たしかに何かをやらかしてしまってからだと、余裕がなくなり、周りを見るのは難しいでしょうね。
でも祐一は殺人を犯す前からそういう傾向にあったと思います。
それを親や育った環境の所為にするのは簡単ですが、もっと自らを律したり、視野を広げたりする努力をしておくべきだったと思いますね。
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こんにちは♪ (キューピー)
2010-11-09 16:24:01
まったく同感です。
わざわざお金払ってまで観ることなかったと思います。
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>キューピーさん (シキシマ博士)
2010-11-11 00:01:52
貴重なお金と時間を使ったのに、私的にこの映画から得るものは殆んど無かったですね。
お金を払わずに観られるTVドラマだって、もう少し考えさせられる良作はあります。
今でしたら「モリのアサガオ」とか、良いですよね。
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