明日へのヒント by シキシマ博士

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「最後の忠臣蔵」 生き尽くすということ

2011年01月04日 22時37分36秒 | 明日のための映画
昨年の暮れに観た映画ですが、レビューが年明けになってしまいました。
昨年私が観た邦画の中ではこれがベストです。(と言えるほどの本数を観ているわけではありませんが)

赤穂浪士の討ち入りから16年。
四十七士が切腹し、もはや世間的には事件は過去のことになっていた。
だが只一人、寺坂吉右衛門(佐藤浩市)は死ぬことを許されず、大石内蔵助から与えられた〝討ち入りの真実を後世に伝え、浪士の遺族を援助せよ〟という使命を全うするべく、今も生きながらえていた。
ある日、吉右衛門は京へ行く道すがら、討ち入りの前夜に逃亡したかつての友・瀬尾孫左衛門(役所広司)を見かける。
内蔵助への忠誠心が強かった孫左衛門が、何故あの時逃げ出したのか?
実は孫左衛門にも、ある使命が与えられていたのだ。
そこには、内蔵助の隠し子、可音(桜庭ななみ)の存在があり…。
(2010年 監督:杉田成道 133分)


ここから先、ネタバレを含みます。

この作品は、私が所属する映画好きの集まりのメンバーと一緒に観ました。
で、私は大満足だったのですが、観賞後の意見交換では他の人からかなり否定的な感想も出ました。
「切腹を美化している」
「可音の気持ちを思えば思いとどまる筈。身勝手だ」
「どんな理由があるにせよ、自ら命を絶つ話は受け入れられない」
などなど。
私はそういう指摘に異論はありません。
ですが、この映画でそこに着目する必要性を、私は感じませんでした。

この映画の中の自死は、現代社会の自殺問題などとは当然ながら全く違います。
絶望や自暴から来る現実逃避のための自殺でないことを、まず忘れてはいけません。

私の感心は、孫左衛門の死に方が云々ではなくて、むしろ、死にどきを覚悟した上で、その時までの限られた期間をいかに有意義に濃密に生きたかのほうに向けられます。
可音を守るためには何が何でも生き抜こうと思った筈。
病気になるわけにもいかないから、細心の注意をして。
つまらぬ喧嘩で怪我などしないために、時には耐えがたきを耐え、常に自分を律しながら生きた筈。
(私も親の介護をしているので、先に死ぬ訳にはいかない。この点で孫左衛門の気持ちを察することが出来ます)
きっと、ただ無為にだらだらと生きる者よりもはるかに、孫左衛門は生きることに全力を尽くしていたことでしょう。

そして、全力を尽くして生きる目的はたぶん、自分の為でなくても構わない。
自分を信頼してくれた人。
自分が守るべき愛しい人。
そんな人たちの為に自分の〝生〟を存分に役立てられるとしたら、もうこれ以上の喜びはないでしょう。

寿命を全うしたというだけで、必ずしも生き尽くしたと言えるでしょうか。
何かをやり遂げたという達成感・充実感を抱きながら、この世を去る日を迎えられるでしょうか。
私たちは今、孫左衛門のように一日一日を大切に濃密に生きているんでしょうか。

孫左衛門の死に様について非難するよりも、そういった彼の生き様からこそ学ぶべきことがあるんじゃないでしょうか。
なにも切腹を良しと言ってるんじゃありません。
我々はそんなこととは無縁の時代に生きていられるけれど、それでも、不測の事故などで唐突に命を落とすこともあり得ます。
その時にも悔いを残さないように、今生きているこの時を無駄に費やさず、しっかりと生き尽くす心がけをしていくべきではないか。
…と、この映画から問いかけられてるような気がするのです。


日本映画専門チャンネルで、この映画のメイキング、とくに可音を演じた桜庭ななみさんについて取り上げている番組を観ました。
発声・方言・所作から琴・裁縫・茶道の稽古まで、彼女、本当に良い経験をしていましたね。
そして出来上がった本編では、そのすべてをしっかりとこなしていて。
当初、琴のシーンは代役を使う予定だったけれど、彼女が予想外に上達してしまったので代役の必要無しになったとか。
そんな裏話からも、女優としての彼女の真摯な姿勢にとても好感が持てるし、今後に期待が膨らみますね。
良い女優さんになって欲しいです。


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1 コメント

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Unknown (こちウワ男)
2016-07-13 18:28:20
桜庭ななみがよかったですね。

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