明日へのヒント by シキシマ博士

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「おおかみこどもの雨と雪」 母はこうして育ててくれた

2013年12月21日 13時15分55秒 | 明日のための映画
昨年(2012年)、劇場公開時に鑑賞してとても感動した大好きな作品なのに、レビューを書きそびれたことがずっと気になっていました。
だから、昨夜のテレビ初放送を観たのを機に今こそ書かねば!

監督が細田守さんで脚本が奥寺佐渡子さんといえば、「時をかける少女」「サマー・ウォーズ」と同じタッグ。
「時をかける少女」は大好きだけど「サマー・ウォーズ」はあまり好きじゃない私としては、観る前は期待と不安が半々でした。
それに、「おおかみこどもの雨と雪」というタイトルから、もっと子供向けの作品だとも思っていました。
でも違いましたね。むしろ大人のための作品でした。
そして、私にとっては「時をかける少女」に匹敵するくらい大好きな作品になりました。

東京のはずれの大学に通うは、男と出会い恋に落ちる。
が、その男は自分が「おおかみおとこ」であることを告白する。
はそれを受け入れ、やがて2人の子供、(姉)と(弟)を産む。
しかし、の出産直後、男は亡くなってしまう。
は一人で子育てに奮闘するが、気持ちが高ぶると狼に変身してしまう2人の子のことを秘密にしながら、都会で暮らすことは難しい。
は山奥に移住することを決意する…
(2012年 監督:細田守/脚本:奥寺佐渡子 117分)


この映画のテーマは母性です。
〝おおかみおとこ(こども)〟という設定にリアリティーが無いとか言うのはまったくの見当違い。
この映画では、テーマを明確に浮かび上がらせるためにこの設定を使っているに過ぎません。
主人公・を、他人に相談できない特殊な状況に置くことで、彼女の苦悩や不安そして強さが鮮明に見えてくるのです。

とりわけ序盤のほうの描写はとてもリアルに描かれます。
もし狼の姿の子が生まれたら…と案じて自宅で出産。
突然、夫を失った心細さ。
定期健診や予防接種を受けていないために虐待を疑われる。
こういった描写を、そのまま「おおかみこどもを育てる女性」という他人事としてしか捉えないか、それとも自分の周りにある同種の状況に当てはめて観ることができるか。
この作品の評価の分かれ目は、そこだと思います。
私は子育ての経験もない男ですが、それでもどっぷりと感情移入しました。
なぜなら、の苦悩や心細さといったものは、おおかみこどもを育てなくても、誰にでも体験しうることだと思うからです。
そして何よりも、私自身もこのように母に育てられたのだと気づかされたからです。

アニメ表現だからこそ、実写よりも明確に伝えられることがある。
非現実的なフィルターを通すことで、かえって現実的なことがより鮮明に見えてくる。そういった仕掛けがみごとに成功していると思います。
アニメ表現の可能性をあらためて思い知らされました。

やがて子は成長し、母の願いとは違う方へと歩んでいってしまうこともある。
その時の母の気持ち。
母が子に言えるのはただ「しっかり生きて!」の言葉だけ。
でもそこにどれほどの想いが込められているか。
母の子として、私もあらためてその言葉と想いをしっかりと受け止めたいと思いました。

テレビ放送ではエンディングがカットされ、アン・サリーさんの歌う「お母さんの唄」が聴けませんでした。
それが不満です。映画の余韻に浸りながら聴きたかったのに。


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