二日後、私と小磯、そしてF社の三浦は、我がR社の機器保管場所であるH工業の機材センターに居た。
昨日、ハスキーを含む機材一式は、湾岸道路の目の前にある機材センターに撤収済みだ。
「さあ、たっぷりと灰汁を飲み込んだハスキーを見せてもらいましょうか」
三浦が皮肉混じりに言う。大澤との関係はかなり改善されたものの、私と三浦とのB軍基地での確執が完全に無くなった訳ではなかった。
「まずは供給水タンクから行きましょうか」
三浦に促されて、供給水タンクを開ける。
「あーあ、こりゃひどいなぁ」
三浦が呆れたように呟く。一本15,000円のアブソリュートフィルターが見るも無残にドロドロに汚れていた。
「いったいどんな水を入れたんですか?」
三浦がフィルターを抜きながら中を覗き込む。
「これでもプレフィルターを付けていたんですけど…」
「がははは、木田君、こりゃ凄いよ!」
横でプレフィルターのケーシングを開けていた小磯が、大笑いをしている。斜め下に傾けたステンレスのケーシングからは、ドロンドロンと灰汁が出ている。
「木田さん、こんなの入れてたの?これ、『水』じゃ無いよ」
三浦が呆れている。
「いえ、これが『工業用水』だって言われたんで」
「いやぁ、凄い現場だね。こんな工業用水、見た事も、聞いた事も無いなぁ」
「ええ、素人の僕でもこれが『工業用水』じゃ無いことくらいは分かりますけどね」
仕切りに首をひねる三浦と一緒に、供給水タンクを『透明な水道水』で洗浄する。
「このまま供給水ホースも洗浄しましょう。木田さん、ECVと供給水ホースを外してもらえますか?」
私は巨大モンキーレンチでECVを外し、供給水ホースを手に持った。
「いいですよ」
三浦がホースに水道水を流し込むと、薄い灰汁がドボドボと出て来た。
「・・・」
「あー、もう完全にプランジャーまで入ってるね」
「ええ、高くつきそうですね」
すでにアブソリュートフィルター15,000円×4本で、60,000円の損失が確定している。
「さ、プランジャーをばらしますか!」
ここまで酷いと笑えてくるのか、三浦は笑いながら言った。今回は私が巨大トルクレンチを使用する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
全てのボルトを外し終わった時には、私は肩で息をしていた。
「お疲れ様、ちょっと休憩して下さい」
そう言うと三浦は、プランジャーのシリンダーを引き抜き始めた。
「あー、やっぱりやられてるね」
三浦はダイナミックシールを指で触っている。
「ということは、チェックバルブもダメですね」
「まあ、全部リペアした方が間違いないですよ。リペアキットはあります?」
「ええ、予備が一式ありますけど。三浦さん、リペアキットって確か…」
「うん、1セット六万円だね」
「…3セットで18万円?」
「高くついたねぇ、木田さん」
「ええ、たった半日ですよ、ハスキーの実働時間」
「ははは、諦めるしかないよ」
私はがっくりとしながら、新品のチェックバルブリペアーキットをコンテナの部品棚から取り出した。
「がははは、木田君、見て見て!」
小磯がまた騒いでいる。見ると、一番最初に灰汁を受け入れた、50μのプレフィルターを手に持っている。元が白色だったフィルターは、完全に灰泥でコーティングされている。
「はいっ、きりたんぽ!」
小磯がボディビルダーの様な姿勢で、灰汁がボタボタと垂れるフィルターを持ってポージングを決めた。
「・・・」
「ははははは!」
三浦が大声で笑った。
実稼働時間半日のメンテナンス費用は、部品代240,000円プラス三浦の出張メンテナンス費用となった。
昨日、ハスキーを含む機材一式は、湾岸道路の目の前にある機材センターに撤収済みだ。
「さあ、たっぷりと灰汁を飲み込んだハスキーを見せてもらいましょうか」
三浦が皮肉混じりに言う。大澤との関係はかなり改善されたものの、私と三浦とのB軍基地での確執が完全に無くなった訳ではなかった。
「まずは供給水タンクから行きましょうか」
三浦に促されて、供給水タンクを開ける。
「あーあ、こりゃひどいなぁ」
三浦が呆れたように呟く。一本15,000円のアブソリュートフィルターが見るも無残にドロドロに汚れていた。
「いったいどんな水を入れたんですか?」
三浦がフィルターを抜きながら中を覗き込む。
「これでもプレフィルターを付けていたんですけど…」
「がははは、木田君、こりゃ凄いよ!」
横でプレフィルターのケーシングを開けていた小磯が、大笑いをしている。斜め下に傾けたステンレスのケーシングからは、ドロンドロンと灰汁が出ている。
「木田さん、こんなの入れてたの?これ、『水』じゃ無いよ」
三浦が呆れている。
「いえ、これが『工業用水』だって言われたんで」
「いやぁ、凄い現場だね。こんな工業用水、見た事も、聞いた事も無いなぁ」
「ええ、素人の僕でもこれが『工業用水』じゃ無いことくらいは分かりますけどね」
仕切りに首をひねる三浦と一緒に、供給水タンクを『透明な水道水』で洗浄する。
「このまま供給水ホースも洗浄しましょう。木田さん、ECVと供給水ホースを外してもらえますか?」
私は巨大モンキーレンチでECVを外し、供給水ホースを手に持った。
「いいですよ」
三浦がホースに水道水を流し込むと、薄い灰汁がドボドボと出て来た。
「・・・」
「あー、もう完全にプランジャーまで入ってるね」
「ええ、高くつきそうですね」
すでにアブソリュートフィルター15,000円×4本で、60,000円の損失が確定している。
「さ、プランジャーをばらしますか!」
ここまで酷いと笑えてくるのか、三浦は笑いながら言った。今回は私が巨大トルクレンチを使用する。
「はぁ、はぁ、はぁ」
全てのボルトを外し終わった時には、私は肩で息をしていた。
「お疲れ様、ちょっと休憩して下さい」
そう言うと三浦は、プランジャーのシリンダーを引き抜き始めた。
「あー、やっぱりやられてるね」
三浦はダイナミックシールを指で触っている。
「ということは、チェックバルブもダメですね」
「まあ、全部リペアした方が間違いないですよ。リペアキットはあります?」
「ええ、予備が一式ありますけど。三浦さん、リペアキットって確か…」
「うん、1セット六万円だね」
「…3セットで18万円?」
「高くついたねぇ、木田さん」
「ええ、たった半日ですよ、ハスキーの実働時間」
「ははは、諦めるしかないよ」
私はがっくりとしながら、新品のチェックバルブリペアーキットをコンテナの部品棚から取り出した。
「がははは、木田君、見て見て!」
小磯がまた騒いでいる。見ると、一番最初に灰汁を受け入れた、50μのプレフィルターを手に持っている。元が白色だったフィルターは、完全に灰泥でコーティングされている。
「はいっ、きりたんぽ!」
小磯がボディビルダーの様な姿勢で、灰汁がボタボタと垂れるフィルターを持ってポージングを決めた。
「・・・」
「ははははは!」
三浦が大声で笑った。
実稼働時間半日のメンテナンス費用は、部品代240,000円プラス三浦の出張メンテナンス費用となった。