物静かで大人しく、黙々と仕事をする人間、それが荒木の評価だった。
「だけどよぉ、酒を呑み始めると、途端に変わっちゃうんだよな」
「あはは、本当ですよね」
佐野とノリオには、思い当たる節がたくさんあるらしい。
「でも、荒木ちゃんの偉いところは、必ず道に落ちてるんだよな」
「あはははは、本当ですよね。佐野さんに何度も拾われてますもんね」
二人は爆笑する。
「え?どういう意味ですか?」
二人は一頻り笑うと、佐野が説明を始める。
「いやぁ、荒木ちゃんは酒を呑むとベロンベロンになって、最後は公園だろうが、道端だろうが、必ず寝ちゃうんだよな」
ノリオが首をコクコクと動かす。
「でも、荒木ちゃんが偉いのは、俺の通勤路に落ちてるんだよな」
「くはははは!」
ノリオが思い出したのか、腹を抱える。
「通勤路?」
「うん、三木塗装を製油所で常用で使ってた時なんだけど、電車で出勤して、製油所まで歩いて向かうと、なぜか荒木ちゃんが落ちてるんだよ」
「ええ?どこにですか?」
「まあ、大体は歩道橋の下とか、道路の植え込みの中とかにね」
「本当ですか?」
「ああ、本当だよ。俺は何度も荒木ちゃんを歩道橋の下で拾ったからね」
「マジですか?荒木さんは道路で寝てるんですか?」
「すっごい、本当に寝てますよね」
ノリオがカピバラ顔をクシャクシャにしながら同意する。
「だから、荒木ちゃんの服の襟と、腰のベルトを持って、『ハイ、おはよー。今日も楽しい仕事だよぉ!』って言いながら、製油所まで引きずって行くんだよ」
佐野がその時のポーズを取る。
「うはははは、それって凄いですね。でもそんなんじゃ荒木さんは、仕事にならないんじゃないですか?」
佐野は顔の前で手の平をヒラヒラとさせた。
「それがどんなにベロベロでも、刷毛を持たせるとキッチリと仕事はやるよ」
「ええ、むしろ普段よりも綺麗に塗ってる感じですよね」
ノリオも同意する。
「きっとアルコールとシンナーで程好く脳が覚醒するんだと思うよ」
佐野は大笑いをしながら、医学的になんの根拠も無い冗談を言った。
「あれが本当のプロですよね」
ノリオが知ったような口を利いた。
「馬鹿だなぁ、ノリは」
佐野はノリオを嗜めた。
「荒木ちゃんは、酒を呑んでベロンベロンになっても、必ず監督の通勤路に落ちてるからイイのであって、現場に来られなきゃ単なるさぼりだぞ」
ノリオは少しバツが悪そうな顔をする。
「それに荒木ちゃんは、どんなに酔っててもきっちりと塗るからなぁ、あれは大したもんだよ。お前なんか、酷い二日酔いで来た時は、ほとんど使い物にならなかっただろう」
「…いやぁ、厳しいですね」
ノリオはヘラヘラと笑った。
「でも、僕はまだ荒木さんの『ウ○コ事件』みたいな事はしてませんよぉ」
佐野は何かを思い出したのか、また笑い出した。
「いやぁ、そんな事もあったね」
一番そういう話が無さそうな荒木が、一番面白い人間らしかった。
「だけどよぉ、酒を呑み始めると、途端に変わっちゃうんだよな」
「あはは、本当ですよね」
佐野とノリオには、思い当たる節がたくさんあるらしい。
「でも、荒木ちゃんの偉いところは、必ず道に落ちてるんだよな」
「あはははは、本当ですよね。佐野さんに何度も拾われてますもんね」
二人は爆笑する。
「え?どういう意味ですか?」
二人は一頻り笑うと、佐野が説明を始める。
「いやぁ、荒木ちゃんは酒を呑むとベロンベロンになって、最後は公園だろうが、道端だろうが、必ず寝ちゃうんだよな」
ノリオが首をコクコクと動かす。
「でも、荒木ちゃんが偉いのは、俺の通勤路に落ちてるんだよな」
「くはははは!」
ノリオが思い出したのか、腹を抱える。
「通勤路?」
「うん、三木塗装を製油所で常用で使ってた時なんだけど、電車で出勤して、製油所まで歩いて向かうと、なぜか荒木ちゃんが落ちてるんだよ」
「ええ?どこにですか?」
「まあ、大体は歩道橋の下とか、道路の植え込みの中とかにね」
「本当ですか?」
「ああ、本当だよ。俺は何度も荒木ちゃんを歩道橋の下で拾ったからね」
「マジですか?荒木さんは道路で寝てるんですか?」
「すっごい、本当に寝てますよね」
ノリオがカピバラ顔をクシャクシャにしながら同意する。
「だから、荒木ちゃんの服の襟と、腰のベルトを持って、『ハイ、おはよー。今日も楽しい仕事だよぉ!』って言いながら、製油所まで引きずって行くんだよ」
佐野がその時のポーズを取る。
「うはははは、それって凄いですね。でもそんなんじゃ荒木さんは、仕事にならないんじゃないですか?」
佐野は顔の前で手の平をヒラヒラとさせた。
「それがどんなにベロベロでも、刷毛を持たせるとキッチリと仕事はやるよ」
「ええ、むしろ普段よりも綺麗に塗ってる感じですよね」
ノリオも同意する。
「きっとアルコールとシンナーで程好く脳が覚醒するんだと思うよ」
佐野は大笑いをしながら、医学的になんの根拠も無い冗談を言った。
「あれが本当のプロですよね」
ノリオが知ったような口を利いた。
「馬鹿だなぁ、ノリは」
佐野はノリオを嗜めた。
「荒木ちゃんは、酒を呑んでベロンベロンになっても、必ず監督の通勤路に落ちてるからイイのであって、現場に来られなきゃ単なるさぼりだぞ」
ノリオは少しバツが悪そうな顔をする。
「それに荒木ちゃんは、どんなに酔っててもきっちりと塗るからなぁ、あれは大したもんだよ。お前なんか、酷い二日酔いで来た時は、ほとんど使い物にならなかっただろう」
「…いやぁ、厳しいですね」
ノリオはヘラヘラと笑った。
「でも、僕はまだ荒木さんの『ウ○コ事件』みたいな事はしてませんよぉ」
佐野は何かを思い出したのか、また笑い出した。
「いやぁ、そんな事もあったね」
一番そういう話が無さそうな荒木が、一番面白い人間らしかった。