万里の長城コースターは、意外にもアメリカ人に一番反応が良かった。
車輌基地
降車場の脇には、大量のコースターの車輌が置かれています。
陳列状態
とにかく大量の車輌があります。
ブレーキのゴムの臭いが誘ったのか、ここで私は急激にトイレに行きたくなりました。
「ま、『熊楽園』って施設なんだから、トイレくらいはすぐにあるだろう」
と私は楽観視して、慌てずに土産物屋のオバサンに英語で問いかけます。
「トイレはどこですか?」
「下だよ」
愛想はありませんが、とりあえずは答えてくれます。
「下ってどこだ?」
左右の土産物屋を確認しながら歩きますが、トイレは見当たりません。
「ん?あれか?」
左斜め前方に、簡易トイレらしき白い箱が見えています。私はやや早足でそのトイレらしき箱に近づきます。
「…『不能使用』、使えないってことか?」
いくら中国語でも、さすがにこの貼り紙の意味は理解できます。私の中に若干の焦りが生まれます。
「いかん、こんな異国の地で漏らすわけにはいかん、大を…」
日本男児として、それは許されない行為です。
やたらと長いキュウリ?を食べているカップル
トイレ探しに奔走する私の横を、美味しそうに食べながら歩いて行きます。
「トイレはどこにありますか?」
今度は別の土産物屋の男性に質問します。
「下だよ、向こうだ!」
彼は下の方向を指差します。
「…どういう意味だ?つまりあの使えないトイレじゃ無くて、他にトイレがあるのか?」
迷っている暇はありません。私は下り坂になっている『熊楽園』の中を、ズンズンと歩いて行きます。
「お、あれか?」
一瞬、コンクリート製の建物に走り寄りそうになりますが、それは単なる熊の檻です。
「本当かよ?このままじゃ出口なんじゃねぇのか?」
すでに熊楽園の出口ゲートが見えています。
「もしも上にトイレがあるとしたら、マジでヤバいぞ」
すでに中国に来てから一週間以上が経過し、私の下痢は達人の域に達しています。
「このままじゃ俺は…」
嫌なイメージが頭を過ります。
その時でした、
「おおっ、トイレじゃん!」
ふと視線を左に移すと、そこには綺麗そうなトイレがあります。
「ヤッタぁー!」
私は『HEROES』の『ヒロ・ナカムラ』のように叫びそうになりましたが、とにかく腸に振動を与えないように、なるべく早足で歩きます。
トイレだっ!
立派なトイレです。しかも小さい電光掲示板まで装備されています。
「ん、有料?五角(約75円)か、もちろん払うよ」
むしろ有料トイレの方がありがたいです。きっと綺麗に違いないから…。
幸いにもティッシュペーパーは新品を持っているので、紙の心配も要りません。
私は逸る肛門に自制を促し、そそくさとトイレに入りました。
あ、あれ?
何かが足りない気がします。
「…あれ?お?いや、あれ?」
壁はあります、隣との仕切り壁は…。
蝶番もある…
だが何度見ても、肝心の板が無い。
「おいっ、ドアは!扉はどこに行った!?」
ふと左端の開放的な個室を見ると、オジサンがお尻をこちらに向けて踏ん張っています。
「マジかよ、これが噂の『ニーハオトイレ(厳密には横の壁も低く、しゃがんだ状態で会話が出来るようなトイレを意味する)』かよぉ!!!」
だが私には躊躇っている暇は無い。すでに私の肛門波動砲には、エネルギーが120パーセントまで充填されている。迷っている暇は無いのだ。
「くっそー、もうこなったらヤケクソじゃぁあああ!」
私はズボンを下ろすと、日本男児として潔く便器の上にしゃがんだのだった…。
十分後、私がトイレの外に出ると、タイミングよく携帯電話が鳴った。
「もしもし」
「おお、キーちゃん、どこにおる?」
佐野からだ。
「今、出口手前のトイレから出たところです」
「あ、トイレに行ってたんだ」
「ええ、素敵なトイレでしたよ」
「何だ、ニーハオトイレか?」
「ええ、まさか体験できるとは思ってませんでしたよ」
「わははははは!とりあえずそこで待っててくれる?すぐに行くから」
「はい…」
私の前では、海外からの観光客が、次々とこの有料トイレに吸い込まれて行きます。
大盛況!ニーハオトイレで外貨獲得!
正直、世界遺産のお膝元で、このようなトイレはいかがな物かと思います。
観光客を通じて世界中に、
「中国のトイレ事情は、世界から大きく遅れております!」
と宣言しているような物です。
当局の方、是非とも『扉』を復旧して下さい(笑)