額から汗が滴り、腰が痛い。
今日は朝からひたすら「ゴム方作業」だ。
シャベルで水分をたっぷり含んだゴム屑をすくい、土のう袋に入れる。土のう袋の細かい「目」から、黒いゴム汁が滲み出る。
「ぶわぁ!」
石本が大声を上げた。天井からゴムの屑が吹き飛んで来たからだ。首筋をゴソゴソとやっているので、きっと背中に入ったのだろう。
「ブっ!」
今度は私の番だ。石本を見て口を開けて笑っていたので、口の中にゴム汁が入った。何度も唾を吐き出す。だが文句は言えない。上では小磯とハルがひたすら天井のゴムライニングを剥離している。
床向きの作業でさえ私は辛かったのに、二人はずっと天井を向いて作業をしている。天井向きの剥離作業も、やはり反力は20kgf/cm2だ。
しかも二人は三段のローリングタワーの上で作業をしている。いかに鋼製のローリングタワーと言えど、ガンを発射した時の反力を受ければ、本体がギシギシとたわむ。作業床の高さは5.4m、私も上に登ったが、この高さで本体がたわむと半端無く怖い。
たまに天井から大きなゴムの破片が降って来る。
破片は太りすぎのコウモリの様にベロベロと回転し、私や石本の背中、あるいは足元に落ちて来る。思わず見上げると、いつも小磯が肩を揺らしている。彼は巧みな技術を活かし、大きな破片を器用にコントロールして剥がし落とし、わざと私と石本にぶつけて喜んでいるのだ。ハードな仕事なので、そういう遊びでも入れなければ、精神的にも疲れてしまうのだろう。
私は笑ってゴム片をブーメランの様に小磯に投げ返した。ゴム片は上手く回転しながら宙を舞い、小磯の乗っているローリングタワーの作業床に落ちだ。小磯は、今度はそのゴム片を隣のローリングタワーに居るハルのお尻にめがけて投げた。
「!」
ゴム片がお尻に命中し、驚いたハルの動きが止まる。小磯は肩を揺らして笑っている動作をする。ハルはゴム片を小磯に向かって投げ返しながら、すかさずジェットを撃った。ゴム片はジェットの後押しを受けてベロベロと回転し、小磯のローリングタワーに当たって落ちた。
小磯もすかさずハルに向かってガンを撃ち返す。ハルも応戦する。もちろん二人の距離は十二分に離れているので、ジェットで怪我をするような事はない。
「ブォー!」
「バシュー!」
下らない撃ち合いだ。石本は楽しそうに二人を見ている。私は小磯のローリングタワーをモンキーレンチでガンガンと叩くと、笑いながら両手で『ブレイク』の合図を送った。二人は楽しそうに体で笑うと、素直に天井に向き合った。
タンクから土のう袋を運び出すと、安井工業社長の安井が来ていた。
「木田さん、頼まれていた送風機を持って来たよ」
昨日、小磯とハルがガンを撃つと、思っていた以上にタンクの中に水蒸気がこもり、視界が悪くなっていた。天井にあるマンホールからの排気効率が思ったよりも悪いからだ。やはり送風機の追加が必要だった。ついでにハロゲンライトの照明器具も一つ追加する。
十分後、K製鋼の安全担当者がやって来た。
「はい、電検料1,000円です」
「・・・」
やっぱりボッたくられている気が、私にはした。
今日は朝からひたすら「ゴム方作業」だ。
シャベルで水分をたっぷり含んだゴム屑をすくい、土のう袋に入れる。土のう袋の細かい「目」から、黒いゴム汁が滲み出る。
「ぶわぁ!」
石本が大声を上げた。天井からゴムの屑が吹き飛んで来たからだ。首筋をゴソゴソとやっているので、きっと背中に入ったのだろう。
「ブっ!」
今度は私の番だ。石本を見て口を開けて笑っていたので、口の中にゴム汁が入った。何度も唾を吐き出す。だが文句は言えない。上では小磯とハルがひたすら天井のゴムライニングを剥離している。
床向きの作業でさえ私は辛かったのに、二人はずっと天井を向いて作業をしている。天井向きの剥離作業も、やはり反力は20kgf/cm2だ。
しかも二人は三段のローリングタワーの上で作業をしている。いかに鋼製のローリングタワーと言えど、ガンを発射した時の反力を受ければ、本体がギシギシとたわむ。作業床の高さは5.4m、私も上に登ったが、この高さで本体がたわむと半端無く怖い。
たまに天井から大きなゴムの破片が降って来る。
破片は太りすぎのコウモリの様にベロベロと回転し、私や石本の背中、あるいは足元に落ちて来る。思わず見上げると、いつも小磯が肩を揺らしている。彼は巧みな技術を活かし、大きな破片を器用にコントロールして剥がし落とし、わざと私と石本にぶつけて喜んでいるのだ。ハードな仕事なので、そういう遊びでも入れなければ、精神的にも疲れてしまうのだろう。
私は笑ってゴム片をブーメランの様に小磯に投げ返した。ゴム片は上手く回転しながら宙を舞い、小磯の乗っているローリングタワーの作業床に落ちだ。小磯は、今度はそのゴム片を隣のローリングタワーに居るハルのお尻にめがけて投げた。
「!」
ゴム片がお尻に命中し、驚いたハルの動きが止まる。小磯は肩を揺らして笑っている動作をする。ハルはゴム片を小磯に向かって投げ返しながら、すかさずジェットを撃った。ゴム片はジェットの後押しを受けてベロベロと回転し、小磯のローリングタワーに当たって落ちた。
小磯もすかさずハルに向かってガンを撃ち返す。ハルも応戦する。もちろん二人の距離は十二分に離れているので、ジェットで怪我をするような事はない。
「ブォー!」
「バシュー!」
下らない撃ち合いだ。石本は楽しそうに二人を見ている。私は小磯のローリングタワーをモンキーレンチでガンガンと叩くと、笑いながら両手で『ブレイク』の合図を送った。二人は楽しそうに体で笑うと、素直に天井に向き合った。
タンクから土のう袋を運び出すと、安井工業社長の安井が来ていた。
「木田さん、頼まれていた送風機を持って来たよ」
昨日、小磯とハルがガンを撃つと、思っていた以上にタンクの中に水蒸気がこもり、視界が悪くなっていた。天井にあるマンホールからの排気効率が思ったよりも悪いからだ。やはり送風機の追加が必要だった。ついでにハロゲンライトの照明器具も一つ追加する。
十分後、K製鋼の安全担当者がやって来た。
「はい、電検料1,000円です」
「・・・」
やっぱりボッたくられている気が、私にはした。