岸壁の縁に腰掛けての釣りはまだまだ続く。
私はオキアミを針に付けると、また海に投げ込んだ。何度か投げ込むと、またアタリが来た。
「また来たよ!」
私は慌てて糸を巻き上げ、小さな魚を釣り上げた。
「来るね、ここは」
「結構釣れますね」
氷室も見ているだけだが楽しそうだ。私はこの魚も小さいのでリリースした。
「次こそは大物を上げたいね。居るかな?」
「居ると思いますよ、この感じなら」
氷室はドックの海面を覗き込みながら答えた。
今度は、岸壁に繋がれている黒い巨大ブイの脇にオキアミを投げ込む。
すぐにはアタリが来ず、何度かオキアミを交換した時だった。不意に凄い力でテグスが海中に引き込まれた。
「何だ!?」
素手で持ったテグスに、びりびりと魚の暴れる感覚が伝わってくる。私はプラスチックの円盤にテグスを巻き付けようとしたが、引きが強くてそんな余裕は無かった。
「氷室さん、手伝って!糸を巻いて!」
私は円盤を氷室に渡すと、手前でテグスを引く事に集中した。氷室は後ろでキコキコと糸を巻き付けている。素手に掛かる荷重で、皮膚が切れるのではないかと思ったその時だった。
「あっ!」
一瞬で私の手から魚の感覚が消え失せた。
「あれ、ばれちゃいました?」
氷室は私の体に力が入っていない事に気付き、テグスを巻くスピードを緩めた。
「ばらしちゃったなぁ・・・」
私と氷室はガックリとした。今ばらしたのは、多分そこそこの大物だ。
「今の感じだと黒鯛かもしれませんね」
氷室がやや同情的な視線を私に向ける。
「こんなドックの中にも黒鯛が居るんだね。でも俺の技術じゃ、ちょっと難しかったなぁ」
正直な所、私には釣りの技術なんて物は何も無かった。
「今夜のおかずが・・・」
落ち込む私の前に、バラストタンクから上がった小磯がやって来た。
「どうしたの木田君、何を朝から騒いでるの?」
小磯はこういう遊びに関しては鋭敏なセンサーがあるみたいだ。
「あれ?そう言えば小磯さんって、確か釣りが趣味でしたよね」
「そりゃあ、自分で言うのもなんだけど、そこそこはやるよ」
私の問い掛けに、小磯は胸を張って答えた。
「これで黒鯛にアタックしません?」
私はテグスの円盤を小磯の目の前にかざした。
「は?」
小磯は理解不能な顔をしている。
「今、これで黒鯛をばらしちゃったんですよ」
「はぁ?」
「僕の技術じゃ無理です、手伝って下さいよ」
「こ、これで黒鯛?本気なの?」
私と氷室はやや自慢げな顔をした。
「本気も何も、さっきは後一歩の所だったんですから」
やや誇張はしているが、事実である。
私はオキアミを針に付けると、また海に投げ込んだ。何度か投げ込むと、またアタリが来た。
「また来たよ!」
私は慌てて糸を巻き上げ、小さな魚を釣り上げた。
「来るね、ここは」
「結構釣れますね」
氷室も見ているだけだが楽しそうだ。私はこの魚も小さいのでリリースした。
「次こそは大物を上げたいね。居るかな?」
「居ると思いますよ、この感じなら」
氷室はドックの海面を覗き込みながら答えた。
今度は、岸壁に繋がれている黒い巨大ブイの脇にオキアミを投げ込む。
すぐにはアタリが来ず、何度かオキアミを交換した時だった。不意に凄い力でテグスが海中に引き込まれた。
「何だ!?」
素手で持ったテグスに、びりびりと魚の暴れる感覚が伝わってくる。私はプラスチックの円盤にテグスを巻き付けようとしたが、引きが強くてそんな余裕は無かった。
「氷室さん、手伝って!糸を巻いて!」
私は円盤を氷室に渡すと、手前でテグスを引く事に集中した。氷室は後ろでキコキコと糸を巻き付けている。素手に掛かる荷重で、皮膚が切れるのではないかと思ったその時だった。
「あっ!」
一瞬で私の手から魚の感覚が消え失せた。
「あれ、ばれちゃいました?」
氷室は私の体に力が入っていない事に気付き、テグスを巻くスピードを緩めた。
「ばらしちゃったなぁ・・・」
私と氷室はガックリとした。今ばらしたのは、多分そこそこの大物だ。
「今の感じだと黒鯛かもしれませんね」
氷室がやや同情的な視線を私に向ける。
「こんなドックの中にも黒鯛が居るんだね。でも俺の技術じゃ、ちょっと難しかったなぁ」
正直な所、私には釣りの技術なんて物は何も無かった。
「今夜のおかずが・・・」
落ち込む私の前に、バラストタンクから上がった小磯がやって来た。
「どうしたの木田君、何を朝から騒いでるの?」
小磯はこういう遊びに関しては鋭敏なセンサーがあるみたいだ。
「あれ?そう言えば小磯さんって、確か釣りが趣味でしたよね」
「そりゃあ、自分で言うのもなんだけど、そこそこはやるよ」
私の問い掛けに、小磯は胸を張って答えた。
「これで黒鯛にアタックしません?」
私はテグスの円盤を小磯の目の前にかざした。
「は?」
小磯は理解不能な顔をしている。
「今、これで黒鯛をばらしちゃったんですよ」
「はぁ?」
「僕の技術じゃ無理です、手伝って下さいよ」
「こ、これで黒鯛?本気なの?」
私と氷室はやや自慢げな顔をした。
「本気も何も、さっきは後一歩の所だったんですから」
やや誇張はしているが、事実である。