ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

第210回国会の内閣提出法律案第12号「民法等の一部を改正する法律案」

2022年10月31日 00時00分00秒 | 法律学

 2022年10月15日付の朝日新聞朝刊1面14版△に「嫡出推定見直し 閣議決定 民法改正案 親の懲戒権削除も」という記事が掲載されていました。その内容が盛り込まれた「民法等の一部を改正する法律案」(以下、民法改正法案)が、10月14日、内閣から衆議院に提出されています。今回は、その内容を取り上げておきます。

 民法改正法案の第1条は、民法の第4編の諸規定を改正するものです。民法改正法案の提出「理由」は「子の権利利益を保護する観点から、嫡出の推定が及ぶ範囲の見直し及びこれに伴う女性に係る再婚禁止期間の廃止、嫡出否認をすることができる者の範囲の拡大及び出訴期間の伸長、事実に反する認知についてその効力を争うことができる期間の設置等の措置を講ずるとともに、親権者の懲戒権に係る規定を削除し、子の監護及び教育において子の人格を尊重する義務を定める等の措置を講ずる必要がある」と説明しています。ようやく、或る程度ではありますが民法が時代に追い付いてきたというところでしょう。

 まず目に付くのが、女性の再婚禁止期間を定める第733条を削除するものです。この規定の趣旨は嫡出推定の重複の回避による父子関係の紛争の防止にあるとされていますが、長らく、再婚禁止期間に合理的根拠があるかどうかの議論がなされていました。最判平成7年12月5日判時1563号81頁は、再婚禁止期間を6か月と定めていた民法第733条を合憲と評価しましたが、最大判平成27年12月16日民集69巻8号2427頁は、規定の趣旨を妥当としつつも6か月である必要はなく、100日でよいという趣旨の判断を示しました。この最高裁判所大法廷判決をきっかけとして再婚禁止期間が6か月から100日に短縮されましたが、医療技術の発展なども考慮すれば再婚禁止期間を定めること自体が問題であるという意見も強かったのです。そこで、改めて、第733条を削除するという案が出されたのでしょう。

 第733条を削除するのであれば、「再婚禁止期間内にした婚姻の取消し」という見出しの下に「第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。」と定める第746条も不要となります(一部、漢数字を算用数字に改めています。以下も同様です)。そのため、民法改正法案は第746条を削除することも示しています。

 次に目に付くのが、「懲戒」という見出しの下に「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」と定める第822条の削除です。この規定も児童虐待事件との関連で以前から批判されており、2011年の改正時には第2項が削除され、2019年には「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」において見直しが明記されています〈さしあたり、松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(家族法)」(2021年、日本評論社)186頁を参照しました〉。果たして、第822条の削除が児童虐待の防止にどれほど役に立つのか。それは未知数としか言えないでしょう。あるいは、逆にスポイルされたような児童が増えるかもしれません(私の懸念もここにあります)。

 その上で、現在の第821条(子の居所に関する規定)を第822条に移し、新たに「子の人格の尊重等」という見出しの下に「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」とする第821条を追加します。おそらく、政治的立場などによって見解が分かれうる規定であり、国会の内外であれこれの議論があることでしょう。

 この他の改正点は、次のとおりです(色を付けた部分が改正部分)。

 ①「婚姻の届出の受理」を定ける第740条を「婚姻の届出は、その婚姻が第731条、第732条、第734条から第736条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。」とする。

 ②第743条を「婚姻は、次条、第745条及び第747条の規定によらなければ、取り消すことができない。」と改める。

 ③第744条第1項を「第731条、第732条及び第734条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。」と改める。

 ④第744条第2項を「第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者前婚の配偶者も、その取消しを請求することができる。」と改める。

 ⑤第772条第1項を「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。」と改める。

 ⑥第772条第2項を「前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」に改める。

 ⑦第772条に「第1項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に2以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。」という第3項を加える。

 ⑧第772条に「前3項の規定により父が定められた子について、第774条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、同項中『直近の婚姻』とあるのは、『直近の婚姻(第774条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)』とする。」という第4項を加える。

 ⑨第773条を「第733条第1項第772条の規定に違反して再婚婚姻をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。」と改める。

 ⑩第774条を「第772条の規定により子の父が定められる場合において、父又は子は、子が嫡出であることを否認することができる。」と改める。

 ⑪第774条に「前項の規定による子の否認権は、親権を行う母、親権を行う養親又は未成年後見人が、子のために行使することができる。」という第2項を加える。

 ⑫第774条に「第1項に規定する場合において、母は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。」という第3項を加える。

 ⑬第774条に「第772条第3項の規定により子の父が定められる場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻していた者であって、子の父以外のもの(以下「前夫」という。)は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。」という第4項を加える。

 ⑭第774条に「前項の規定による否認権を行使し、第772条第4項の規定により読み替えられた同条第3項の規定により新たに子の父と定められた者は、第1項の規定にかかわらず、子が自らの嫡出であることを否認することができない。」という第5項を加える。

 ⑮第775条を「前条の規定による次の各号に掲げる否認権は、子又は親権を行う母それぞれ当該各号に定める者対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

 一 父の否認権 子又は親権を行う母

 二 子の否認権 父

 三 母の否認権 父

 四 前夫の否認権 父及び子又は親権を行う母

 ⑯第775条に「前項第1号又は第4号に掲げる否認権を親権を行う母に対し行使しようとする場合において、親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。」という第2項を加える。

 ⑰第776条を「父又は母は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、それぞれその否認権を失う。」

 ⑫第777条を、次のように改める。

 「嫡出否認次の各号に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知ったそれぞれ当該各号に定める時から一年三年以内に提起しなければならない。

 一 父の否認権 父が子の出生を知った時

 二 子の否認権 その出生の時

 三 母の否認権 子の出生の時

 四 前夫の否認権 前夫が子の出生を知った時

 ⑬「夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。」と定める第778条を、次のように改める。

 「第772条第3項の規定により父が定められた子について第774条の規定により嫡出であることが否認されたときは、次の各号に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、前条の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める時から1年以内に提起しなければならない。

 一 第772条第4項の規定により読み替えられた同条第3項の規定により新たに子の父と定められた者の否認権 新たに子の父と定められた者が当該子に係る嫡出否認の裁判が確定したことを知った時

 二 子の否認権 子が前号の裁判が確定したことを知った時

 三 母の否認権 母が第1号の裁判が確定したことを知った時

 四 前夫の否認権 前夫が第1号の裁判が確定したことを知った時

 ⑭第778条の2を加える。規定は、次のとおりです。

 第1項:「第777条(第2号に係る部分に限る。)又は前条(第2号に係る部分に限る。)の期間の満了前6箇月以内の間に親権を行う母、親権を行う養親及び未成年後見人がないときは、子は、母若しくは養親の親権停止の期間が満了し、親権喪失若しくは親権停止の審判の取消しの審判が確定し、若しくは親権が回復された時、新たに養子縁組が成立した時又は未成年後見人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、嫡出否認の訴えを提起することができる。

 第2項:「子は、その父と継続して同居した期間(当該期間が2以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、第777条(第2号に係る部分に限る。)及び前条(第2号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、21歳に達するまでの間、嫡出否認の訴えを提起することができる。ただし、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、この限りでない。

 第3項:「第774条第2項の規定は、前項の場合には、適用しない。

 第4項:「第777条(第4号に係る部分に限る。)及び前条(第4号に係る部分に限る。)に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、子が成年に達した後は、提起することができない。

 ⑭第778条の3を追加する。この規定の見出しは「子の監護に要した費用の償還の制限」であり、条文は「第774条の規定により嫡出であることが否認された場合であっても、子は、父であった者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。」というものです。

 ⑮第778条の4を追加する。この規定の見出しは「相続の開始後に新たに子と推定された者の価額の支払請求権」であり、条文は「相続の開始後、第774条の規定により否認権が行使され、第772条第4項の規定により読み替えられた同条第3項の規定により新たに被相続人がその父と定められた者が相続人として遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときは、当該相続人の遺産分割の請求は、価額のみによる支払の請求により行うものとする。」というものです。

 ⑯第783条第2項を第3項に移し、新たに「前項の子が出生した場合において、第772条の規定によりその子の父が定められるときは、同項の規定による認知は、その効力を生じない。」という第2項を加える。

 ⑰「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。」と定める第786条を、次のように改める。

 見出し:「認知に対する反対の事実の主張」→ 「認知の無効の訴え

 第1項:「次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(第783条第1項の規定による認知がされた場合にあっては、子の出生の時)から7年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、第3号に掲げる者について、その認知の無効の主張が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。

 一 子又はその法定代理人 子又はその法定代理人が認知を知った時

 二 認知をした者 認知の時

 三 子の母 子の母が認知を知った時

 第2項:「子は、その子を認知した者と認知後に継続して同居した期間(当該期間が2以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、前項(第1号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、21歳に達するまでの間、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、子による認知の無効の主張が認知をした者による養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときは、この限りでない。

 第3項:「前項の規定は、同項に規定する子の法定代理人が第1項の認知の無効の訴えを提起する場合には、適用しない。

 第4項:「第1項及び第2項の規定により認知が無効とされた場合であっても、子は、認知をした者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。

 次に、民法改正法案第2条です。これは児童福祉法の一部を改正する旨の規定であり、次のとおりとなっています。

 ①児童福祉法第33条の2第2項を「児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採るとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。この場合において、児童相談所長は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と改める。

 ②第47条第3項を「児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親(以下この項において「施設長等」という。)は、入所中又は受託中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。この場合において、施設長等は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と改める。

 続いて、民法改正法案第3条です。これは国籍法の一部を改正する旨の規定であり、「認知された子の国籍の取得」に関する第3条に「前二項の規定は、認知について反対の事実があるときは、適用しない。」という第3項を加えるものとなっています。

 まだ続きます。民法改正法案第4条は児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)の一部を改正する旨の規定であり、次のとおりとなっています。

 ①第14条の見出しを「親権の行使に関する配慮等」から「児童の人格の尊重等」に改める。

 ②「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治29年法律第89号)第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。」と定める第14条第1項を、「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と改める。

 ③第15条を「民法(明治29年法律第89号)に規定する親権の喪失の制度は、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護の観点からも、適切に運用されなければならない。」と改める。

 まだまだ続きます。民法改正法案第5条は人事訴訟法の一部を改正する旨の規定です。次のとおりとなっています。

 ①目次のうち第3章を「実親子関係訴訟の特例(第41条−第43条第45条)」、第4章を「養子縁組関係訴訟の特例(第44条第46条)」と改める。

 ②第27条第2項を「離婚、嫡出否認(父を被告とする場合を除く。)又は離縁を目的とする人事訴訟の係属中に被告が死亡した場合には、当該人事訴訟は、前条第2項の規定にかかわらず、当然に終了する。」と改める。

 ③第41条第1項を「夫が父が子の出生前に死亡したとき又は民法第777条(第一号に係る部分に限る。)若しくは第七百七十八条(第一号に係る部分に限る。)に定める期間内に嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他夫その他父の三親等内の血族は、父の死亡の日から一年以内に限り、嫡出否認の訴えを提起することができる。この場合においては、夫の死亡の日から1年以内にその訴えを提起しなければならない。」と改める。

 ②第41条第2項を「が嫡出否認の訴えを提起した後に死亡した場合には、前項の規定により嫡出否認の訴えを提起することができる者は、の死亡の日から6月以内に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第124条第1項後段の規定は、適用しない。」と改める。

 ③第41条に「民法第774条第4項に規定する前夫は、同法第775条第1項(第4号に係る部分に限る。)の規定により嫡出否認の訴えを提起する場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に、当該前夫との婚姻の解消又は取消しの後に母と婚姻していた者(父を除く。)がいるときは、その嫡出否認の訴えに併合してそれらの者を被告とする嫡出否認の訴えを提起しなければならない。」という第3項を加える。

 ④第41条に「前項の規定により併合して提起された嫡出否認の訴えの弁論及び裁判は、それぞれ分離しないでしなければならない。」という第4項を加える。

 ⑤現行の第44条を第46条に移す。

 ⑥現行の第43条を第45条に移し、その第1項を「子、母、母の配偶者又はその前配偶者前婚の配偶者又はその後婚の配偶者は、民法第773条の規定により父を定めることを目的とする訴えを提起することができる。」に改める。

 ⑦第45条(現行の第43条)第2項第1号を「子又は母 母の配偶者及びその前配偶者前婚の配偶者及びその後婚の配偶者(その一方が死亡した後は、他の一方)」に改める。

 ⑧第45条(現行の第43条)第2項第2号を「母の配偶者 母の前配偶者」から「母の前婚の配偶者 母の後婚の配偶者」に改める。

 ⑨第45条(現行の第43条)第2項第3号を「母の前配偶者 母の配偶者」から「母の後婚の配偶者 母の前婚の配偶者」に改める。

 ⑩現行の第42条を第44条とする。

 ⑪新たに第42条を追加する。この規定の見出しは「嫡出否認の判決の通知」であり、条文は「裁判所は、民法第772条第3項の規定により父が定められる子について嫡出否認の判決が確定したときは、同法第774条第4項に規定する前夫(訴訟記録上その氏名及び住所又は居所が判明しているものに限る。)に対し、当該判決の内容を通知するものとする。」というものです。

 ⑫新たに第43条を追加する。この規定は、次のとおりとなっています。

 見出し:「認知の無効の訴えの当事者等

 第1項:「第41条第1項及び第2項の規定は、民法第786条に規定する認知の無効の訴えについて準用する。この場合において、第41条第1項及び第2項中『父』とあるのは『認知をした者』と、同条第1項中『第777条(第1号に係る部分に限る。)若しくは第778条(第1号』とあるのは『第786条第1項(第2号』と読み替えるものとする。

 第2項:「子が民法第786条第1項(第1号に係る部分に限る。)に定める期間内に認知の無効の訴えを提起しないで死亡したときは、子の直系卑属又はその法定代理人は、認知の無効の訴えを提起することができる。この場合においては、子の死亡の日から1年以内にその訴えを提起しなければならない。

 第3項:「子が民法第786条第1項(第1号に係る部分に限る。)に定める期間内に認知の無効の訴えを提起した後に死亡した場合には、前項の規定により認知の無効の訴えを提起することができる者は、子の死亡の日から6月以内に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第124条第1項後段の規定は、適用しない。

 さらに続きます。民法改正法案第6条は家事事件手続法の一部を改正する旨の規定です。次のとおりとなっています。

 ①目次のうち第3編第2章を「合意に相当する審判(第277条−第283条第283条の3)」に改める。

 ②第159条第2項を「第118条の規定は、嫡出否認の訴えの特別代理人の選任の審判事件における父及び民法第774条第4項に規定する前夫について準用する。」に改める。

 ③第283条を「が嫡出否認についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者その他三親等内の血族がの死亡の日から一年以内に嫡出否認の訴えを提起したときは、がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。」と改める。

 ④新たに第283条の2を追加する。この規定の見出しは「嫡出否認の審判の通知」であり、条文は「家庭裁判所は、民法第772条第3項の規定により父が定められる子の嫡出否認についての合意に相当する審判が確定したときは、同法第774条第4項に規定する前夫(事件の記録上その氏名及び住所又は居所が判明しているものに限る。)に対し、当該合意に相当する審判の内容を通知するものとする。」というものです。

 ⑤新たに第283条の3を追加する。この規定の見出しは「認知の無効についての調停の申立ての特則」であり、条文は次のとおりとなっています。

 第1項:「認知をした者が認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者その他認知をした者の三親等内の血族が認知をした者の死亡の日から1年以内に認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えを提起したときは、認知をした者がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。

 第2項:「子が認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、子の直系卑属又はその法定代理人が子の死亡の日から1年以内に認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えを提起したときは、子がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。

 ⑥別表第一の59の項における第775条を第775条第2項に改める。

 そして、民法改正法案第7条は「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」の一部を改正する旨の規定です。次のとおりとなっています。

 ①第10条の見出しを「他人の精子を用いる生殖補助医療に同意をした夫による嫡出の否認の禁止より出生した子についての嫡出否認の特則」に改める。

 ②第10条を「妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫は夫、子又は妻は民法第774条第774条第1項及び第3項の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない。」

 以上が民法改正法案の本則です。附則は、施行期日を定める第1条のみを紹介しておきましょう。次のとおりです。

 「この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第1条中民法第822条を削り、同法第821条を同法第822条とし、同法第820条の次に一条を加える改正規定並びに第2条及び第4条の規定は、公布の日から施行する。」


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1 コメント

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12月10日に法律として成立しました (川崎高津公法研究所長)
2022-12-11 16:32:05
民法等の一部を改正する法律案は、2022年12月10日(土曜日)、参議院本会議において可決され、成立しました。
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