ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

租税特別措置の見直しが進まない理由は

2022年12月08日 00時00分00秒 | 国際・政治

 租税特別措置は、主に政策的理由により、所得税法、法人税法などに規定される原則を修正するものです。租税負担を加重するものもありますが、多くの場合には租税負担の軽減、さらに非課税のためのものとなっています。特定の業種、階層のみを対象にすることも少なくないことから租税負担の不公平を招来するものでもありますし、何よりも税制が複雑化します。租税法の規定が難解であると言われますが、原則を定める規定で難解なものは少ないので、特別措置を盛り込むことが原因である場合が多いでしょう。租税特別措置法の諸規定が代表で、とにかく一文が長く、何処の部分と何処の部分が文章的につながるのかを見失ったりします。その上、適用要件が厳格に定められたりするので、何処まで続くのかわからないような文章になったりするのです。一文を短くし、段落を多くする、つまり項を多くするほうがわかりやすくなるはずなのです。

 このようなことを書いたのは、朝日新聞2022年12月7日付朝刊7面13版Sに「租特 進まぬ見直し 政府・与党 50項目超延長へ」という記事が掲載されたからです(租特は租税特別措置のことです)。

 「政府・与党は6日、2022年度に期限切れを迎える50項目以上の租特を延長する方針を固めた。防衛費増額などで新たな財源確保が急務となる中、租特にメスを入れられるか注目されたが、減税に見合った効果があるのか十分に検証しないまま延長を繰り返すことが常態化している。」

 まさにその通りです。これまで何度となく租税特別措置の見直し、整理統合が言われてきましたが、あまり進んでいません。例年、11月下旬から12月上旬まで、自由民主党税制調査会が開かれており、今年も同様のようで、12月6日にも会合が開かれました。その場において、およそ60あるという国税関係の租税特別措置のうち、50超は延長が認められたとのことです。およそ60というのは「業界の意をくむ議員らから延長要望があった」ものであり、おそらくは各省の意向も含まれているでしょう(毎年、各省から税制に関する多くの要望がなされます)。

 おそらく、財務省は租税特別措置の整理統合を真剣に考えているでしょう。何せ、「財務省の試算では、租特による減税がなければ得るはずだった税収は少なくとも年8兆円。税収全体の1割を超える規模だ」という訳ですから。しかも、租税特別措置の効果が十分に検証されていないのです。上記朝日新聞記事にも書かれているように、租税特別措置は「隠れ補助金」とも言われていますし、税制を利用したバラマキと表現することも可能です。

 先程、「租税特別措置の効果が十分に検証されていない」と記しました。実は、検証されていない訳ではありません。上記朝日新聞記事には「総務省は毎年、各省庁が延長を要望する租特の一部について、効果が客観的に分析されているかどうかを点検する。『達成目標』や『過去の効果』など8項目について、A~Eの5段階で評価する。今年は43件が点検対象となり、11月に結果を公表した」とあります。評価の結果は、というと、「全項目がAだったのは2件のみ。中小企業の法人税率の租特は定量的に説明されていないとして、『達成目標』と『将来の効果』がD判定だった。DX投資の租特は8項目のうち7項目がC判定。データの算出根拠が不足していると指摘された」とのことでした。

 それでも租税特別措置は延長されたり、新たに設けられたりします。経済の活性化などが大義名分とされるのですが、どれだけのものが有意義であるのでしょうか。

 ともあれ、今月中に、まず与党の税制改正大綱が公表され、続いて政府の税制改正大綱が発表されます。


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