ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

大分空港から大分市までのホーバークラフト復活? 疑問しか湧かない

2022年11月10日 00時00分00秒 | 社会・経済

 私は1997年4月から2004年3月まで大分大学教育(福祉科)学部に勤めていました。そのため、川崎市に帰る時などには、国東半島の東端といってよい部分にある大分空港を利用していましたが、ホーバークラフトを利用したことは一度もありません。

 理由は、大分市内のアクセスにありました。当時、大分市内のホーバークラフトの発着地は、大分駅周辺から大分交通バスの5号地行きに乗らなければならなかったのです。今でもGoogleで検索をかけると、旧ホーバー基地を地図で見ることができます。大分川の河口付近、西新地と言われる場所です。中島あたりに住んでいたならばバスとホーバークラフトの乗り継ぎも考えました。しかし、敷戸周辺、あるいは大分大学旦野原キャンパスからであれば、ともあれ大分駅にて、5号地行きのバスに乗り換えて終点付近で降りてホーバークラフトに乗り換えなければならなかったのです。運賃がどの程度であったか忘れてしまいましたが、大分駅に出るならば大分交通の大分空港行きバスを利用するほうが安上がりですし、乗り換えの手間も少しは省けます。また、ホーバークラフトは別府湾を航行するため、悪天候であれば運休しました。それならバスのほうがよい訳です。何なら、うちか大学から車を運転して向かうほうが速いという訳です。

 実際に、1971年に航行を開始したホーバークラフトは、大分空港道路の整備などの影響を受けて利用客を減らし、2009年に廃止されました。そればかりか、運行会社である大分ホーバーフェリーも大分地方裁判所に民事再生手続の開始を申し立てるに至ります。

 しかし、2018年以降、ホーバークラフトの復活が検討され始めました。大分空港から大分市までは、大分空港道路を利用するとしてもバスで1時間以上はかかります(約1時間と書かれている記事などもありますが、状況によっては1時間半ほどかかるとみこむほうがよいでしょう)。ホーバークラフトなら別府湾を横断する形になるので30分ほどでよいというのです。

 そして、2020年には上下分離方式により、ホーバークラフトが復活するという案が、大分県などにより採用されました。詳しい経緯がわからないのですが、COVID-19の影響などはどの程度見込まれたのでしょうか。また、それ以前から、大分空港のアクセスが悪いことから、たしか利用客の減少などが見受けられたはずです。どういう検証が行われたのか、知りたいところです。

 また、2022年10月には大分市側のターミナルの起工式が行われました。5号地付近ではなく、西大分駅周辺であるとのことです。大分交通バスですと生石(いくし)、かんたんと言われる所でしょうか。ここなら、たしかに駅から近いですし、5号地よりは利便性が高いでしょう。西大分駅は普通列車しか停まらない駅ですが、大分駅は下り列車に乗れば隣にあり、別府駅は上り列車に乗れば二つ目です。何よりも、大分空港行きのバスも生石に停まりますし、大分駅方面、または別府北浜方面に行けます。

 とは言え、一度廃止した事業が復活するということは、そう簡単な話ではありません。再び大赤字になる可能性も否定はできないのです。まして、上下分離方式ということは、ホーバークラフトの運行という「上」の部分こそ民間会社が担当するとしても「下」、つまりホーバークラフトの所有などは大分県が行うという訳です。採算などが気になるところです。しかも、円安の影響もあって事業費は高くなっており、当初は大分県の負担額が80億円前後と言われていたのが90億円を超えるようになりました。もっとも、こういう場合の地方公共団体の事業費は、円安もCOVID-19も関係なく、当初の見積もりよりも高くなるものです。それに見合うだけの経済効果が本当にあるのか、非常に気になります。


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