ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

長津田厚生総合病院が閉院へ

2023年12月22日 01時45分00秒 | 社会・経済

 最初に。横浜市は緑区の長津田は「ながつた」と読みます。「ながつだ」ではないので御注意を。横浜市の北部では、他に高田(たかた)、山田(やまた)の例があります。

 本題に移ります。

 昨日(2023年12月21日)の夜、TVK(テレビ神奈川)や神奈川新聞で報道されていたのが目に付きました。

 東急田園都市線・JR東日本横浜線・横浜高速鉄道こどもの国線の長津田駅から北のほうに歩くと、長津田厚生総合病院があります。こどもの国線に乗ると、長津田駅を発車してすぐに右にカーブし、恩田川の手前、右側に長津田厚生総合病院が見えます。私は、祖母の見舞いのためにこの病院に行ったことがあります。

 閉院の理由が、実に情けないものでした。

 2014年10月から3年間、診療報酬の不正請求があったのでした。実に6605件、1億8000万円です。私は医療関係に詳しくも何ともないので、業界事情や背景などを知る由もありませんが、複数の匿名による情報提供があり、厚生労働省関東信越厚生局による監査の結果、看護師の人数の水増しなどがあったことがわかったそうです。今から9年前より続けられてきた訳で、行政のほうで見破れなかったのかとは思いました。

 ともあれ、不正請求が発覚したため、関東信越厚生局は長津田厚生総合病院に対する保険医療機関(TVKのサイトではTVKのサイトでは「保健医療機関」と書かれていますが、誤字です)の指定を2024年3月1日付で「取り消す」、行政法学者としての表現を使えば撤回することとなりました。

 長津田厚生総合病院のサイトには、2023年12月21日付で「長津田厚生総合病院 閉院のお知らせ」という記事が掲載されています。「一般社団法人日本厚生団 長津田厚生総合病院」の院長名によるものですが、一読して違和感を覚えました。

 まず、この記事には「一般社団法人日本厚生団 長津田厚生総合病院は、関東信越厚生局による監査の結果、平成26年10月から平成29年6月の間に診療報酬の基本診療料(一般病棟入院基本料10対1)に不正な請求が行われていたこと等が判明し、令和6年3月1日に保険医療機関の取消処分を受けることとなったため、令和6年2月29日をもって保険診療が停止となり、令和6年3月31日に閉院することとなりました」と書かれています。

 当事者のはずですが、第三者的な視点で書かれています。どこか他人事という感じがします。

 保険診療が行われるのは2024年2月29日までであり、2024年3月1日から同月31日までは「健康保険を使った診療ができませんので休診といたします。他院への紹介状は作成いたしますのでお問い合わせ下さい」。閉院にも準備が必要でしょうから、この点はよいとします。

 私が最も違和感を覚えたのは「不正請求の要因としては、病院のコンプライアンス及びガバナンスの問題と思われます」という文です。この一文だけで一段落が構成されています。「当事者だろ!」という突っ込みが入ってもおかしくありません。ここで長々と詳細を書く必要もありません。また、2014年から2017年までの間の出来事なので、院長など人事に変化があったことは理解できます。それでも「病院のコンプライアンス及びガバナンスの問題と思われます」で終わらせるのはどうなのでしょうか。

 ちなみに、記事には「平成29年7月以降は、法令を順守し運営しておりました」と書かれています。そうであるならば、2017年6月までの出来事などについて内部での検証は行われたのでしょうか。

 閉院となれば、最も影響を受けるのは入院患者でしょう。長津田厚生総合病院は「令和6年4月1日以降の診療につきましては、新たな医療機関にて現在の場所で診療を継続できるようお願いしております。診療科目は、内科外来・眼科外来・泌尿器科外来・人工透析・健診センターです。入院診療は行いません」と表明しているので、入院患者は別の病院に転院しなければならないということになります。

 入院患者ほどではないとしても、通院患者も大きな影響を受けます。「新たな医療機関」による診療科目は、現在の長津田厚生総合病院における診療科目よりも少なくなるようですし、長津田厚生総合病院から「新たな医療機関」に移行するとなれば、医師や看護師といったスタッフの異動もありえます。

 「叩けば埃が出る」ではないですが、診療報酬の不正請求は、実のところ少なからぬ医療施設で行われている可能性が低くないでしょう。それだけに、結局は患者が不利益を被ることになる訳でして、もう少し早くわからなかったのかという疑問は拭えません。


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