ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

決算剰余金についての素朴な疑問

2023年04月10日 00時00分00秒 | 国際・政治

 2021年度第1次補正予算以降、決算剰余金が増えているようです。地方交付税法の改正を追っているうちにわかったことで、地方交付税の総額も増やされていたのです。2022年度第2次補正予算でも同様でした。

 地方交付税の総額が増やされること自体はよいのです。しかし、問題がないとは言えないでしょう。原因の一つが、COVID-19を機に大幅に増やされた、もはや予備費とは言い難いほどに巨大な予備費です。「何なら歳出予算の全てを予備費にすればよい」という悪い冗談もあるようです。つまり、ここ数年の予備費が異常であったということ以外の何物でもありません。

 このようなことを記したのは、共同通信社2023年4月8日17時32分付の「決算剰余金拡大、増税延期を検討 防衛費増額財源で自民、財務難色」(https://www.47news.jp/politics/9170628.html)という記事を読んだからです。

 今回、防衛費増額の是非については記しません。ただ、防衛費を増額するというのであれば、財源を見つけなければなりません。そこで有力な候補となったのが決算剰余金です。

 勿論、決算剰余金は一時的なものです。歳入予算よりも税収が多かったというのはあくまでも結果の話ですし、予備費の不用額が多かったのも使途、または予算の決め方自体に問題があったということなのです。決算剰余金に頼るのは、到底、まともな予算論議と言えないのですが、とりあえずは1年度か2年度に限定した話ということなのでしょう。

 記事によれば、「自民党内で防衛費増額の財源を巡り、予算の使い残しや税収の上振れなどで生じる決算剰余金の活用を拡大し、増税の延期を目指す案が検討されている」とのことで、「焦点は新型コロナウイルス対策で膨らんだ2022年度の予備費で余った『不用額』」であるということです。防衛費を増額するためには、2027年度以降に4兆円程度の追加財源が必要なのですが、その追加財源のうち、3兆円ほどを「決算剰余金の活用や歳出改革」によって捻出し、1兆円ほどを増税によって賄う、というのが政府の方針であるようです。

 正直なところ、決算剰余金を当てにするのはどうなのかと思います。表現が悪いかも知れませんが税収は水物であり、2023年度歳入予算のとおりの税収が実際に入るかどうかはわかりません。当然、2022年度決算の結果にも注意しなければなりません。つまり、決算剰余金を活用できるかどうか、できるとすればどの程度であるのかはわからないのです。

 また、決算剰余金の使途についても議論がないはずがありません。地方交付税の増額も考えられますし、国債償還に充てることも考えられます。防衛費を増額するというのに財政赤字を放置するのでは意味がないでしょう。ドイツ租税法学の父と言われるアルベルト・ヘンゼルが、第一次世界大戦でのドイツの敗戦およびその後の混乱について、増税を行わず借款を続けたことが元凶である(少なくともその一つである)旨を指摘していたことを思い出しました。

 さらに記すならば、歳出改革とは具体的に何をすることなのでしょうか。一つとして、日本お得意の悪習である中抜きを、国や地方公共団体の事業委託から排除することが必要であるはずですが、おそらくそうはならないので、社会保障、医療などに関する支出が削減される可能性が高いと思われます。いかなる分野が煽りを食うのかということもありますが、支出の仕方そのものが問われざるをえません。いや、歳出改革云々というのであれば、或る程度の具体像は既に存在するのではないかと考えられるのですが、まさかこれから、それこそ経済財政諮問会議で議論し、骨太の方針2023を待て、ということなのでしょうか。

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