ルノーと日産の話、あるいはゴーンさんの話は一体何がしたいのかまだ見えない。あまり深刻に興味を持っても見ていないのだが、ちょっと面白い記事を見つけたのでメモ。
1月16日付けのものなのでちょっと古くなったが、このテレビ東京の記事というか番組は、興味深いのにあまり広がってない感じ。
独自 ルノーが日産に送った書簡を入手
https://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_169849
ルノーが先ほど代理人を通じて日産に送った書簡を、テレビ東京が独自に入手しました。日産の内部調査に対する強い批判が10ページにわたって綴られています。関係者は「これで日産とルノーの戦争が始まる」としています。書簡のタイトルは「日産の内部調査について」です。主な内容は、
(1)日産がルノーの許可なくルノーの従業員に直接接触したこと、日産の幹部が東京地検特捜部と連携しているように装ったこと、ルノーの従業員を日本の特捜部に協力させるために交通費や宿泊費を負担すると提案したことなどを独自に集めた証拠として挙げて、倫理的な問題であり非常に残念に思っている
(2)日産が日本の法律についてルノーの従業員に意図的に間違った説明をした
(3)ルノーの従業員に対し、国際法に基づかない聞き取りをしたことがフランスの法律に抵触する可能性があるなどで、10ページにわたって日産の内部調査の手法を批判しています。
だそうだ。
日産の幹部が東京地検特捜部と連携しているように装って、ルノーの従業員を日本の特捜部に協力させようとした、ってことは、日産側はいずれかの時点から特捜と一緒になって動き、提携先には内緒にして嵌めてました、みたいな話。
これってつまり、日産とルノーを離婚させたい人がいるということなのだろうか? そして日産もそれに乗ってる。あるいは日産の一部かもしれないわけだが。
どうなるのか知りませんが、何か、日産の方が危なくなるコースに行ってる気がしてしようがない。
だってそもそも、日産は国策会社的な趣があって、その上で経営がまずかったから2兆円もの有利子負債をかかえてのっぴきならない状況になりました、という会社だったわけでしょ?
そこにルノーという小さいといえば小さいんだが、別に劣った会社というわけでもなく、むしろ経営のできる人たちがいるというべき会社が資本を投入して日産を救った。救ったという言い方が嫌だと感じる人がいるんだろうが、当時の認識としてはそれ。だって日本の銀行が誰も日産をすくってくれなかったんだから。ルノーは日産が商売になるとみて投資したという事実を今になって、食い物にしてる~とかいう人たちは資本主義をなんだと思っているんだろう。
そこでルノーと日産が離婚して、日産の下についてる三菱との3者のアライアンスが破壊されるようなことになるとどうなるのか。今のところ3者ともその意思はないと言っている。そらそうでしょう、基本的にうまく行ってんだから。
日産 三菱 ルノー 3社のトップ協議で提携維持を確認
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181129/k10011728401000.html
でも揉めて砕けていったら?
ルノーにとっても日産にとってもマイナスではなかろうか。特に、日産はマネジメントの才をいつからゲットしたわけ? 国策に振り回されてる感じが濃厚なわけですが。
で、誰が得をするのか? 一つ考えられるのは、先にいって、日産を買い取りたい、投資先にしたいといった人たち、か?
■ ゴーンと経営統合
そもそも、なぜゴーンなんだろう、何か別の含みなんじゃないかと私は思っていたし、今も思ってる。
それはそれとして、他方で、日産がフランス政府が大株主であるルノーとの経営統合をイヤがってゴーンを追放したのだ、フランスなにするものぞ、みたいな話もわかるようでわからない。
この説が正しいとしたら、ゴーンがどうしようもなくルノーとの経営統合派である、という前提がないとならないんだが、これって現在までで証明されているの?
そもそも、こんな感じらしいんだが。
ルノーと日産 仏政府“経営統合”に西川社長「聞いていない」/nhk
2019年1月21日 11時20分ゴーン前会長 逮捕
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190121/k10011785051000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_011
もし、日産がルノーとの経営統合を拒もうとしているのなら、むしろゴーンは持っておきたいカードではあるまいか。なぜなら、ゴーンはそれ自体で強力だから。
日産のためにならないので経営統合はしないと日産の取締役会が判断してゴーンが指揮を執る場合、フランス政府が出張ってきても、西川レベルより戦闘能力あるでしょう、ずっと。
そして、いいやところがゴーンは統合派なんだ、というのならそれこそ会社の取締役会で追い出すとか、できそうもないなら策を弄してクーデターまがいのことをするとか、企業内で別に珍しくはないことをすればいいだけではなかろうか。
別にお上の手を借りないとできないって話でもないでしょう。
と考えてくると、ルノーとの経営統合を嫌がった日産がお上の助けを借りて、朝日新聞にステージングさせてゴーンを追い出し、牢屋にぶち込んでもてあそぶという説は説得力がないと思う。
■ ルノーなのかゴーンなのかアライアンスなのか
この問題はしかし、東京地検特捜部の標的がルノーなのかゴーンなのかわからないところはある。ゴーンさんに対する処置をみると、まぁ虐めてるなといったところだが、これをゴーンにぶつけないでルノーに持って行くとしたら、ターゲットはゴーンではなかったということか。
で、ルノーは、日産も傘下に収めているけど、ロシアのアフトヴァースも傘下。日産やらトヨタ、ホンダを持つ日本から見たら鼻もひっかけられない話だから日本ではほとんど話題にならないのだが、しかし、ロシア市場は伸びしろがあるし、ロシアで作ってロシア周辺の兄弟地域のみならず、近隣というか延長というか同じ地面の上というかの市場に出すこともできる。
誰しもそう思うからなのだろうが、最初アメリカのGMが合弁を起こしたが、間に金融危機もあってうまく行かず、その後、Fiatも入りたがっていたように見えるが、最終的にルノー・日産・三菱アライアンスが経営権を持ったスキームが出来上がった。スキームではこのアライアンスが完全に上にあるように見えるので、ビジネスから見たときこの構造を崩すのはもったいないのではないだろうか。
しかし、ビジネスからではないセンスで見た時には、ルノーグループをロシアに入れておきたくないと考える人たちがいても不思議ではないでしょう。現在の状況からすれば。
ついでにいえば、ルノーは19世紀末に出来た会社で、この会社初の外国操業はサンクトペテルブルグ。つまりロシア帝国。同時期に、シベリア鉄道を開発に大きな資本を出したのはフランス資本であることが知られている通り、1917年の革命前にロシアに大きくえくぽージャーがあったのはフランス。だから革命騒ぎでロシア債権がパーになってフランスの中産階級が痛手を被ったりもしている。
といった過去がどれぐらい関係しているかはまったく定かではないが、ちょっと小耳にはさんでおくぐらいはしてもいいと思うな。なぜなら人のコネクションというのは世代を超えている場合もあるから(大きな資本家さんたちは家単位で動くでしょ)。
そしてそこにゴーンという、それ自体として怪しいまでに強力なおっさんがいる。マロン派人脈、レバノン人脈、そしてジェズイットの学校を出てることも人脈でしょう。
事実、2017年にはグローバリスト日経は、
ゴーンのグローバルコネクションのネットワークが、日産・ルノーのゴール達成に役立ったと書いている。あははは。
Ghosn's network of global connections has helped Nissan-Renault reach its goals
どうなるのかわかりませんが、これも一つの世界動乱の一環なんでしょう。