昨日のRTのCrossTalkに、ピーター・カズニックが出ていた。
CrossTalk: Exceptionalism’s Wars
https://www.youtube.com/watch?v=v5nY8vzE8BQ
ピーター・カズニックは、オリバー・ストーンと共にThe Untold History of the United Statesを作った歴史学者。
この日本語版がこれ。
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折しも、昨日はバーニー・サンダースがまだ大統領選挙のキャンペーンを降りないと踏ん張っていた。カリフォルニアでの映像だったけどいつものようにバーニーの支援者の熱狂ぶりは凄い。
一方で、報道ではヒラリーで決まりだという記事が世界中に出回っていた。歴史的だ、とか書いていた。何が歴史的なのだろう? 女性だから? 白人でない、男性でないと来たので今後はヒスパニックだ、チャイニーズだ、とかでずっと「初」&「歴史的」ブームで行くんだろうか。馬鹿げてる。
で、ヒラリー当確というのは、現状のスーパー代議員の様子からしてほぼ正しいであろう、という段階なので、実際には、本当に彼らが投票するまでは勝敗は決定していない。それを、決まった、決まったと騒ぐというのは他に意図があるからでしょう。
多分、バーニーにもう降りろと言わせたかったのではないのだろうか、という推測が出回ってるけど私もそうだろうなと思った。
つまり、バーニーがキャンペーン期間中最後まで走ると、一般得票における投票とスーパー代議員によるそれとの差が一目瞭然になってしまって、勝利はヒラリーだとしても、「みんな」が望んだのは彼女じゃない、ってのがまる分かりになる。これが嫌なんじゃないですかね、ヒラリー支持派は。
だからバーニーをこのへんで下して、ヒラリーと握手させて、バーニーなんてのは突発事象に過ぎないってことで無視して、本腰入れてトランプをやっつけようみたいな方向に持っていきたい人たちがいる、と。
このへんは、欧州でやたらに国民投票をさせるが、しかし、それが決しても法的拘束力はありません、で振り切ろうとするのと似てるかも。巨大なガス抜きをさせるが、実際には何も変えないという構えか。
■ 「正史」じゃないアメリカ
と、カズニックに戻ると、バーニー現象、トランプ現象とThe Untold History of the United States を直接につなげる鍵も糸もどこにも存在しないのだが、しかし、やっぱり水流としては影響があるんじゃないかなと私は思う。オリバー・ストーンらがやったことは、刷り込まれた「正史」じゃない視点を持ってアメリカを見てみましょう運動みたいなもので、見てみたら、俺らはこのままで良い訳がないとなった人が大勢いたという話。
(もちろんストーンだけの貢献ではない。ロン・ポール、ミアシャイマー、ウォルツ、etc.のこの間の地道な活動がある)
アメリカだけが正しく、アメリカだけが例外的に優れて、アメリカだけが世界を差配してOKみたいなある種の思い込みを離れて、事実何をやってきたか見てみろよ、と「正史」作成に使用しない事実の系統を出してきたのがこれらの「もうひとつのアメリカ史」。この日本語のタイトルは、untold history (語られなかった歴史)という原題とは意味が違うんだけど、でも内容を伝えるタイトルだと思う。
別の言い方をすれば、自分たちはちゃんとした正しい共和国の歴史を持つ大国だと思ってるんだけど、現実は諸国民に圧制を強いる「帝国」だろ、という切り分け方をしたとも言える。
で、この「帝国」だろ、というのがアメリカにおいてはほめ言葉ではなかったし今もない、というところが実はアメリカ史を開く上で重要なファクターのような気もする。
■ イギリス嫌いのアメリカ
一般的にアメリカはイギリスと仲がいいと考えている人が世の中多いような気もするけど、実のところアメリカ人が歴史的に警戒しまくってきたのはイギリス帝国でしょう。
18世紀に独立されちゃったイギリスは、19世紀中もアメリカを解体させよう、まとまらないようにしようという取り組んでいた。ホワイトハウスは焼かれたわけだし。南北戦争もその延長だと考える人もいますね。中央銀行がなかなかできないというのも同じ水脈。
で、ぶっちゃけなぜ中央銀行がなかなかできなかったのかといえば、これが支配の道具だと知っていた人たちがたくさんいたってことでしょう。が、そこから幾多の争いの後、結局のところアメリカはイギリス帝国と同じ轍を踏むどころか、アングロ・(シオニスト)・アメリカ帝国になっちゃいましたというのが現状。
分水嶺がどこにあったのかといえば、ルーズベルト大統領のあたりでしょうかね。
カズニック、ストーンも共に、ルーズベルトの後ヘンリー・ウォレスが大統領になっていれば、世界は変わったと考えている一派だと思う。というかそう。
つまり、1945年4月にルーズベルトが亡くなったんだけど、ルーズベルトの副大統領はヘンリー・ウォレスだったので順当にいけば彼が大統領に就くはずだった。が、その1年ぐらい前にトルーマンが副大統領に押し込まれていたのでトルーマンが大統領になった、と。これでルールベルトの理念が切れて、偉大なる庶民の時代だとか言っていた時代は終わり、秘密協議だの後ろからいろんなことする系統(つまり英)にアメリカは戻されてちゃった、というセオリー。
ケネディー暗殺に拘ってる人たち(そりゃ拘るのが当然だけど)はだいたいこの派の信奉者が多いのではないかと思う。
■ 風味だけFDRのオバマ&サンダース
と、こうやって考えてくると、現在のアメリカは、冷戦期に被った被り物が脱げかけているのだろう。きっかけは何かといえば、それはやっぱり2008年の金融パニックでしょう。結局、こういう奴らが俺らを仕切ってきたんだというのが目に見えてしまった、と。
あの状況は金融危機を超えて、危機が社会的だった。特に次から次から出てくるインチキな金融商品とそれにもかかわらず大きいから潰せないだのなんだのと公的資金投入が行われるというその有様に人々は本当にうんざりしていた。しかも、その一方ではアフガン、イラクでの戦争が続き先の見通しが立たない。
で、オバマを選んでチェンジを選択したつもりが、オバマは全然そんな方向にはいかなかった。オバマは危機に瀕したアメリカをまとめるFDR風味で売りだそうとした偽もののカニカマみたいな感じ? 口だけFDRみたいな。
サンダースはFDRを盛んに引き合いに出していたけど、どうなんでしょう・・・。いや、彼は本気なのだと言う人も多いだろうけど、私はちょっと懐疑的。FDRが凄かったのは(良くも悪くも)、国内だけでなく外交方針ごと、つまり身体ごとアメリカはお前ら金融+軍事の植民地主義者とは違うんだぜと大宣言したことでしょう。(スエズ危機あたりまでその趣旨は続いていたと思う。)
サンダースは、ほとんど外交に触れないし、トランプ敵視を売りにしている点で話しがちーせーよ、というのが私の判断。
トランプはバランス・オブ・パワー的な発想の方なので、根本的にこっちの派とは違う。親イギリスではあるけど、あのイギリス、帝国経営的イギリスと仲良しかというとそれも違うような。
どっちに行くのかわからないけど、いずれにしても、冷戦期に被った被り物がずれてきて禿げ頭が見えてるのにまだ被ろうとしておかしなことになってる的なのが現在のアメリカだと思う。もういっそのこと脱げよ、と私はいいたい(笑)
■ オマケ
そういえば、日本では最近ルーズベルトといえば反日という話がまずきちゃうという状況にあるけど、これも反イギリス帝国主義との観点から考えると謎が解けるのではなかろうか?
つまり、日本をイギリス+ユダヤ金融資本主導帝国の言うことを聞いてる何者か、と思ってみていたのでは? これこれこの視線。
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オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史2 ケネディと世界存亡の危機 |
オリバー ストーン,ピーター カズニック,熊谷 玲美,小坂 恵理,関根 光宏,田沢 恭子,桃井 緑美子 | |
早川書房 |
だけど、日本の中では英と米の影響とその大きさを巡って、ちゃんと意見が合ってなかったためにぐじゃぐじゃになっていったってのはあるとは思います。
トランプ候補者が今迄のアメリカを叩き潰し、新しいアメリカを作って行って欲しいな~。吉と出るか、凶と出るか。一方英国はグダグダでもう。