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ダレス兄弟の半世紀

2018-06-04 22:57:49 | アジア情勢複雑怪奇

朝鮮とアメリカが対話を始める、というかもう対話しているわけだが、この状況において日本の政府は、何をしているのだろうと日本国民なら誰しもなんだかなぁと思っているわけだが、多分、これは言わないで、これは秘密にしてね、というねじ込みをしているのではないかと想像する。

だって、こうなんですもの。

JFKの話をしている場合でもない日本の情報開示拒否

2017-10-27 23:29:07 
 
 
日本はアメリカが公文書を公開する時期だからさ、という時期になっても、公開しないでくださいと言っている立場。上のエントリーの中の記事をもう一度引き出すと、

外務省 核密約 米に非公開要請 87年、公文書で裏付け 「際限ない」米側不快感

2017年01月03日 17時09分

https://www.nishinippon.co.jp/feature/attention/article/303295/

 

で、日本側が非公開を求めたテーマを見やすいように引き出すと、

(1)「核兵器の持ち込み、貯蔵、配置ならびに在日米軍の配置と使用に関する事前協議についての秘密了解」

(2)「刑事裁判権」

(3)「ジラード事件」(57年、群馬県で在日米軍兵士が日本人主婦を射殺した事件)

(4)「北方領土問題」

(5)「安保改定を巡る全般的な討議」。

 

(5)を見てもわかる通り、なんつーかこの、安全保障まわりの話は何にも言わないでと言っているようなもの。

しかし、アメリカはインドネシアのやばいやばい事件まで出してきているわけだから、明らかに次の世代に向けて変革しようという意思はあるところにはあるんだと思うわけですよ。トランプ一人の話じゃなくて。

ケネディ氏暗殺の捜査資料、解除か延長か &インドネシア1965

 

そこで思うのは、冷戦初期のCIAの行動については実のところかなり明らかになっている@米

という状況。少なくとも積極的に開示されている。

例えば近年ではこの本が非常に有名。CIAのオフィシャルサイトにレビューが載ってるぐらい。

The Devil's Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America's Secret Government

The Devil’s Chessboard: Allen Dulles, the CIA, and the Rise of America’s Secret Government
David Talbot
William Collins

 

で、この本のサブタイトルにも挙げられているけど、アレン・ダレスという初代CIA長官の時代(1953年から1961年)に作った枠組みがその後のアメリカを規定していったところが絶大にある。

そしてアレン・ダレスはケネディー時代にその強硬姿勢を嫌われて首になる。そこからケネディー暗殺問題にもこの人はたびたび名前があがる。

 

ダレスというと、もう一人大物ジョン・フォスター・ダレスももちろん重要。アレンのお兄さん。弟と同時期に国務長官だった。アイゼンハワーの時代。

兄弟とも弁護士の肩書でベルサイユ会議の頃から外交の現場に出ているし、戦間期も万遍なくあちこちで活動している。

兄の方がはウォールストリートの弁護士としての役割から、というかそういう分担が既に出来ていたからなのか実際ドイツの賠償問題の支払いなんかにもかかわってる。おじいさんの頃から弁護士として金融界と著しい関係のある人という感じ。ウィルソン大統領の頃の外交官、石井・ランシング協定で有名なランシングは叔父さん。

というわけで、ここらへんにある種のサークルがあって、その人たちがアメリカの外交、戦争を司っていた。これらの人たちは近代行政的な官僚というよりなにかこう、家人っぽい。つまり上の方にマスターがいる人なんでしょうというところ。

どうしてそう考えるかというと、自分で考えて来た理念みたいなものがないから。方針を実行する、何かを動かすことに長けている。

 

で、このダレス兄が、日本との講和条約をアメリカの条件で作成して呑ませることに成功し、欧州ではNATOを作っていった人。ニュージーランド、オーストラリアの協定もある(本当は日本を含めてNATO化したかったという話だができなかった)。

さらに、アイゼンハワーと一緒にCIAを作って(弟が長官になって)、大仕事としてCIA、MI6協力のもとイランのモサデクを倒すクーデターを実行する。

東南アジアではSEATOを作る。などなどなど、もうお腹いっぱいというほどこの人の時代に、あるいはこの人が関係して今日に続くような仕組みが作られている。

 

■ 無理な工作

で、こんなことをふと書き出したのは、上の日本の不始末ぶりを鑑みてもその通りだが、このダレス兄弟あたりが(家人として)実行者となって作った仕組みが要するに行き詰まってるのが今なんだわな、と思うから。

この人たちが作ったのは、ユーラシア周辺部の繋ぎとめ機構なわけですよね、よーするに。

きっかけはソ連の影響力がユーラシアの東西で絶大になっていることに対する危機感だと思います。その次に中国で共産党が勝っちゃったこと。

だから本当は連合国の勝利の非常に大きな割合はソ連によるものだったというのに、知らん顔して、共産主義は敵だ論を展開して、あっちでもこっちでも工作していく。

どうして工作が必要だったかといえば、そこに無理があったから。各国の社会事情やどうやって人を食わせるかみたいな近代資本主義始まって以来の問題を全部ぶっちぎって、反共こそ大義みたいなことをするのはもともと無理があるから。だから工作が必要になる。

工作をするから秘密が必要になる。秘密が重なると、ばらせなくなる。

ばらさないようにしようとすれば、秘密を守れる奴らとしか組めない。すると前向きにとか将来を見据えてといったビジョンのある人々を排除し、距離を置かざるを得なくなる。

すると、才能の乏しい、またはろくでなししかリーダー候補にならない状況が作られる。

他方、才能の乏しい人たちは才能のある人たちに訴えるものはないから、自然必然、能力のない人たちにアピールするしかないという負のスパイラルが生まれる。

といったことが、ダレス兄弟が作った機構で万遍なく起きている。これがようするに the West の凋落だと思う。

ユーラシア側の安定と持久力の問題もあるし、ロシアのプーチンや中国の習近平を見ると人物がいる、というのも大きいが、それ以上に the West の自滅的要素も著しいと思う。

 

■ 負のスパイラルをまとめてみる

ちょっと負のスパイラルをめとめてみるに、上で書いたように秘密工作から来る負のスパイラルがある。

さらに暴力性から来る負のスパイラルもあると思う。

ひたすら反共を煽っていく過程で、各地で現地のマフィアやらやくざやらと組んで、世論を脅しつける手法が顕著に見えるので、ここが政府と癒着してしまっている可能性はかなり高い。これももちろん負のスパイラルを呼び込む。誰だってそんな怖いことしたくないもの。

朝鮮戦争も戦争に入る前の状況はまさしくこの暴力の跋扈が見られるし、上のインドネシアの話など、共産主義者と名がつけば道が川になるほど血を流してもOKみたいな、もう無残すぎて言葉もないようなものがいくつもある。これだけでも、まともな人が政治から離れる契機になる。

 

そしてもう一つ。全部の国ではないが、一部では、軍事力をアメリカに一任するシステムそのものがもたらした副作用も負のスパイラル要因だと思う。国民軍喪失による負のスパイラルと名付けよう。

つまり、この政権はどうしてもだめだとなった場合に国民は国民軍を便りにするというケースはしばしば見られるわけです。もちろん軍そのものがマフィア化している場合もあるが、やはり、君らは国民のためにあるのだという国軍のアイデンティティは強いものがあるから、ここが独立のための最後の担保になる可能性はヒストリカルに考えてもある。

が、ダレス兄の作った仕組みは、NATOにしても極東のNATO変形(日米、日韓、アンザス)にしても最終的にアメリカに一任するシステム。

しかも、それらの軍をアメリカが始める単なる侵略戦争に使うケースが多々ある。こうなると各国軍のアイデンティティがかなり曖昧になるのみならず、各国民にとっても、これって結局外国の傭兵やないかといった受け止めになっていく。この仕組みでは自立的な国民軍は育ちようがない。

(日本の場合はそもそも一度もフルスペックの国民軍を持ったことがないとも言う。前のは、各兵隊の気持ちをよそに結局は天皇の軍隊、または国民ではなく国体を守る軍ですので、国民軍と呼ぶのはまったく無理がある。最強の軍隊、若い兵隊を外地に置いて終戦するような国民軍などありませんとも言いたい。私はこの点にはこだわってる)

 

ということで、この負のスパイラルに恐れをなして、アメリカはトランプで浮上しようとしているんだろうと考えると、ちょっと笑いが出てしまう。残りの「同盟者」はヤクザと共に置いてきぼりかよ、みたいな。

 

いずれにしても、上であげたThe Devil's Chessboardぐらい邦訳が出てもいいと思うな。

 


 

 


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