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イスラエル・パレスチナ:偽善とリアリティー

2017-12-08 16:11:33 | アジア情勢複雑怪奇

トランプがエルサレムをイスラエルの首都と認めたというので、各方面から非難を浴びている。

パンドラの箱、開けたトランプ氏 エルサレム「首都」

http://www.asahi.com/articles/ASKD75FH2KD7UHBI026.html

だそうだ。

しかし、誰かが何か大きなことをしなければこの地の和平に進展はないというのも事実でしょう。

で、トランプの今回の行動に対して、ヨーロッパ勢が批判をしていたけど、あんたら自分で種を蒔いておいて、そして、実のところずっとイスラエルを支援する動きをし、したがってそれはパレスチナにとっては不利益になることをしてきて、今更何か中立っぽいことを言うってどうなのそれ、と思った。

緑がパレスチナを承認している国家。これを見ながら考えれば、欧州+日本は、イスラエルの支援者であるというしかないでしょう。

 

で、支援者が、イスラエルによるアラブ諸国の土地の占領をやめさせたかったら、過去何十年かの間にみんなでイスラエルを制裁するなり、しかりつけるなりして、首に縄をつけるしかなかったでしょう。しかし誰もやってない。メルケルでもメイでも、誰かネタニヤフの首に縄をつけてみろというところ。

それどころか、世界の先進国とかいう国々は、911からイラン攻撃、シリア、リビア、再びシリアを攻撃し続けた。最終的にはシリアを思い通りにできなかったから失敗作戦と言っていいわけだが、これが成功していたら、それはイスラエル右派にとって利益になった。混乱した中東をイスラエルにとって安泰の仕組みにしていこうという「レジームチェンジ」プランだから。

それを支援しておいて、今更、イスラエル・パレスチナの和平が壊れるもないだろうと思う。ついこの間まで、シリアのアサドを倒せとあんなに騒いでいたのは誰なのか。中東を混乱に陥れることに欣喜雀躍していたのは誰なのか。

(米国内は、福音派が本気でイスラエルの安泰に寄与すべきだと考えている人たちになって幾星霜なので、もはやこれを覆すことも難しいし、さりとてじゃあリベラルがネタニヤフに食ってかかれれるのか? オバマは8年かかって何もしていない。)

 

■ 動きの直接の帰結

さて、そんな中、トランプの今回の行動が示したのは、

  • アメリカは誠実で中立的な仲介者ではない

が確定したということ。といっても、もうずっとそうなんだが、公式にはあたかも和平推進を単独でできるかのように振る舞ってきた。しかしそれはもうない。そして、

  • イラン、シリア株は上昇し、サウジ、ヨルダンなどは信用において暴落した

ですかね。さらに、前者は、国民と支配者層の方向性が基本的にあってる。後者は、国民の大多数は、エルサレムを占拠するイスラエルはイスラムを冒涜していると思っているが、支配者層はアメリカとイスラエルと組んでいる、という捻じれがある。

 

■ ロシアが先に示唆した

今回の報道を見ていて非常に面白く思ったのは、主流メディアはトランプ叩きに忙しく、中東の、わけてもイスラエル問題にとって良くも悪くも非常に重要で、事件当事者たるイスラエルがほとんど真っ先にといっていいほど気にしまくっているロシアの動向にまったく気を払わないこと。

ロシアは今年2017年4月、

東エルサレムがパレスチナの首都となるのなら、ロシアは西エルサレムをイスラエルの首都と認めるだろう

と発言していた。

Russia will recognize W Jerusalem as Israel’s capital only if E Jerusalem becomes Palestine’s – FM
Published time: 6 Apr, 2017 22:53
Edited time: 7 Apr, 2017 09:55

https://www.rt.com/news/383777-israel-russia-capital-jerusalem/

 

そして、ついこの間書いた通り、パレスチナ連帯の日のプーチンの発言もここから外れてない。「イスラエルによるアラブ諸国の土地の占領の終結」という語が何を意味するのかが難しいにしても。

私たちは、関連する国連安全保障理事会の決議とアラブ平和イニシアチブを含む、確固たる国際法を基にした中東における包括的かつ公正な決着を支持しています。 決着は、1967年に始まったイスラエルによるアラブ諸国の土地の占領の終結と、東エルサレムに首都を持つ独立したパレスチナ国の創設がもたらされるようなものでなければなりません。

ケリー「イスラエルがイラン空爆しろと言った」&パレスチナ連帯の日


■ 北中東チームの存在感

で、トランプが今回、イスラエルにアメリカ大使館を置くといったからといって、それで全エルサレムがイスラエルのものになる、と読まなければならない理由はどこにもない。

そして、そうできる可能性は、イラク・シリア・リビア・シリアの一連の戦争の結果として、むしろ、低くなった、というのが現状なんじゃないでしょうか。

ただ、インティファーダが宣言されたりするのも当然予想されたことなわけで、小競り合いから、ひっかけて大戦争に発展するというリスクは想定上当然ある。が、しかし、

こういう人たちが安定塊として北中東に存在するのが現状。

左から、イラン、トルコ、ロシアの各外相

 で、イランをここに含めたことが、どれだけ安定に寄与していることか、といったところでしょう。だから、ここらへんがイスラム側をどうやってまとめていくのか、というのも重要なポイントだと思う。アメリカ、欧州に一本釣りされながら利益を希求してていい局面と、それじゃダメな局面があるでしょう。

 

■ 今後

で、これらの動きは、基本的に、イスラエルとアラブの土地の民を支援してきた諸勢力との両存プランを追及して、どうにかして有効な話し合いを持たせようということなんだろうと思う。

つまり、シリアの話し合いに、武装反政府勢力もみんな入れてやるように持っていったでしょ。そういう感じ。

それによる決着がどうなるのかは一義的には参加者の意向次第だし、どれだけ時間がかかるのかも不明ではある。

むしろ、アラブ、イスラム側の結束をどう作るのかの方が難しそう。それがないと、巨大アメリカに立ち向かう会議の一方当事者になれない。

で、全体としてこの意味するところは何か。それは、キッシンジャーなどがそうであったように、アメリカが「シャトル外交」とかいって当事者を影で調整して、ほ~ら解決しました~、みたいなことはもうない、という意味ではなかろうか。

つか、もうできないと言ったも同然じゃないっすかね。

そこから考えれば、トランプは、キッシンジャー外交という実際有効だったかどうかわからんが、ともあれ強いから出来た外交を覆したということになるのかもよ、などとも思う。

別の言い方をすれば、アメリカの気配を読んですむ時代は終わったということかもしれない。

 

桜井さんが、トランプの行動を自爆攻撃と呼んでいたけど、自爆というより、なんか、一面では降参って気がしないでもない私。

中東でロシアに負けつつある米国、その大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めた自爆攻撃

 https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201712070000/

 

どうしてそう考えるかというと、はしなくも桜井さんが書かれていたこれ。

本ブログでもすでに指摘したが、イスラエルとサウジアラビアだけでイランを倒すことは難しい。ヒズボラが相手でも勝てないだろうと推測する人がいる。つまりアメリカ軍を引き込む必要がある。アメリカ支配層としても、ロシアに押されている状況を変えるため、ギャンプルに出ても不思議ではない。自爆攻撃のようにも見える。

アメリカを引き込んだところで、相手は、潜在的に

ですので、勝てないんですよ。もちろん、世界を引き込んでハルマゲドン幻想の現実化というのならできなくはないと言ってもいいですが、でも、それは「勝ち」なのか?でもあり、それでも勝てないと言うことさえできるような気がするな。だって、核の冬を生き延びてもイラン人はイラン人だから。

 

ということから、アメリカはイスラエルさんのお付き添いとなり、パレスチナさんにはアラブ地区がどうにかまとまってお付き添いとなり、両方をよく知るロシアさんにご晩酌をという成り行きで、最終的には国連を場にする、というのが、見えるような、そして望ましいような将来ではなかろうか。

■ リスク

リスクの第一番は、こんなことしたらもう中東で戦争できへんやんか、と考える諸勢力でしょうか。ただ、その諸勢力の一番手のアメリカは、世界中の紛争を一手に引き受けられるほどの体力はもうないんだからしようがない、とも言えるのでそこから妥協の余地はあるでしょう。

また、ここまで引っ張るために、911以降(ほんとはユーゴ以降だが)、嘘をつきまくってきたことから、情報機関、メディア、シンクタンク等々が嘘と思い込みの連鎖で、到底有機的な集合体として維持できない事態に陥っている。ここをなんとかせな、というのも重要な課題だが、それが故にリスクは増大する。

さらに、結構問題なのは、イスラエル紛争は70年もやってるし、誰がどう見ても最初の入りはイスラエル(を作った人々)が悪いわけだから、これを「正邪」の争いと認識して、イスラエルに有利なことを認めるのは梃でもイヤだという人々が世界中に多数いる。しかし、現実に、イスラエルに住む人々にも70年の歴史はあるわけで、そこを完全に覆すことは難しいしやるべきでもないでしょう。

パレスチナの人たちの権利が確保され、アパルトヘイト状態が解消されることが直ちに、イスラエルのユダヤ人の撲滅だ、になったらそれは新たな火種になる。そこらへんの議論を整えていくのも、大変だろうなと思う。

冒頭に出した朝日新聞の論調などが良い例で、自分たちの70年間のいい加減さを棚にあげて、ここでいきなり平和勢力めいてもアパルトヘイト解消のための力にはならないと私は思うわけです。

あと、イスラエルに住む人たちとイスラエルをネタに戦争を組む人は別だ、という視点も重要だと思うな。


 

 

 


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1 コメント

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『サウジイスラエル同盟潰しのタイミング』 (ローレライ)
2017-12-08 20:46:06
『イランを悪者』に仕立てた『サウジイスラエル同盟潰しのタイミング』でトランプの花火上げ。
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