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西側という宗教

2014-10-05 23:03:52 | アジア情勢複雑怪奇

最近ますます確信を持って思うのは、「西側」というのは宗教なんだなということ。the West教なわけですね。

そしてあらゆる宗教がそうであるようにこの宗旨も、内容がよかったから入信するのではなくて、入信したからこそ内容が良いように思えるのだ、という感じ。

この言い回しは、
聖書を読んだからキリスト教徒になるのではない、キリスト教徒だから聖書を読むのだ
資本論を読んだからマルクス主義者になるのではない、マルクス主義者だから資本論を読むのだ

という組み合わせで長らく使われてきたけど、私はこれに、

自由と民主主義に目覚めたから西側教徒になるのではない、西側教徒だから「自由と民主主義」を褒め称えるのだ

を加えたい。自由と民主主義にカッコを付けたのは、冷静に考えれば、西部先生などが何度も語っている通り、歴史ある民族集団にはそれなりの秩序があって、社会にとっての自由と民主制を植え付けるとしたら、結局はその土壌の上で育つしかない、つまり、きわめて多様な自由と民主主義が存在せざるを得ないからであり、どこにも汎用型の「自由と民主主義」は存在しないからだ。普遍的な自由と民主主義は抽象概念、イデアであって、その現れは時と場合と主体民族によって異なる。

ところがそれでは、アメリカ(その前はイギリス)と同じものができないので、これが違う、あれが違うと自分の社会をずたずたに切り裂いていったのが日本の戦後史だと思う。


西側教のお宗旨のキーワードは、

人権、法の支配、民主制、自由、市場経済で、それがWestern valuesだとされているんだけど、このWesternというのが実は曲者で、どこのことなのかわかるようでわからない。

rule of lawはイギリスだが、イギリスは必ずしもhuman rights(人権)、democracy(民主制)に好意的だったわけではない。イギリスが大事にし、かつ誇りに思っていいのは、long history of parliamentarismとでもいうのか、つまり議会制で物事を決める手続きの発展を長らく大事にしていること。人権だの民主制だのを革命でやろうという人たちを毛嫌いしていたことでも知られる。だから、民主制といったって取扱い方が大陸とは大分異なる。

market economy(市場経済)ってのも一様じゃない。どこを志向してるんですかね。知りません。さらに、プロシアに民主制が何の関係があるんだと私はいいたい(笑)。free, freedomとなると中欧で最も愛好していたのは著しくメイソン的だったロシア帝国の上流階級じゃなかろうかとさえ思う。

結局、これってどこかで誰かがこういうスローガンで行きますよと決めたんでしょうね。
最近はここに、ゲイの権利、女性の進出という新しいアジェンダが設定されていて、世界各国で疑問をもたれている。

なんか、こうやって並べて考えると西側教の基本方針って、第30回コミンテルン総会で決定しました、みたいな感じでどこかで決められているんだろうかとさえ思ってしまう。全然伝統的でもなければ普遍的でもない価値をある日突然世界の人民に押し付ける、というその手法がまったく左翼的だ。

そして、その仲間に入った国は、民主的で自由のある社会というある種の金印のようなものを与えられ、以降報道でも多少のお目こぼしに預かれる。
(トルコのどこが自由で民主的なのかさっぱりわからないが、NATO諸国なので仲間として優遇され、基本的に非常に世俗的なシリア支配層は、仲間じゃないので捏造報道無問題で極悪非道なイメージを押し付けられる。)

そういうことなので、西側教徒になることは自明でも、普遍でも、自然でもなく、自分の社会を自分の仲間(すなわち国民)にとって良いように改革していくという態度こそ求められる。これがすなわち保守って人でしょう。

言い方を変えるならば、現在の日本のようなところにあっては、西側教からの自由こそ求められ、これを脱した人々が順次保守的な人間になるんじゃないかと思ったりする。

■ 西側教拡大政策の行方

さて、その西側教徒への誘惑は、そうはいっても盛大なプロパガンダ戦と共に非常に強く、共産主義体制下の中国であっても、実は結構アメリカ好きというか、アメリカにあこがれていた人たちというのは少なくなかった。戦前から宣教師を派遣して、日本との比較でいえば比較にならないほどチャイニーズを可愛がった甲斐あって、アメリカを敵視しない世代が育っていた。

ところが、最近事情がちょっと違うらしい。ウォールストリートジャーナルにあった記事によれば、チャイナではちょっとしたプーチンブームらしい。

プーチンを、西側との対立を恐れない強いリーダーとして尊敬しているという人が多い模様で、それにつれて、対露感情まで改善していて、ピューリサーチ―が行った世論調査によれば、ロシア支持の比率は1年前47%から66%へと劇的に増えたらしい。

The Pew Research Center says China is one of the few countries where popular support for Russia has risen since Moscow's confrontation with the West over Ukraine?rising to 66% in July from 47% a year earlier.
http://online.wsj.com/articles/why-russias-president-is-putin-the-great-in-china-1412217002

なんかこれ、わかる。というのは過去数か月間に何回か見たチャイニーズとロシアの交流ものの動画で、政財界の人たちがプーチンを囲んでる時なんかウキウキしている感じがあって、なんだこれ、と思ったことがあったから。お金の話はお金の話として、それだけでない余禄があった。軍もそういうところあると思う。とはいえ、そんな好悪で動くほどウブでないのがチャイニーズだし、ロシア側はチャイナ警戒を怠らないのでこの関係は根本的には難しい。

他の国がどうなっているのかまでは書いてないけど、とりあえずウォールストリートジャーナルを含む西側教世界対策本部では、西側諸国の特にEUや日本のロシア支持が下がると大喜び、それNATOだ、それ東アジアの危機だって感じだったんだろうと思うけど、それ以外の国についてはどういう対策をしていたんでしょうね。

西側教団の根本的な間違いは、1980年あたりまでは、この布教を順次、穏やかに、入るといいことありますよ、ほら、あなたにも経済成長という現世利益が、とかいう調子でやってそれなりに成功してきたことに飽き足らなかったことではなかろうか。

冷戦構造が崩壊して以来、西側でなければ人にあらず的な無暗に積極的な拡張政策を取ったため、布教実績に陰りが見え、これまでの支持層だった先進国で支持を失ったのみならず、市場拡大のためのターゲットとしていたインド、中東で大きく支持を落とした。さらに、最後の大市場として期待された中国市場においても、思ったほど支持が伸びない、って感じでしょうか。

■ 自分で壊した the Western values 西側の価値

前にも書いたけど、ウクライナのキエフ政権がウクライナ東部住民を「テロリスト」と呼び、その住民を「テロ対策」として殺し始めた時、このへんが引き返せないポイントだったんじゃないかと思ったりする。

「自国民を殺す」-The West という価値の毀損

クーデター政権の治安関係に極右を入れたり、その極右の中にナチスのウクライナ対策で協力した人たちの残党を入れている、というのも後で振り返れば大きな出来事になるだろう。この事件はアメリカのみならず、バチカンも絡む(ナチのシンパを反共を理由に匿ったのはまずバチカン。反共なんてものが吹っ飛ぶぐらいの極端な非道ぶりを問題視して米英軍関係者は追及していたがバチカンが庇って米・カナダが引き継いだ)。

例:カトリック聖職者のウスタシャへの関与

また、制裁をかけるというその仕組みの身勝手さが丸見えになりすぎて、今後もやれといわれりゃそりゃやりますが、いつまでこんなバカなことやってるんです、兄ぃ、みたいな感じで見られているのも嘆かわしい。市場経済の自由度もたかが知れてる。制裁を使って資金の流れをコントロールしたり生産量を調整している以上競争も全然公平じゃない。

金融市場の不公正さ、経済理論のインチキくささもあった。ロシアのルーブルが政治状況の不安定さから売られていますっていうけど、ロシアは要するにユダ金と喧嘩してるんだからそうなるでしょうね、と誰もが思う。反対に、中身が滅茶苦茶なのは誰でも知ってるウクライナの通貨は、まぁその買い支えられていたとしか思えなかった。さらに、財政的にはイギリスだのアメリカだのよりはるかに健全なロシア政府債がジャンク債一歩手前って何ですかというのも思えば不思議だ。(いつか俺たちがロシアを壊すんだ、という決意の表れなんだろうが)

要するに、アメリカを中心とする世界を築くために、あっちでもこっちでもテコ入れして回ってる人たちがいて、その人たちのルールが世界のルールだってことでしょというのが丸わかりになってしまった。

ついでにいえば、石油はどうやら結構たくさんあって、誰なのよ石油はいつか枯渇するとか言ってた人は、ってのも改めて問い詰めたいものだ。

嘘だらけの近現代史という本があったけど、多分その本の中身も嘘だらけだと思うな。過去100年間の歴史はこれから大きく書き換えられる可能性があるから。


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