米大統領選挙は、14日にスケジュール通り各州のElectoral College(選挙人)が票を投じて、結果としてバイデン票がトランプ票を上回ったので、バイデンが次期大統領に選ばれることとなった。
もっと先まで手続きはあって、最終的に就任するまで終わらないという考えも成り立つが、とりあえず重要課題である各州の意思の表明が終わったので普通に選出は終わりましたと言っていいタイミングかと思う。
ということで、約束通り、米の選出の手順が法的手段を含めて終わるか、または、どちらかが敗北を認めたところで「おめでとう」を言うのが適切だろうと言ったロシアさんは、今日、プーチンがバイデンさんおめでとうの電報を出した。
Congratulations to Joseph R. Biden on winning US presidential election
投票が終わって、多数の国の首脳がバイデンおめでとうをした時、ロシアのジャーナリストが、今言わないのは今後の米ロ関係にとってよくないんじゃないですかと問い、プーチンが、米ロ関係は壊れている、壊れているものは壊せない、と言ったのは冗談ではないでしょう。
オバマが4年前のちょうど今頃、クリスマスだというのにロシア外交官を何十人か突如国外退去させたことが米ロ関係最悪化への口火で、事実上、そこから一度も修復されていない。
トランプはロシアの産業に打撃を与えるべく、オバマ以上にロシアに制裁をかけ続けて、最終的に現在の危険なレベルにした。
■ 嘘だらけ(ステルス側)
いやしかし、米の選挙は、返す返すも、なんという馬鹿げた選挙だろうかと呆れたし、それを直視できないアメリカの制度の腐れぶりもすごいよなぁと改めて思う。
そして、今日になってミシガン州の裁判所が命じた集票マシン「ドミニオン」のソフトウェアの解析が発表された。それによれば、エラー率が、そんなエラー率などというものではなくて作為的にエラーになるようにできているという結論を出した模様。
Court-ordered audit concludes Dominion voting machines were intentionally designed to ‘create systemic fraud’ in Michigan
連邦の選挙管理委員会が規定しているこうしたソフトウェアのエラー率の許容率は0.0008 %、解析されたソフトウェアのエラー率は68%だそうです。大笑い。
例えばトランプと入力しても、バイデンと出力される、という仕様のことだと思う。
ここに監査レポートがあるけど、私は読んでない。
■ 妄想も危険(トランプ側)
だがしかし、受けて立つトランプ側の応援団の妄想もすごい。
田中宇さんがトランプにぞっこんになって、無茶苦茶な離れ業みたいなことを書き続けていたのは多少は知ってるけど、新たな「エース」が登場していた。
鹿児島大学の木村先生。木村先生、よいお仕事もしているんだけど、こ、こ、これは・・・と思った。13日付けで、現代に出てYahooにも出てる記事。
トランプついに敗北か…「最悪の事態」が起こるかもしれない
最悪の事態ってなんだろうと思ったら、戒厳令が布告されるかもしれないということらしい。
トランプ大統領がいまは自重している最後の手段としての戒厳令発令・非常事態宣言を選択させないようにするためにも、今後の州議会での動きと連邦最高裁の対応が「憲法と民主主義を守る戦い」にかなった「司法の正義」を示すものとなることを願うばかりである(なお、米大統領の戒厳令発令・非常事態宣言については、浅川公紀「米大統領職と緊急事態権限」が参考になる)。
どうして選挙の不正でそこまで行かないとならないのかと思うし、憲法と民主主義を守るために戒厳令を布告してどうするんだろう、と不思議さいっぱいの気持ちで読んだ。まるで、民主主義を守るためにサダム・フセインを倒せとかいってる人たちのようだな、とも思った。
ともあれ先生が触発されたのはマイケル・フリンの煽り(と私は思った)である模様。
このマイケル・フリン将軍は、オハイオ州に拠点を置く非営利団体「We The People Convention」(パウエル弁護士とフリン将軍が主導して設立)が12月1日に発表した陳情書に触れて、トランプ大統領に臨時戒厳令を宣言し、2020年の大統領選の全国再選挙を実施して軍に監督させるよう呼びかけている(INDEPENDENT 03 December 2020)。
このフリン将軍の発言に呼応するかのように、シドニー・パウエル弁護士とリン・ウッド弁護士も12月3日のジョージア州の集会で、米大統領選挙で大規模な不正が行われ、民主主義が深刻な脅威にさらされていると強調し、戒厳令発令の必要性に言及している。
フリンが現役の部隊を率いる将校だったら叛乱になり得るけど、この人もう退役してる人だし、現職最後が情報将校だから、ちょっとできることに開きがありすぎじゃないの、など私は思うわけだが、木村さんは本気にされている模様。
しかも、フリンはそれをtwitterで書いてるわけで、普通に、なんてか、煽りでしょう(笑)。
もう1つの最悪の事態は、
またもう一つ懸念されることは、今回の大統領選挙で行われた大がかりな不正に中国やイラン、ロシア、セルビアなどの外国勢力が関わっているという情報がトランプ弁護団などから出されているという問題である。
だから、これは中国の「間接侵略」で、これに対して何らかの「報復措置」をとるべきだとの声も上がってきている。そこから、対中戦争になるかもしれないとおっしゃる。
今のところ決定的な根拠は開示されていないが、これまでの在任中に大きな戦争をしなかったことで一定の評価を受けてきたトランプ大統領が明確な事実確認もせずに対中戦争(限定的な軍事攻撃!?)を発動するという最悪の事態も想定される。
どうして、そんなことを考え出すのか理解できない。
でもって、大量破壊兵器を持っているはずだと言ってイラクを攻め込んだのはまったくの捏造話だと今日誰でも知ってるわけだけど、逆から言えば、それはもう攻める準備をしていて、ひっかけて軍事行動に出てるわけですね。アメリカというのは、自分が準備をして戦争をするのが常。
今般の場合は、仮に、中国が間接侵略的なことをしていたとして、それに腹を立ててアメリカが中国を攻撃する、というのは、アメリカの戦争プランニングらしからぬ行動だと言えるのではあるまいか(笑)。
先生は、アメリカが正義感に駆り立てられて何かをする人たちだと思ってらっしゃるのでしょうが、私はまったくそうは思いません。おほほ。
そして、次のページをめくると、
私たちはこのような最悪な事態を避けるためにいま何ができるかを考えなければならない。もし中国など外国勢力の選挙介入が事実であったとしても、それを口実として戦争発動・武力行使をするのは正当化できない。
いや、これを口実にすると仮定したのは先生ですから(笑)。これって典型的な藁人形論法ってやつではないかろうか。
それにしても、いかにアメリカ人だとて、ドミニオンの運用に中国がかかわった、買収した、その仕返しにミサイルぶち込むというのは、???なのではなかろうか。ひとしきり、うぉーって言うかもしれないけど結局誰も支持しないと思う。さすがに。
あと、アメリカに対する外国の影響というのなら、まず、イスラエルとイギリスが筆頭だというのは周知ではなかろうか。
いずれにしても、その場合、買収されたアメリカ人たちを懲らしめないわけにもいかないでしょう。そっちが先で、そしてこれがもう、とても多そうで、そっちを暴いているうちにみんな元気を無くす気がする。
どうしてこんな突飛なことを書いてらっしゃるのか、理解に苦しむ。
1つ思ったのは、木村さんの頭の中では、アメリカがとても強い国なのではなかろうか。だから、簡単に中国相手に軍事行動を取れると思ってる。つまり、フセインのイラク並みだと思ってる。しかし、中国はイラクではない。そして、ロシアはさらにイラクではない。
だからこそ、アメリカは周辺の国を動かして、中国やロシアに噛ませようとしている。噛まれると腹を立てて騒ぎになるが、中ロに勝てない。そこでアメが出張って、仲介してやる、みたいな想定が、グローバルNATO。ついていく方がバカなんです。
■ まだ負けてない by 田中さん
とか言っていたら、田中宇さんが、トランプはまだ負けていないという記事を書いていた。
要するに、
まだ共和党の議員の多くも、草の根共和党支持者もみんな納得してない
ハンター・バイデンのウクライナ、中国疑惑はバイデン家がらみだ
ハンター・バイデンのウクライナの犯罪はかなり有罪率が高そうだ
だから、
1月20日まで、あと5週間ある。この間に、トランプの機転と共和党の草の根パワーで党内のエスタブを軍産側からトランプ側に転向させられれば、トランプの逆転勝利がまだありうる。民主党は選挙不正をしたし、バイデンは犯罪者だ。この2点を「妄想」とみなすか「事実」とみなすかで、ここに書いた展開が「悪いこと」にも「良いこと」にもなる。
だそうだ。
だがしかし、このブログ的には宇さんの筋書きにとって不都合なことを言わないとならない。
バイデンのウクライナでの行動を明らかにすると、ウクライナという他国でアメリカが政府、マスコミをあげて、ナチ残党を使ってクーデターをかましたことがバレちゃう。
不正選挙どころではない。あはははは。よく考えると、大爆笑でしょう。
で、これは共和党、民主党を問わずアメリカが最もやりたくないことではなかろうか。
ウクライナでのバイデン不正がなかなか表に出ないのは、それはそれなりに理由があると思う。もちろん、私としてはやってもらいたいところですが。
■ 単に混乱するアメリカ
ということで、今後のアメリカは、ウクライナ、シリア、リビアをぶち壊した張本人が出てくるという、おぞましいアメリカになる。
ある意味、トランプのおかげで4年間、犯罪者が野に下っていたようなもの。
今後、この真価が問われる、みたいなフェーズになるかもしれない。
■ オマケ:虻蜂取らず
ふと思うに、トランプ負けの1つの理由は、共和党の特にティーパーティー系などに決意が足らなかったことがあげられるのではなかろうか。
要するに、もし本当にアメリカ・ファーストになりたいんだったら、ウクライナぐらい片付けてしまえばよかったわけですよ。話をぶちまけて。
そしたら民主党は当分帰ってこれなかった。これが最もやりやすいシナリオだと思う。そもそもアメリカ人にとってウクライナは、今だって大多数の人にとって「ロシアだろ」という場にすぎないんだから。
そういう決意もなく、ロシアが悪いと言われると、年来の反共モードが際立ってへらへら笑って、トランプ押しだけやってりゃなんとか勝てると思ってたところが、エスタブと戦うにはだいぶ甘かったというべきではなかろうか。虻蜂取らず、というところ。
逆に、4年間何がなんでもロシア疑惑を終わらせなかったエスタブはアメリカをよく知ってるとも言える。これは必ず有効なレッドへリングになると踏んでた。