ウクライナへのロシア侵攻は今すぐ、だったはずなのだがなかなか実現しない。
本日の日経では、この話はトップではなく国際面に移動。そして、ロシア侵攻の語ではなく、いきなり「ウクライナ情勢」になっていた。どうしたんだ、侵攻の話は!
しかし、「見通し」と書いている通り、実際それはビクトリア・ヌーランドというウクライナでクーデターをやった張本人である現在のアメリカの国務次官がそう言っているだけで、ロシアのラブロフ外相が応じると言ったかどうかは定かではない。
応じたとしても、みんな知ってる通り、ラブロフは、ウクライナ情勢ではなくて、NATO東方拡大問題を語りだすことは必定。そして、ブリンケンは先日、高らかに、NATOは東方拡大を止めない、すべての国に選択の権利があるのだ、ロシアは口出しする権利などない、などと語っていた。それでどうやってロシアとウクライナ情勢を語れるのかは定かではない。
他方、懲りずに、アメリカとイギリスの主要紙が毎日勇ましいことを言っている。が、昨日書いた通り、当のウクライナの大統領は、パニックを煽るな、とお怒り。
その動画が出てきた。ゼレンスキーが記者を前に話してる。
🎥 Ukrainian economy has basically collapsed, now needing 5 billion USD just to stabilize it. Ukrainian officials have blamed “western fake news” about Russian invasion, which Ukraine states daily “is not imminent”. pic.twitter.com/pmq5PXE682
— ASB News / MILITARY〽️ (@ASBMilitary) January 28, 2022
ウクライナの経済の安定には金が必要だ、4~5Billion、つまり、日本円で4500~5500億円ぐらい必要だと言っている模様。
メジャーだがアメリカ、イギリスの主流ではない、ブルームバーグ、アルジャジーラ、その他ロシアメディアなどはゼレンスキーの話を普通に真面目に書いている。
Economic aid to Ukraine is also becoming an increasingly urgent issue. Ukraine needs as much as $5 billion to stabilize the economy, Zelenskiy said. The hyrvnia has dropped 8.4% against the dollar, one of the worst performers worldwide, since November when Russia again massed troops on the border.
アルジャジーラのこの記事によれば、米国は、ウクライナ経済のマクロエコノミクス状況に追加支援するよう検討している、と答えているらしい。
The White House said that on their call Biden told Zelenskiy the U.S. is “exploring additional macroeconomic support to help Ukraine’s economy.”
いやぁ、ウクライナのオリガルヒ連中は大喜びでしょう(笑)。普通に、ここはブラックホール。これで終わりになることはない。そもそも、オリガルヒに領土をあげちゃってるような恰好でクーデターを「成功」させたんだから。私兵を持ってるようなオリガルヒですからね、ただの金持ちとはわけが違う。あはははは。
だけど、そのおこぼれとしてでも、アメリカ他の金持ち国家連中であるところの西側が支援することは、ウクライナの経済の一般的状況を改善することにはつながるので、ここはゼレンスキーが頑張るのは良いこと、と言っておきたい。
覚えている人もいるだろうけど、ウクライナは既に2014年に経済破綻の一歩手前だった(破綻していた、と言ってもいいぐらい)。それにもかかわらず、EUが加盟させるとか言い出し、じゃあ何か支援するのかと思えば、そう大きな支援は約束していない。
そこで、当時のヤヌコビッチ大統領が、ロシアの提案に乗る方向に動いた。ロシアは1.5兆円ぐらいの支援パッケージを持ってた。
この様子を、当時まだ存在したアメリカの、ネオコン子飼いでないロシア・東欧研究者たちは、ウクライナのどんな大統領であってもロシアの提案の方を取るだろう、と言っていたものだった。
だから、西側のクーデターというのは、ウクライナのロシア傾斜を防ぐ手立てがないので、他にどうしようもないからやった、という側面もある。
もちろん、他に、シリアをアルカイダを使って分捕ろうとしていたNATO諸国の企みを止めているロシアを、ウクライナで焦げ付かせてやろう、みたいな発想も有意にあったでしょう。その上で、前々からやっている、ウクライナをNATOに入れてクリミアのセバストポリを英米のものにするという150年越しの念願も、キラキラ光るお宝目標になったことでしょう。黒海を取って、カスピ海を取ると、そこらの資源は全部俺らのもの!というぬか喜びもあったでしょう。
ということで、やってしまった(笑)。
そして、西側にひっぱるためにこの間、以前にもまして反ロシアにしているので、ウクライナの最大の貿易の取引先であったロシア連邦との取引を見込むことはできない(今でも全くないわけではないのだが)。
しかも、この間に、ソ連時代の遺産は使い果たし、優秀な技術者層などは既にロシア連邦に移住したり、ロシア国籍を取って普通の生活を始めてしまったので、ウクライナの産業リソースも減退した。人口はもちろん減少している。
ということは、ウクライナはどう食べていけばいいんでしょうか? ウクライナからみれば、西側に忠誠を誓って補助してもらう道が手っ取り早い。
■ 総括すると
これはもう、NATO東方拡大というより、NATO存続の危機ではないのだろうか。
馬鹿だったのは、すべてをウクライナに結び付けてしまったこと。
ウクライナをNATOに入れないと決定してしまうと、今まで、このアホな取り組みを支援してきた人たちが全員、裏切られた格好になる。
→NATOのメリットって何?
他方、じゃあこうなったらウクライナを枕にロシアと戦争だ、とすると、勝てない。(軍事でも経済でも行き詰まる)
→NATOのメリットって何?
これだけではなく、
・ウクライナを取るために使ったバンデラ主義者の問題から、NATO諸国とは要するにナチ支援国家群なのかという現状
・バンデラ主義者や極度のネオナチ軍団による、暴行、殺人などの罪
・マレーシア機撃墜問題
といった諸問題も付随して、そして浮上を待っている。
開けるに開けられない、動くたびに自分が不利になる、それが西側にとってのウクライナ。
総括すると、ほとんど「ツークツワンク」。
(ツークツワンクは、チェスの用語で不利なのに手を指さざるを得ない状況)
だから、毎日、毎日、ロシアが悪い、ロシアが悪いという印象操作を言い続けて、我々は正しいと言いつくろう以外の手がない。
だがしかし、それをしたところで戦略目標は何? あるのか?
これもまた、プロパガンダ目的でインチキを書き続けるため、西側の論客というのはこの程度、馬鹿なんだなという評判を得ることにしかならない。
さらに、これを時間をかけてロシアが弱るまで、などと思っていると、その間ずっと西側世界においては、プロパガンダ目的のインチキを正統として教えるため、被害はその次の世代にも及ぶ(既に冷戦期でそうなっているところがかなりある上にそうなる)。
詰んでる。
ロシアは東芝ではない!
そうなんですよ、破綻してるから取りたくない、でも、ロシアとウクライナとベラルーシがくっつくことは是が非でも避けたい。
当初はそれだけど、やってみてからは、なんとかしてロシアにウクライナを取らせた方がいいんじゃないか、とマジで思ってる人いると思う。ウクライナという負債が大きすぎるから。
だが、ロシアは東芝ではない!
ヘイトが焦げ付いたウクライナ西部については、ロシア人たちにしたら「ようやく脱ウクライナできた」でしょう。
ヘイトしかない頭のおかしいガリチア地方を誰が世話するんだろうか?