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WSJ:米のエネルギー政策は独裁者たちへの贈り物、らしい

2021-06-12 15:48:59 | 太平洋情勢乱雑怪奇
この間、化石燃料への投資をゼロにするとかいう方針について書いた時、

金融屋は技術、というか現業をなめてる。 

と書いたけど、金融屋も多少は気が付いているらしいことを知った。

3日前の、ウォールストリートジャーナルの社説。

【社説】脱炭素は米から中ロへの贈り物

このタイトルの「中露」は正しくない。そして脱炭素だけでもない。
オリジナルのタイトルは、

アメリカのエネルギー政策は独裁者たちへの贈り物

America’s Energy Gift to Dictators

表面的には、ロシア、中国、イランを標的に書いている記事だけど、趣旨として、中東産油国の独裁者というかなんというかの王様たちを除く理由はない。

で、要するに、アホみたいな脱炭素政策を取って、石油投資をゼロにすればこの世はハッピーみたいな政策を取ってるが、そんなこと上手く行ってない、むしろ独裁者を喜ばせるだけだ、とか言ってるわけですが、つまるところ、我が方の方針は総じて上手く行ってない、行く見込みないぞ、と言っているようなものでしょう。

実際、脱炭素なので化石燃料への投資はゼロへ、とかいうのは極論すぎ。最低限控えめに言っても短期、中期に無茶だろうということ。

超長期というのならそれこそテクノロジーの進展が何かをもたらすかもしれない。だけど、未知のテクノロジーを担保に現在のエネルギーを使うのを止めましょうというのは、やりたい人はやればいいけど、やりたくない人はやらない方がいい選択でしょう(笑)。

現実的には、この間、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、ロシアの元エネルギー相、現副首相のノヴァクが言ったことが実際リーズナブルであろうというところ。

さらにもう一発、今回の経済フォーラムでも、ロシアのノヴァク副首相(ついこの間までエネルギー担当の大臣として産油国との駆け引きに奔走していて上首尾だったので副首相に出世した)は、こうやって石油関連の投資ゼロにしていったら、原油価格はバレル200ドルまで上昇する可能性もあるだろう、とか言ってた。

Suspending investment in oil to push price up to $200 per barrel, says Novak
https://tass.com/economy/1297779

(真ん中がノヴァクさん)

どうしてこうなるかといえば、大まかにいってこんな感じ。

だって、掘り進んでいってる資源なので、150年かそこら使ってきて、次第に手間のかかるものになってるわけですよ。そこで、もう投資しない、となったら、今あるもの、簡単に手の届くところの原油しかゲットできない、需要に対して供給が減る、価格が上昇する、となるのはむしろ合理的な推論でしょう。


少なからぬ人が、石油なんていくらでもあるんだとか言ってますが、これって何か、MMT理論の人と似たものを感じる。都合のいいところだけを取り出して、お金はいくらでもすればいいと言う。だが、それを償却していく、こなしていくのはとても大変というのを無視してる。石油も、大枠でいえば地球にはひょっとしたら無限に近いほどある・かもしれない。でも、大深度にあったらどうするの?ということ。


■ 脱炭素だけでもない

WSJは、バイデンの脱炭素だけにフォーカスしてるみたいだけど、去年の話は脱炭素問題ではなかった。去年の春、パンデミックの混乱の中で、石油価格大暴落の一幕があり、これによって多数のシェール屋が廃業に追い込まれた展開があった。アメリカのエネルギーは自給可能なのだ云々という構想はこの、本当にやったら不採算だが金つっこんで掘らしてたシェール屋の存在に支えられていた。

マーケット大荒れ&ロシアの「No」

で、この時、OPECとの協調にノーを言って波乱を巻き起こしたのが、プーチンやらミレルやらといったおっさんたちに一言一句を確かめられていたであろうノヴァクさん。


■ 人を呪わば

で、去年の原油価格大暴落という一幕で、多くの人が、やったやった、これで石油で食ってるロシアの経済が破綻だと喜んでいた。日本人の反応twitterも拾っておいた。


だけどそうはなってない。

いろいろ複雑な駆け引きで、ロシア当局者の頭の良さという競争優位のアセットを見込めないアメが負けましたという話だと思ったらいいのかもしれない(笑)。

結果的に、原油価格を暴落させてロシアを赤字化させようとした試みは、アメリカの不採算のシェール屋の大規模倒産大会だけを残した。

(ロシアは、原油価格が下がることは直接的には収入減だが、
・原油価格低下→ルーブル安の連鎖によって、他の輸出製品にとって+あり
・そもそも採掘も従業員のお給料も技術もドル建てでやってないのでドル建て原油価格に左右される率は、サウジなんかと比べ小さい
・ルーブル安はいいことばかりではないが、基本的に食料もエネルギーも輸入してないので、ルーブル安が直接インフレにはつながらない、トルコリラ安とはわけが違う
といった構造。

この単なる事実を、多くの人がいくら指摘しても西側の政策当局者は認められないという病にかかってる。多分それは、原油安でソ連を混乱に陥れたという「自信」の故なのではなかろうか?)


■ 化石燃料投資ゼロ作戦

そして、今年になってバイデン政権がフル稼働し始め、5月には、前にも書いたけどIEAが、石油投資をゼロにすればいいのだ、などと言いだす。

エネルギーアナリストの大場紀章さんが書かれた、このレポートは現状を理解するのにとても良いと思いました。

IEA「石油投資ゼロ」が衝撃なワケ
https://news.yahoo.co.jp/byline/obanoriaki/20210527-00239752/



中の一説を引用させていただくと、

このレポートは、2050年のCO2排出量ネットゼロを前提とした世界のエネルギー供給のシナリオを描いたものだが、その内容は、「今後石油を含む化石燃料の新規投資は全く必要ない」「2035年以降ガソリン車の販売はない」という「衝撃的」なものだ。シナリオでは2050年の石油・天然ガス・石炭の供給量が、それぞれ75%・55%・90%減少することになっている(図1)。

(太字は私)。で、その様子が上の右の図。こんな想定をしているわけですよ。

主導する要因はEVなんだけど、それがそう簡単に増加するかも不透明、そして、化石燃料への投資をゼロにしたら、

一方、石油開発は2015-2017年の原油価格低迷とコロナショックでただでさえ投資が不足している上、既存油田だけでは生産減退が起きるので放っておくだけで生産量は減っていく。そうした現状を見込んでか、既に原油市場は上昇トレンドにあり、昨年秋頃から約80%上昇して1バレル65ドル付近を推移している。 

といった組み立てで、脱炭素を理由とした化石燃料投資ゼロを訴えるIEAのレポートに疑義を呈していらっしゃる。

原油価格は、6月に入ってからは、1バレル70ドル付近になっていて、コロナからの復活がフル稼働していけば、ますます上昇トレンドに張り付く可能性は高い。つまり、WSJより大場さんの方が反応早く、そして着眼点も適切だと思う。

結構お若い方のようですし、こういう方がいてよかったわ、と思いました。こういう方があと何十人かいて、その中で論争していくスタイルにしていかないと、日本は、WSJ他の上から来るメディアのプロパガンダ戦に引きずられる状態が続く。


■ 総じていえば

ちょっと流れを見て考えると、ウォールストリートジャーナルは、ある種の都合のいい言い訳をしようとして上述の記事を書いたのかもしれない、などと言えないこともないような気がする。

つまり、バイデン政権のせいだけにしてるけど、実は去年もおかしかったし、問題は脱炭素アジェンダだけでもなく、また、そうだとしてもアジェンダ設定そのもの以上に、米と欧州の違いなども実は重要なファクターに見えるあたりも追及の余地がある中で、要するに、上手くいってないぞー!!と言いたいと。

こっちからいえば、一体どんなプランニングでエネルギー政策をいじり倒してるのよ、あんたたち、といったところではありますね。

政策の不調和で原油価格上昇、金融緩和でインフレといった状況が見込まれるのなら、政策変更しないとならないんじゃないの???というところなわけですが、西側の現状を見ると、そんなことを話せる環境はない。

ナラティブン管理という言葉を私はよく使ってますが、これって、敵とか支配下を絡めとるために重要な政策ですが、うまくやらないと、同時に自分たちも縛られる。私たちが置かれているのはこれかもなぁ~って感じがする今日この頃。


■ オマケ:まだあるかも

で、先回りしておくと、これら脱炭素批判の人たちの中には、アメリカは今度は原発で勝とうとしているのだ、よーし、みたいな感じで立ち向かってる方が見られるように思うんですが、だがしかし、このブログが成り行きでいろいろ見つけてしまったように、アメリカって必ずしも原発周りで優位に立ってなくね??? なわけです。

影ではいろいろ立て直している感じはあるんですが、どうなることやら。

■オマケ2:アメじゃない、日本だ

とはいえ、アメリカは一切の面倒を捨てて(ネオコンやら介入派を処分するとか)引きこもって立て直す、みたいなことをしだしたらやれないことはないかもしれない。自分んちには相当量の化石燃料はあるんだし。

その時日本はどうなの?を考えないとならない。



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脱炭素誘導でオイルショック再び! (ローレライ)
2021-06-12 18:41:16
脱炭素誘導ノクターン石油投資減退からオイルショックが再び来る予想、オイルショックはアメリカ国内経済も助かる。
返信する
産油国の夕張化どころか神風の脱炭素! (ローレライ)
2021-06-12 19:17:31
脱炭素誘導は産油国の夕張化どころか神風だと言う話!オイルショック再び!
返信する
今回はどうかわからない (ブログ主)
2021-06-12 20:09:51
いやぁ、前回のオイルショックとは違うでしょう。

前回は仕掛けた人たちが仕掛けた人たちにとっての利益を求めてそうなったわけですが、今回は、短期的な相場ぐらいしか利益はないのでは?

アメにとって全然良いシナリオに見えないです。
返信する
Unknown ()
2021-06-13 19:26:42
その時日本はどうなの?ですが、結局は買うしかないでしょう。
少しでも有利になる様になるべく多くの国と取引し、なるべくバランスよく(石炭・ガス)使えるように選択肢を増やしておかなくてはならないのに現状では逆行していますね。
また、内政だけでなく、外交能力も著しく失っていますので、やけくそで戦争かも(アメリカ追従で)
自分の首が締まっても相手が苦しめば良いという狂った連中ですからね(どういう結果でも日本だけ貧乏くじ引かされそう)
返信する

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