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皇室の矛盾はますます露呈していく by 原武史

2019-05-11 18:22:39 | アジア情勢複雑怪奇

砂の真砂は尽きるとも、世に御用論者の種は尽きまじ

(今日の宗純さんのエントリーを読んで)

と言った趣であるらしい日本ですが、御用論者というよりもはや再びカルト化しておるなといった趣。では一体いつからここまで極端になったのか。いろいろ考えるとこれはやっぱり311なんでしょね。

いやその前からそういう傾向はしっかりあったけど、日本国民は、民主党政権ができたぐらいなんだから、既存勢力を壊してやるという気持ちを持った人が大勢いたことになるし、それが可能な体制でもあった。それが順次解体されていって、311が来て、そこからなにかソフトなカルト化がはじまった感じだと思う。ここまでおかしいといろいろと極端な仮説を考えたくなる私がいる。

 

で、そんな中、ここ十数年、大正天皇まわりをほじくって、ある意味、通史というか、通俗的な受容態度に爆弾を投げ込んでいるに等しいことをやっている(ご本人どうお考えか知りませんが)とおぼしき原武史さんが、興味深い論考を上げていた。

 

原武史「米国は皇室に深く入り込んでいる」

男女差別、血統重視、米国傾倒…皇室の矛盾はますます露呈していく

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019050600003.html?page=2

 

結構長いですが重要な視点が一杯。

私としては特にここに着目したい。

 行幸のもう一つの柱である「慰霊の旅」ですね。国外の目という視点では、僕が注目しているのはその訪問地です。上皇明仁は確かに言葉では植民地支配や戦争への反省に踏み込んでいます。でも国外で訪れた激戦地は沖縄、硫黄島、サイパン、パラオ、フィリピンと、1944年以降に日本が米軍と戦い負け続けた島々ばかりです。柳条湖、盧溝橋、南京、武漢、重慶、パールハーバー、コタバルといった、1931年以降に日本軍が軍事行動を起こしたり奇襲攻撃を仕掛けたりした所には行っていないんです。

 日本の戦争の全体がむしろ隠蔽されていると僕は思っている。

 

天皇のかつての戦地への行幸を、メディアも一般人も手放しで称賛した。しかし、行ったところはみんな太平洋戦線の最後の方のところばかり。

実際問題、1945年に終わった戦争は、1941年までに起こっていた数々の戦争行為の延長。それを解決できずに真珠湾イベントとなった。

だから、1941年以降だけ見るというのは、原さんがおっしゃる通り、1945年に終結した戦争の全体をむしろ隠蔽していく行為に加担していることになる。

しかも、安倍との対立が噂されるソフトな天皇と皇后がこれを行い、BBCやらNYTが結構好意的に取り上げたことから、少なからぬ日本人は、ああこれで戦争の話ももう終わった、ぐらいに受け取っていると思う。このムードでしかない思い込みは問題。

さらにいえば、安倍と天皇(現在の上皇)は対立しているといった話も、嘘くさい話というのが私の考え。正確には安倍の支持者集団と天皇は対立している、でしょう。しかし、この政権自体は実は自分のサポーターを裏切る。したがって、安倍と上皇は別のことをしているようで、全体としては同じ方向を向いている。

すなわち、西側が作った、ストーリーの再度の明確化でしょう。

具体的にいえば、ラブロフが何を言おうと省みることはないという意味でもありましょう。

 

原さんはそれらすべてをアメリカとの関係と見ていますが、私は必ずしもアメリカではないと思ってます。ここでも何度も書いている通り、天皇や支配層にとって重要なのは、一般のアメリカ人でもイギリス人でもなくて、西側上層部なるところ、すなわちアングロ、ユダヤ、欧州貴族といった人たちとのネットワークでしょう。

そこに入っていられるなら、後のことはなんとかしよう、さて国民をどう言いくるめられるか、といった機序が大日本帝国および後期大日本帝国(現在)のスタンダードだと思うな。

 

で、原さんとはいろいろと意見は合わない私ではあるけど、最終的に、

「天皇制の矛盾はもっと露呈していく」という点には私も同意ですね。

ただそれは、こういう話ではない。

 ――天皇制は憲法の平等原則の例外で、身分制の飛び地と言われています。現実の民主制と共存できても、人権と自由と平等という理念を思想的に突き詰めれば、世襲による君主制と民主主義は相いれないはずですね。

 それを指摘している人はほとんどいませんね。共和制への移行を主張する人も、なぜか天皇に人権がないという問題に矮小化させ、「陛下を我慢と犠牲から解放しなければ」「本当の意味で天皇を敬うためだ」という留保を必ずつけた言い方をする。

 天皇をめぐる言論には、依然としてタブーが存在するのです。

この問題は、だってイギリスの王室があるでしょ、オランダもあるでしょ。民主主義を極端な方向に持っていかないための、王制はいわば保守の知恵です、みたいな論で押し切られるでしょう。

で、西側が日本の皇室について昔は文句を言ったものだが最近はまったくそういう気配がないのは、日本をここらへんの西欧州諸国の仲間に引き入れておくために有効な仕掛けだからでしょう。NATOであり大西洋主義者にとって日本はユーラシアの東の重要な基地。こういう感じ。赤いところが米国と防衛条約を結んでいる国。

 

そして、私としては、この構図だからこそ天皇制に影が差すだろうなぁとか思いはじめた。

結局ね、東アジアのnationである私たちが、隣近所の中国、朝鮮、ロシアを敵として、イギリスだのオランダ、デンマーク、フランスとどれだけ仲がよかったとして、それで一体食っていけるんですか、身の立つようになるんですか、ということだと思う。

ということはthe West偏重を呼び込むための皇室は根本的に変えるか、それがいやならプライベートな存在としてthe Westを代表する人たちになる、といったことになっていくんじゃないのかなと思う。でもこういう具合に整理して変化させることに失敗しそうですよね、私たちは。ということはだらだらと取り残されつつ、妄想にすがりつくといったことが想像できる。難儀やわ、ほんと。

 

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認識票を抱いた死者 (ローシャン)
2019-05-12 00:51:48
私の父は戦後、中国人民解放軍に留用されていました。国民党を追って中国各地を転戦していると、各地で白骨化した日本人兵士の遺体がむき出しのまま捨て置かれているのをよく見ます。

変わり果てた同胞をそのままにしておけないので埋葬するのですが、そのたび、いつも同僚の中国人兵士は手伝ってくれたそうです。

なぜ白骨が日本人兵士だとわかるのかというと日本兵はみな真鍮の認識票を腰に巻いているので、すぐわかるといいます。

それらの認識票は引き揚げのとき舞鶴の援護局に渡したそうですが、まだまだ大陸には家族のもとに帰れない遺体が山ほどあると思います。

ぜひ今上陛下には、平成天皇が残された慰霊の旅を続けてほしい。
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Unknown (海坊主)
2019-05-12 12:58:36
開戦責任を想起させる行動を謹んでいるのでしょうね。西側エスタブリッシュメントとの関係云々と言うよりも、自国民感情を刺激しない様に近隣諸国との融和をギリギリのラインに、注意深く押し留める。

恐らく何処の国家にも言える事ですが、国体護持の為にはそうするしか無いのだと思います。支配者層にとって何より恐ろしいのは、絶対多数の平民です。

ロシア、中国、朝鮮等に手を出して、自他国問わず平民たちに惨い犠牲を強いてきたその責任問題が再燃し、天皇機関的官僚国家の存続を危険に晒さないように、当時の所業に対して沈黙し主客逆転させて被害者ヅラして居ます。

いつもの風景で何も珍しい事はありません。
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万世一系の呪縛 (私は黙らない)
2019-05-14 06:10:56
いまだ続く令和フィーバー、何とかなりませんか。連日連夜の皇室ネタ、もう私は飽きたをとおり越してうんざりだ。神事で使う米の産地がどうの、やれ亀がどうのって、だから何だっつーの!
万世一系なんてフィクションに、なぜこれほどまでに執着するのか。そのために費やす国民の時間とエネルギーの何と膨大なこと。だいたいDNA検査もなかった時代、万世一系をどうやって証明するの?
だいたい、信教の自由と抵触しないんですか、皇室の存在自体が。
皇室があるが故の不自由さ、万系一世の呪縛から解放されたら、日本の選択肢は広がるのではないかとと思う、今日このごろ。
原さんの本、早く読みたい。

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Unknown (Rolling Stone)
2019-05-14 23:00:20
TAKUMI様、こんばんは。

皇室の万世一系や男系男子継承については、やはりと言うべきか、欧米のメディアから時代遅れだの男女差別だのと非難の声が上がりましたね。

日本の皇室に限らず、欧米のメディアが異国の伝統やそれに基づく制度を非難するとき、それが彼らだけの「常識」や「正義」を元にしていることが多いと感じます。

それ以前に、「あなたがたにその問題の決定権はあるのか」と怒り交じりの疑問も覚えますが。

言い方は悪いかもしれませんが、彼らの方こそ、「西欧のやり方がすべて正しい。だから『遅れた』他の国や地域は西欧のやり方に合わせるべきだ」と思い込んでおり、その思考回路も行動様式も、未だ帝国主義時代のままで止まっているのではないかと思わずにはいられません。

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