北朝鮮の外相がロシアのTASS通信によるインタビューを受けたという記事が夕べTASSに載っていたのでざっと読んだ。
今日になったらNHKが伝えていた。
北朝鮮外相 核放棄めぐる交渉に応じない姿勢 タス通信に~中国 米朝が対話と交渉を/nhk
10月12日 18時42分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171012/k10011175611000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_006
北朝鮮のリ・ヨンホ外相は、ピョンヤンを訪れているロシア国営のタス通信の社長と会談し、「アメリカに炎のいかずちを浴びせ、反米対決戦を総決算しようとすることは、絶対不変の意志だ」として、核放棄をめぐる交渉には応じないとする姿勢を強調しました。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、リ・ヨンホ外相が、11日、ピョンヤンを訪問しているロシア国営のタス通信のミハイロフ社長と会談したと伝えました。
TASSの記事はこれ。記事というか、リ・ヨンホ外相の意見をそのまま書いているような分量の配分。
DPRK people demand US be punished by 'hail of fire' for aggressive policy — top diplomat
NHKが書いている記事を見ると「バカ」な幼稚園児の喧嘩みたいだけど、TASSの記事を読むと難しいレトリックを使いながら、主張を伝えているなぁって感じ。
どうしてこうなるかというと、NHK他の日本の記事は、要約と称して話をまげて、1文とか2文とか原文を入れる仕様だから。パラグラフを重ねていって結局何なのかを読者に読み取らせるという手法がほぼ絶無。
で、リ外相は、核兵器開発によってアメリカとバランスできた、この状態に満足している、で、こういう強い隣国がいることはあんたたち(ロシア)にとっても良いことだと信じる、と言う。
これはこれでそうだろうなと私も思う。そしてこれは中国にとってもそう。北朝鮮がまるまる韓国だったら、両国とも国境線上で始終、ラトビアだのエストニアだのがそうであるようにNATOの軍がうろちょろするようなことになる。面倒だし、中露にとっては安全保障上の危機でもあるんですよ、実際には。
ロシアには特に苦情を述べていないし、むしろ互いに理解していると強調しているようなことを北は言っているが、中国に対しては2週間ぐらい前、長い間こうやって俺らがかんばってたことを忘れて、お前らと来たらアメリカに譲歩しまくって恥ずかくないのか、お前らがはじめて核兵器を持った時誰が最初に賛成したと思ってんだ、キッシンジャーの訪中を白旗をあげていると言ってやたのは誰だか忘れているのか云々、みたいな物凄い檄文というか特大の非難を中国に向けていた。実際これもそうでしょう。現在の中国は強くなったけど、混乱していた時代のことを考えると北朝鮮の言い分には理はある。
中国、ロシアが提案しているロードマップについてはどうか、との問いには、ロシアが注意を払っていることはよく理解しているしロードマップの趣旨もよく承知しているが、米が最大限の圧力をかけると騒いでいる状況では交渉に応じることはできない。
どういう条件になったら話し合いができるのか、という問いには、何度も言っている通り、米が北に対する敵対政策を止めて、北朝鮮に向けた核の脅しを抜本的に止めること、と答えている。
これも実は理がある。朝鮮半島に最初に核を持ち込んだのは米。韓国、日本の核の向き先が韓国、日本の自由にならない状況というのもこれに関係するでしょうね。
といった話なので、確かに表面的に見ればなんの進展もないと言えそうな気はするけど、でも、根本的に、アメリカ+日本+韓国が、北の核兵器だけが問題だと触れ回っている現状の話にはまったく乗らないという姿勢は一貫している。
そりゃそうだよね、実際には北朝鮮という存在そのものの話なんだから。で、アメリカ+日本+韓国の一部が狙っていたと思しきは、あたかもイラク相手の大量破壊兵器の話のようにして北に攻撃をかけるなり圧力と影の工作をかけて、そこから、北と南を西側本意で統一すること、ってことでしょ?
このゴールは、どうも失敗しているっぽい、と私は思ってま。
しかもこの上に、オバマ&ヒラリーの迂闊なアジア・ピボットが、ウクライナ危機を介して、中国+ロシアの緊密な連会とSCOの確立化を生んだので、実は巨大なバックラッシュがそこにあるという点で、アメリカは戦略見直さなならんやろ、というところなんだと思うわけですよ。
■ 日本人の基礎認識が心配だわ
いずれにしても、今後のことを考えて、日本のメディアはせめてこのぐらいは日本国民に説明すべきじゃないの?
北朝鮮を承認していない国の方が圧倒的に少ない、ってこと。
日本、韓国、アメリカ、フランスの不承認によってこんなことが起きているとも言い変えられますね。
でもって、こういう配置が示す通り、北朝鮮と付き合いのある国はたくさんあって、中でもかつての非同盟諸国(東西どちらの陣営にも入らない国々)とかは結構同情的だと思う。アメリカにいじめられている国という認識でしょう。だから、昔は韓国が、米のポチとして嫌われていたんでしょう。今でも少なからぬそういう傾向は垣間見える。
そこに、かつてのソ連圏諸国が、そうそうそうなのよ、と理解を寄せているという状況。ということは、北朝鮮のおかれた現在は、日本人や一部アメリカ人が考えるほど孤立もしていない。
また、北朝鮮と核技術は、そもそも北はソ連圏で標準的に原子炉を構え、教育も受けていた国だから、普通に核技術はあったでしょう。その上でだんだん情勢がやばくなってきてから核技術について中国にアプローチしたが断られた。ソ連はソ連圏はみんなNPT体制に入れてるから厳しくノー。つーことから、パキスタンの闇市の核のカーン博士が出てきたり、イランとのロケット技術との交換の話が出てきたりと、考えてみれば過去15年かそこらうんざりするほど北と核の話はあった。
それが、最近の話ときたら、ここらへんの話がすっぽり抜けている。なんなのこのプロパガンダは?って感じがする。若い人は騙せてもジジババは記憶してますがな。
■ 参考記事
朝鮮・トルコ、渤海湾・黒海と「不可欠」