アメリカ「緑の党」のジル・スタインが、大統領選挙の投票結果についていくつかの州で投票の数え直しを求める行動を起こした。
いくつかの州でサイバー攻撃で投票結果が操作された可能性があるという専門家からの指摘を受けて、それならばと寄付を呼び掛けると数え直しが可能になるお金が集まり、いくつかの州に対し正式に数え直しを申請した、というのが少なくとも表に出ている推移。
クリントン陣営も参加=米大統領選結果の再集計要求
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016112700016&g=int
さてこれは何をやっているのか、と多くの人が疑問に思っている。そもそも、みんなの寄付が集まったみたいなことを主要紙は書いているが、2日と経たないうちに5億円ほどが集まったという時点で、ヒラリー財団かよ、と誰しも思い、ヒラリーでないにしても、またかソロスなど、言っている人は多い。
主要メディア、それも日本のメディアまでもがわりとしっかりと取り上げているところを見ると、個人の道義心からやっているわけではないことがむしろわかる(笑)という気もする。
■ なんのために
この行動は、一見すると再集計を求める正しい行為のように見えるわけだけど、なんせ、不正選挙をするならヒラリー側だろうと思っている人が多数の情勢にあっては、自分が負けたから諦めきれないのか、とか、あるいは、再集計を言いつつ再度プログラムを仕込んでインチキをするつもりなのかとかいろいろ勘繰る人も出る。
トランプ支持派は、総じていえば、トランプ大統領の正当性を損なうためにやっていると受け止めている模様。
つまり、一般投票(州ごとのじゃなく単純な投票数の多い、少ない)ではヒラリーが勝ったのだ、と騒ぐことと併せて、再集計することでなんらかの不正やら不明やらが出れば、全体としてインチキな選挙で、トランプ大統領は望まれていないのだというムード、論調を作る気なんだろう、ということ。
その上で、折からトランプを認めない群集が全米中にいましたね。あのカラー革命もどきの人たちが何かをきっかけにまた騒動を起こすのではなかろうか、とも考えられる。
■ なんのために 2
それに対して、全体としてトランプの正当性を減らしていこうという話には違いないんだが、もっと具合的な目先の目標があるだろうと考える人もいる。
いくつかの州で再集計が開始されれば、その州の結果は未決となる、これが目標では、と。
つまり、米の大統領選というのはこの間やった選挙でファイナルではなくて、実は最後にそれら各州の代議員さんたちが集まって投票したところがファイナル。概ね儀式的なものとしかみんな思ってないんだが、制度としてはそうなっている。
それが12月19日。だからここまでに代議員数で100ぐらい分が未決だと、過半数の270を取れる候補者はいなくなる。
すると、規定上はこの評決は議会に行って、議会の投票で決めることになってるんだそうだ。そんなこと起こるの?というと、過去に1820年代に1回あるらしい。
しかし、それでももしトランプが勝ったら終わりじゃないか、という考えも成り立つ。いやしかし、その場合トランプは議会が決めた王であって、民衆の王ではない、というのが確定する。そうすると、ヒラリーの方が一般投票では勝ったのだという主張に意味が出てくる。
という考えもあるらしい、ってことですが、一応これは理屈は通るなと思ったりもします。メディア戦略的には、そこからずっと引っ張れますからね。
■ オバマも反対、ヒラリー選対も反対
しかしながら、この再集計の取り組みは、まずオバマ大統領が早々に、アメリカ国民の意志は既に反映されている、と言って冷や水を浴びせたのを代表例として、民主党内からの支持も強そうには見えない。
ヒラリーキャンペーンの主要人物の中からも、ムダだ、やめろ、という声が出ている模様。
■ 私の予想
上の(2)で書いたような、大統領就任に味噌をつけていく方向もなるほどなとは思うものの、それは手続き上の話であって、アメリカ国民の大多数はこの展開を快く思わないだろうと私は思いますね。
なんのために選挙後、負けました、のスピーチをわざわざさせるのかというと、戦いに終止符を打つためでしょ?
で、トランプは終止符を打たないと言ったので、トランプだって同じじゃないかと言われりゃそれまでなんですが、しかし、そこは微妙にそうじゃないんじゃないかなと思う。
なんでかというと、ヒラリーは権力側の候補だから、じゃないっすかね。
権力側にいた候補に対して、トランプは、本人は実は別種のエスタブリッシュメントには違いないんだけど、主要メディアも財界、金融、法律、行政職員といった、より強い側、より権力のある側が総じてブロックしようとした候補なわけですね。
そこが集団でよってたかって知恵を絞って、金にものいわせて再度トランプを倒そうとしているとしたら、多分、アメリカ国民の多数は、やっぱりこの集団は異常なのだ、と思うのじゃなかろうか。
つまり、トランプを叩いてもヒラリーびいきにはならない、ってこと。
どうなるのかまだ分からないし、まだ何か新しいことを仕掛けてくるかもしれないですが、当面、ダメな取り組みだろうと私は思う。
■ オマケ
好例の妄想セクションでございますが、この話は、ネオコン勢がウクライナでネオナチまで使って、思う存分年来の妄想を垂れ流してるのと同様、民主党内に深く入り込んでいる何かこう、世界中を仕切れると考えていたやに見えるトロキスト勢が諦めきれずに暴発していると考えることもできるような気がする。
両方とも、戦後アメリカの戦略の要素ですから、この反発は、これらの影の勢力が整理、淘汰されようとしていることの現れだったりするのでは?