歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

歓喜の歌

2018年12月18日 | 演芸
私のライフスタイルを鑑みると、

「18時に六本木で待ち合わせ」だなんていったい何事かといぶかしむ。

しかし昨日は数ヶ月前から楽しみにしていた大事な日、

普段よりシックにきめて夜の六本木に繰り出した。

目的地はEX THEATER ROPPONNGIだ。

なんでも5年前にできた劇場で夢の音響装置がつまっているらしい。



会場に着くとのぼりが冷たい風にたなびいている。

きたきた、これよこれ!

まだ開場5分前なのでシアターの前には人が溢れている。

年齢層は少し高めだ。

端の方で誰かと喋っているウド鈴木を見つけて夫と目があった。

いよいよ待ちに待った「志の輔らくご in EX 2018」の開演だ。

先行発売の初日に応募してチケットが当たった時はひとりで飛び跳ねた。







シアター内に入ると著名人から送られたスタンド花がたくさん並んでいた。

桑田佳祐とか徹子の部屋とか龍角散とかウド鈴木もあったな。

我らが山寺宏一(スパイク・スピーゲル)さんのもあってテンションが上がる。





はやる気持ちのまま席に着くが開演まで30分もある。

夫は体が大きいので席に座っているのが苦痛らしく一人でどっかに行ってしまった。

席番号がB1の2列目だったのですごい近い席なのではと期待していたが、

2階席の前から2番目で観客1000人の中ではまぁまぁ後ろの方だった。

幸い小さな会場なのでどこからでも肉眼で志の輔師匠の表情が見えそうだ。

もうなんでもいいのさ、だって30分後には本物が見れるのだから。



開演が近くなるとお囃子が鳴り響き、

しばらく続いたかと思うと幕がゆっくりと上がった。

舞台の上に置かれたマイクと座布団、

それだけで指笛を鳴らしたくなるくらいかっこいい(できないけど)。

袖からゆらゆらと現れた志の輔師匠に拍手喝采が鳴り響き、

会場中の視線が彼の一挙手一投足に集まる中話し始めた。

昨日はパルコ公演全5日の4日目ですでに3日連続でしゃべり続けているためか、

声が少し掠れており少し心配だったが話し始めればなんのその。

「前3日は今日のための練習で今日がピークです。明日はもう余韻でやるだけ。」

なんて調子のいいことを言って会場を温める。



演目は「歓喜の歌」と「踊るファックス」だ。

どちらも志の輔のオリジナルで、どちらも有名な演目なので私もYouTubeで何度か聞いたことがある。

「落語は生がいい」なんてよく聞くけど、確かに映像で見るのとは全然違う。

マイクから漏れる息遣い、着物の擦れる音、観客席の温度、

扇子をパチンと閉じた時の空気が弾ける音、息を飲む観客席。

じんわりと前のめりになっているのに気づいて、椅子に深く座り直す。



「踊るファックス」はファックスをめぐるドタバタ劇だ。

吉田薬局のおやじはクリスマスセールのチラシを書いて至急印刷所に送らなければならないのだが、

そこに送られてきた一通の間違いファックスによってそれどころではなくなってしまう。

男に振られた女まみこが「あなたのせいでこの世ともお別れする」うんぬん言っている。

まみこに何か起きてファックスの履歴から警察に怪しまれるのは困るということで、

まみこに間違えてますよとファックスを送り返すのだが事態は思わぬ方向へ。

最後の物語の回収が見事で、会場は笑いの渦に包まれる。

バカバカしくて、あったかくて、元気が出る、もう最高。

私なんかはもう涙が出るくらい笑ったのだった。



休憩を15分挟んで「歓喜の歌」、これは大晦日の公民館が舞台だ。

公民館職員の主任と加藤は、

大晦日の同じ時間に似たような名前のママさんコーラスの公演会をダブルブッキングしていた事に前日気づく。

ママさんコーラスをなめていた2人は事の重大さを理解しておらず、

コーラスグループのリーダーたちに軽々しく時間をずらすか合同でやるしかないと提案するのだが、

コーラスメンバーが自分のためだけでなく子供や家族、町内のために歌っているという事、

ママさん一人一人が煩雑な日々の中、大変な思いで歌う時間をつくり一生懸命取り組んでいるという事を知り心を改める。

結局合同でする事になったわけだが、本番当日は主任と加藤も公演会を成功させるために奮闘する。



「歓喜の歌」は笑いあり感動ありの大作で、2008年に映画化もされている。

志の輔師匠がさげてお辞儀すると会場ははち切れんばかりの拍手に包まれた。

心のどの部分にはまるのかわからないけれど、ぴったりはまってジワジワ満たされていく。

なんていい暮れだろう。

拍手の中でかすかに聞こえてくるベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章、

幸せな余韻の中でおぼろげな意識を舞台に寄せているといきなり幕が上がった。

と同時に大音量の歌声が響いた。

そこにいたのはママさんコーラスと思しきコーラス隊。

圧巻の歌声、あまりに突然の出来事で胸がつまった。

「ママさんコーラスだ」

その時の感情を感動という言葉で片付けていいのかわからない。

喉の奥の方がぎゅっと縮まって、鼻の付け根がツンとする。

隣のデカブツは訳も分からず号泣したらしい。

曲が終わり指揮者がこちらに振り返るとまさかの志の輔師匠!

まったく、最高なんだから。

この企画は3年限定で今年が最後だったらしい。

何も知らなかったけれど、最後の最後に滑り込めて本当に良かった。




欲しかった手ぬぐい、最後の1枚だった!危ない危ない。
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2 コメント

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はじめまして (めいふぃ)
2018-12-21 15:13:26
たんぽぽさん

突然の投稿、申し訳ございません。
ママさんコーラスで歌っていた者の1人でございます。こんなに感激していただけて、私もやってよかったなぁ~と感激しております。

ほんとに良いお話ですよね~
返信する
めいふぃさん (たんぽぽ)
2018-12-21 19:55:08
めいふぃさん

コメントありがとうございます!
感激です!

本当に素晴らしい舞台でした。
今までに体験した事のないサプライズで本当に胸がいっぱいになりました。
落語もコーラスも最高でした!
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