「マネスキン日本に来ないかな」とぶつくさつぶやいていたのはもう1年前。
2021年にユーロヴィジョンで優勝し世界で人気が爆発したその勢いのまま、
まさか日本に来てくれるとは思いもしなかった。
今年の春だったか、サマソニのラインナップを見て叫んだ。
「マーーーーネスキーーーーン!!」
一人でも、嵐になっても、地を這ってでも見にいくと誓った。
ロックの時代は終わった、平成の終わりから令和にかけてそんな空気を感じていた。
あるいはもっとずっと前からか。
今時ロックなんてダサいでしょといわんばかりのchillの台頭。
確かに前時代の遺物になりかけていたし、新しい世代のロックなんて聞く気も起きなかった。
そもそも音楽においてかっこいいという価値が衰退していたんじゃないか、とすら思う。
そこにバコーンと現れたのがイタリアのハードロックバンド、マネスキンだ。
ユーロヴィジョンの授賞式でヴォーカルのダミアーノは「ロックンロールは不滅だ」と宣言した。
20世紀の終わりにレディオヘッドがKIDAの中でロックの終焉を歌い、
2000年にストロークスがデビューアルバムなの中で「Modern ege」を発表した時のような、
ロマンと必然性を感じさせる登場だ。
ラジオで『Zitti e Buoni』を聞いた時脳天を打ち抜かれた。
武田砂鉄さんには本当に感謝しています。
ーオレもイカれちゃいるがあいつらとは違う、お前もイカれちゃいるがあいつらとは違うー
イエエエエエエエエエエーーーーッ!!!
いざサマソニのチケットを取ろうと思ったら、単独公演があることを知りそちらに行くことにした。
それがまさか1日で売り切れるとはね。
チケット発売日の翌日にあぶねーあぶねーとチケットを買いに行ったら、無情にもSOLD OUT。
正直日本人の感度を侮っていた。
しょうがないからサマソニに行こうと思ってチケットを調べたら、タイミングを同じくして売り切れていたのだ。
あの時はあまりのショックにしばらく腑抜けになっていたな。
マネスキンの曲を聞けなくなるくらい悔しくて、悲しくて、辛かった。
だからサマソニの二次先着の発売を知った時は涙が出るくらい嬉しかった。
というか少し泣いた。
かなり激しいチケット争奪戦をどうにかこうにか勝ち抜き(夫が)無事マネスキンに会ってきました。
夫は外せない仕事が入り、代わりに誘った友達は急だったこともあり仕事とコロナで全滅。
しょうがないから一人で行くことにした。
この選択(果たして選択肢があったのか)が思いの外正解だった。
というか友達と行っていたら、友達を一人無くしていたと思う。
日本人が白けていて日本嫌いになったらどうしよう、指笛を覚えていこうか、
という心配は杞憂に終わった。
お昼過ぎ1時間以上並んでTシャツが売り切れていた時は驚いた。
なんとなく予感がありながら、肉眼でダミアーノとヴィクトリアの顔が見れる場所まで行って待機。
こんなに前へきたのはいつぶりだろう。
後ろでゆったり聞く心地よさを覚えてから、前の方でもみくちゃになるような見方は敬遠していた。
マネスキンはそんな大人になった私のセオリーをことごとくぶち壊す。
一人だから誰に遠慮することなく前へ前へ前へ。
サッシャが出てきて「次はマネスキンだ」って言った時の会場の熱気はすごかった。
夢の中のあのカリスマが、あのスーパースターがくるぞくるぞ!
現実のものと思えないあのロックの具現がくるぞくるぞ!
巨大モニターに古代の彫刻にも見劣りしないダミアーノ・ダヴィドが映った瞬間理性が吹っ飛んだ。
1曲目は『Zitti e Buoni』!!
私も狂っていたが、私の周りも狂っていた。
あの熱狂は形容しがたい。
他人の汗、肉体、声が渾然一体となってとてつもないエネルギーが渦巻いていた。
サッシャが「声は出さず」と言っていたのは、これを予想していたからかな。
役者が違う。
誰と比べる必要もない、ただただ己の魂を燃やし音楽を体現するカリスマ。
それに人々がついてく。
日本人の感度もだけど、彼ら自身の力も見くびっていたのかもしれない。
私が心配する必要なんて最初からなかった。
いいものはいい、それを感じる素養は誰にでも備わっていて、マネスキンはいいんだから。
祭りに熱狂するのに似ているかもしれない。
祭りの非日常空間では特有の微熱感にうかされて人々は我をかなぐり捨てて自分を解放する、あるいは引き渡す。
普段踊らないような人が夜通し盆踊りに没頭する。
自分と他人の境界があいまいになり、物理を超える。
マネスキンは私にも我を忘れさせてくれた。
他人の目などなくなり、ダサくとも、キモくとも、踊り狂う。
オ、マママママミーーーーヤーーー。
ダミアーノが「世界中の人たちから日本人は静かだって聞いていたけど、そんなの嘘じゃないか!」
と嬉しそうに言っていて最高だった。
日本人は確かに静かだよ、シャイで、内気で我を忘れにくくルールを重んじる。
それを変える力をマネスキンが持っていたということだ。
最初と中盤と最後にキラーチューンをおいて、間にカバーを挟むセットリストも最高。
最後の『I WANNA BE YOUR SLAVE』では日本語で「しゃがんでー」と促して、
みんなでしゃがんでダミアーノのカウントで一斉にジャーンプ!!
重力を見失うくらいの浮遊感と激音、誰かに足を踏まれ何か踏んではいけないものを踏み、
1年分のアドレナリンを、いや5年分のアドレナリンを放出したのでありました。
ああ、もう一生ついて行きます。
浮ついて、そんな迂闊なことも言っちゃいます。
グッズ全部買うつもりでお金用意してきたのに一つも手に入らなかったけど、1000%満たされた。
もともと100しか容量ないのに破裂しまくってそれでも幸福を押し込めてるから、
他が入るわけもなくおとなしく帰ったのだった。
St.Vincentも見たかったけど、マネスキンの余韻の中で中途半端になりそうでやめておいた。
グッズ行列に1時間以上も並んで他のアーティストほとんど見れなかったけど、一片の悔いなし。
帰りは大雨でびしょ濡れになったけど、全てはオールオーケー。
ありがとう、マネスキン。
観客の手の隙間から見えた低い姿勢で前のめりに歌うダミアーノの姿が目に焼き付いている。
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