歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

散漫な午後

2018年03月26日 | 日記
絵を描かなければならないのだが、ペンを持つ右手は一向に動こうとしない。

新しい絵を生み出すのが難しいのなら、放っておいた絵の色つけなんかどうかと筆を握ってみる。

一応なんとなくいい感じに塗り進めるが、「いい感じ」なのが嘘っぽくてやはりもう少し放っておくことにした。



頭の中は昨日読み終えた『星を継ぐもの』がぐるぐる回っている。

ブログに書くことでかろうじて発散しているが、それでは全然足りないのだ。

体の中に一回入った物語は面白ければ面白いほど風船のようにふくらんで、一旦外に放出しなければ消化できなくなってしまう。

我ながら不思議な現象だ。

手っ取り早いから丁度近くにいた夫Kに『星を継ぐもの』の話していい?と聞くもダメだと言う。

結局読まないだろうに読む可能性を少しでも残しておきたい気持ちはわかる。



気分転換に違う本を読もうと思いこれまた有名なSF小説小松左京の『果しなき流れの果に』を読み進めるが、

『星を継ぐもの』の後では少し求めるものが違うようで、物語ちっくなのが気に入らない。

読むタイミングは大事にしなければ。



次に短編集ならいいだろうと思い国内外問わずサイバーパンクSFの傑作短編を集めた『楽園追放 rewired』を手に取る。

はじめに編者の虚淵玄のまえがきを読むも伊藤計劃の名が唐突に出てきて顎にアッパーを食らったような気分になる。

しばらく伊藤計劃に思いを馳せていたら、コップのお茶がないことに気づき台所へ行く。

台所へ行くと何をしに行ったのか忘れて部屋に戻り、気づけばパソコンでサイバーパンクについて検索していた。

「サブカルチャー」と同じではっきりした定義を持ち得ない不思議な言葉だ。

未来的な雰囲気を醸しつつなぜだか懐かしさすら感じる不思議な言葉。



ここら辺で目の前の乱雑な机上が目に入りはたと気づく、なんか今日すごく注意力散漫。

なんにもできない、本当なんにも。

しょうがないから気分をスッキリさせるためにコーヒーでもいれようかと思ったが、

喫茶店で買った豆もお義父さんにもらった粉も昨日ちょうどなくたったんだった。

うまいことなってんだか、なってないんだか。

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星を継ぐもの

2018年03月26日 | 
まれに本を読んで鳥肌が立つなんていう経験をすることがある。

まさに今日そんな経験をしたばかりだ。

その興奮は何にも代えがたい。



私は映画や漫画、アニメなどにおけるSFは昔から好きだったが、

SF小説に興味を持ったのはごく最近のことである。

明確なきっかけとなったのは2年前に読んだ高野和明の『ジェノサイド』だ。

なんとなく現実離れしたイメージを持っていたSF小説だったが、

高度な専門知識と論理的な物語の構成に感激したのを覚えている。

私の友人曰く「SFほどリアリティを必要とするジャンルはない』らしい。

確かにそうかもしれない。





『星を継ぐもの』

著者:ジェイムズ・P・ホーガン
翻訳:池 央耿
原題:Inherit the Stars
出版社:創元社
初版:1980年



例えばAmazonでSF小説を検索すると一番上に出てくるような、言わずと知れた名作らしい。

それもハードSFの巨匠として知られるジェイムズ・P・ホーガンのデビュー作なのだから驚きだ。

読み終えてまだ少し胸がドキドキしている。



ーーーー
イデオロギーや民族主義に根ざす緊張は科学技術の進歩によってもたらされた、全世界的な豊饒と出生率の低下によって霧消した。

古来歴史を揺るがせていた対立と不信は民族、国家、党派、信教等が渾然と融和して巨大な、均一な地球社会が形成されるにつれて影をひそめた。

(中略)軍備放棄によってだぶついた資金、資源で大いに潤った活動分野の一つが、急速にその規模を拡大しつつある国連太陽系探査計画であった。
ーーーー


そんな近未来、物語は一人のイギリス人数学者がその中心機構UNSA(国連宇宙軍)に呼び出されるところからはじまる。

彼は中性微子物理学の研究の収穫として各種観察に役立つ透視スキャニング機能を有する機械を開発していた。

その名もトライマグニスコープである。

地球規模の太陽系探索の組織が彼の研究を必要とした裏には驚愕の理由があった。

そして言わずもがな彼は世紀の科学的大スクープに科学者として巻き込まれていくのである。



明確な主人公を軸として進むヒューマン・ドラマというよりは、

終始主軸となる謎が横たわり各主体が研究に取り組むことで少しずつ全容が明らかになっていくという非常に客観的な物語だ。

情緒的な部分はほとんどなく淡々とした語り口は、一見物語としては淡白にも感じられるが現実的な深みを増している。

著者が元技術者ということもあってか専門的かつ非常にシステマティックに構築されたストーリーになっている。

約40年前に書かれた小説なので一部機械の形容やタバコ事情等時代錯誤を感じる部分もあるが、受け入れられる範囲内だ。

SF用語や機械系の言葉に不慣れなのではじめは読みにくさを感じるが、後半の盛り上がりからは読む手を止められなくなる。

私たちが当たり前のように受け入れている進化や宇宙の定説が巧妙に物語に組み込まれ、

私たちが辿ってきた歴史さえもが伏線となり最終的に想像もしなかった終着点に到達する。

現実的でありながらロマンティック。

とにかく最後の一文まで見逃せない、読後感最高の超おすすめSF小説なので是非!
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