濁泥水の岡目八目

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海生逸一(かいお いつひと)は山村辰雄を取り立てて親分にしたが、その本性を知り呆れ果てて見限ったと思う

2023-07-20 14:15:17 | エッセイ

 

 山村辰雄は呉の博徒小早川静馬の子分になれたが、呉でも長年暮らした大阪でもヤクザとして名を上げるようなことは何も残っていない。ただ敗戦後に呉で旧帝国海軍の弾薬処理事業に加わり大儲けして、新たな事業への元手をつくることが出来た。そしてそれを有効に活用したのだろう。「仁義なき戦い」で彼は出所した原田昭三に多額の祝い金を与えたが、それを原田が全て女につぎ込んだと美能幸三に愚痴っている。苦労した美能には金を出しもしないでである。それには樋上実も、他所のもんには気前がいいなぁと述べている。映画「仁義なき戦い 代理戦争」では親分の渡す札束を驚きの眼で見る様子で描かれている。山村は原田昭三を大西政寛のように取り込むつもりだったのだろうが、せっかくやった金を無駄にされたと怒ったのだ。
 山村辰夫は呉では何の実績もない男だった。それを引き立てたのが海生逸一だった。山村組は呉の顔役だった男が愚連隊のような連中を集めて結成されたという。裏でその指示をしたのは明らかに海生である。海生の指示で人が集まり組が出来て山村辰雄は親分になれたのだ。だが彼は博徒の掟を守れない自由人だった。なんと自分の罪を被って懲役に行った若頭佐々木哲彦の愛人に手を出してしまったのだ。それを知った佐々木は激怒して人前で山村をぶん殴ったという。海生はそれを聞いて呆れ果てたはずである。海生はよく孫分になる若い博徒たちを自宅に招いてもてなしたという。そして博徒の振る舞いを教え諭した。組のために懲役に行っている者の女の世話は組の義務だが、金は一度に与えず暮らせるだけをそのつど与えろ。人は大金を持つと心変わりしかねないからである。そして女の家には必ず二人で行き、家の中には決して入らず玄関から声をかけて女には外で金を渡すのだそうである。変な噂がたち刑務所の中で仲間が疑心をいだかぬようにそこまで気を配るのだ。海生が山村辰雄の振る舞いにあきれ果てたのも無理はないだろう。



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