濁泥水の岡目八目

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「バグジーシーゲル」のようなユダヤ系ギャングはイタリア系、アイルランド系と異なり消えた

2020-08-20 14:45:01 | 歴史談話

 アメリカギャングが暴れまくった禁酒法時代には三つの集団が有名である。アイルランド系、イタリア系そしてユダヤ系である。もちろん他の民族も多くいたのだが、彼等が目立ったのには理由がある。19世紀に移民として多数がアメリカに来たからである。まずアイルランド人が有名な「ジャガイモ飢饉」での餓死から逃れるために19世紀中頃に多数やって来た。英国のアイルランド統治がいかに冷酷非情であったかの証である。全滅したのはジャガイモだけで麦はいくらでも収穫していたのに、それを全て英国に送ってジャガイモしか食べられない貧しいアイルランド人を餓死させたのだ。だからアメリカに多くいるアイルランド系には反英感情が強く、かつてのテロ組織ⅠRAに資金を提供していた人々までいたそうである。アメリカでも貧しく差別されていた彼等の中には犯罪に走る者もいて、映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」などに生々しく描かれているが、カトリックである以外は白人で英語も話せるので社会に溶け込んでいったらしい。特にタフでマッチョなので警官や消防士になる者が多くニューヨークではこれらの職種はアイルランド系が多いのだそうだ。ドラマ「アンフォゲッタブル」では潜入捜査の刑事がバーでアイリッシュウイスキーを注文したら主人公の女性から「警官だってバレバレじゃないの!」と責められていたよ・・あはは。でも中には貧しく犯罪に走る者もまだいて映画やドラマにも出てくる。
 19世紀後半になるとイタリア人とユダヤ人が多数移民として入って来た。イタリア人は祖国が貧しかったからだが、ユダヤ人はロシア帝国の迫害を逃れてである。ロシア政府は民衆の不満をユダヤ人に向けさせることでそらそうとしたのだ。軍隊や警察が迫害するのだから目もあてられない。こうして入って来た人々は貧しい農民や労働者が多くて、当然教育もろくに受けられなかっだろう。アメリカにはそれ以前にドイツ系ユダヤ人が移民としてかなりいて、彼らは比較的良い暮らしをしていたので後から来た東欧系ユダヤ人とは距離を置いたという。貧しい暮らしの中では犯罪に走る者も多く、バグジーシーゲル、ダッチシュルツ、マイヤーランスキーなどの名だたるユダヤ系大物ギャングが出現した。しかし現在では跡形もない。ユダヤ系ギャングなど聞いたことがない。ひょっとすると最近入った移民としているかもしれないが。アイルランド系イタリア系が残ったのにユダヤ系が消えたのは所得が増えたからである。皆金持ちになってリスクの高い犯罪などには手を出さなくなったのだろう。映画「フリーペーパー 史上最低の銀行強盗」には3人の強盗がいるがその一人はユダヤ人でリーダーの黒人に「俺はレアな(希少価値のある)男だ。ユダヤ人の銀行強盗なんて他にいないぞ!」と自慢するのである。経済犯ならともかく銃を持った強盗なんて危険なことは馬鹿馬鹿しくてやる気にならないのだろう。ユダヤ系ギャングは消えたのである。

 


通りゃんせ(そんな昔のこと誰が知るかい)

2020-08-06 14:09:30 | パロディ

通りゃんせ(そんな昔のこと誰が知るかい)


   「しゃれた言葉の前には神も仏もない」

 「煉獄の中で」ソルジェニーツィン

 煉獄とは、罪は犯したが地獄落ちは許された人々のいる場所で、スターリン体制での特別強制収容所のことである。一流の科学者、技術者、学者などが秘密警察に逮捕されると、使えそうならここに送り込んで盗聴装置の開発などの研究をさせるのだ。だから衣食住も恵まれていて比較的自由でもある。しかしやはり収容所に変わりはなく、厳しく監視されていて反革命的と見なされたら地獄のような本物の強制収容所送りとされてしまう。この小説の最後に4人の囚人にその命令が下るとルービンという囚人が「特殊収容所の歴史的な一日だ、反徒処刑の朝だ!」と叫ぶのだ。彼は4人の囚人に何の悪意もないし、自分が強制収容所送りになっても同じように叫ぶのだ。面白ければいいのである。
 嘘か本当かしらないがこんな逸話がある。立川談志が暴漢に襲われて負傷したことがあった。額が割れて傷口が縦に赤く開いていたそうだ。それを見た毒蝮三太夫は「貯金箱だ!」と言って500円玉を傷口に押し付け、さすがに怒った談志に「シャレの分からん奴は死んじまえ」と言ったという話を聞いたことがある。本当なら嬉しいなぁ。